ワールドヘルスレポート

海外の健康や医療に関する旬なニュースをお届けしています。
2015年記事
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2015年12月記事 vol.139 肥満対策に苦慮するアメリカ
アメリカでは、国をあげて肥満対策に取り組んでいるものの、成人の肥満率は相変わらず全米規模で高水準のまま。肥満は心臓疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の原因となり、毎年、肥満に関連する疾患に1470億ドルもの医療費が使われている。アメリカにおける肥満政策の現状を報告する。 25歳以上の男性の75%、女性の67%が肥満または太りすぎ 先頃、アメリカ国民の健康向上を目指す非営利団体Trust for America’s Health (TFAH)が、「2015年版アメリカ国民の肥満の現状」を発表した。発表では、アメリカにおける成人の肥満率は横ばいで、高水準の状態に変わりないと報告されている。アメリカでは、肥満が深刻な問題となっているが、昔からそうだったわけではない。1980年に肥満率が15%以上、1991年の段階でも肥満率が20%以上という州は存在しなかった。ところが今では、成 […]
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2015年11月記事 vol.138 DSHEAから20年、米国サプリメント業界の現状
今年4月、日本で食品の機能性表示制度がスタートした。これは、1994年にアメリカで成立したDSHEA(栄養補助食品健康教育法)を参考にしたものである。サプリメントの機能性表示の施行から20年が経過するアメリカにおける、ラベル表示や副作用の問題など、現状を報告する。 成人の8割強がサプリメントの安全性・有効性に信頼寄せる 現在、アメリカのサプリメント市場は約350億ドルを超えるといわれている。Council for Responsible Nutritionの2015年サプリメント消費者調査報告によると、アメリカの成人の68%がサプリメントを服用し、84%がサプリメントの安全性や質、有効性を信頼している。1994年10月にクリントン大統領の政権下でDSHEA(栄養補助食品健康教育法)が成立し、サプリメントの機能性や効能のラベル表記が認可されると市場は急速に拡大した。 サプリメ […]
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2015年10月記事 vol.137 米国2015年版栄養ガイドライン巡り、議論沸騰
今年末に公表を控えている「2015年版アメリカ人のための栄養ガイドライン」が物議を醸している。専門家から科学的エビデンスがない、環境への配慮に欠けるなどの声が挙がっている。5年ごとに改訂される栄養ガイドラインを巡る論争を報告する。 今回3万近いパブリックコメント、高まる食への関心 「アメリカ人のための栄養ガイドライン」は、米厚生省と農務省が5年ごとに発行しており、対象年齢は2歳以上となっている。政府の栄養政策をはじめ、食品表示から学校給食、医師の患者へのアドバイスまで幅広く影響を与えている。医師や科学者などの専門家による諮問委員会が、食に関する最新の研究報告を検証して報告書を作成し、それに基づいて厚生省と農務省が改訂版のガイドラインを発行する。改訂にあたり毎回パブリックコメントを求めるが、5年前の前回は2,000件だったが、今回は2万9000件に増加しており、食への関心の高 […]
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2015年9月記事 vol.136 経済優先、アメリカ人の「食と健康」意識の現状
アメリカ人の3分の1が、お金を失うよりも体重が増えるほうがいいと考えている――そんな「食と健康」に関する意識調査が発表された。International Food Information Council Foundationが毎年行っている「Food & Health Survey」は、今年で10年目を迎える。この調査で明らかになったアメリカ人の「食と健康」意識の現状について報告する。 健康より経済が優先 アメリカ人の「食と健康」について、毎年意識調査を行っているInternational Food Information Council Foundation。非営利団体として1985年に設立し、健康や栄養、食品安全に関する科学的根拠に基づいた情報を提供している。調査は、2015年3月にオンライン上で、18歳から80歳までのアメリカ人1007人を対象に行われた。この […]
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2015年8月記事 vol.135 セリアック病増加でグルテンフリー市場が拡大
アメリカでグルテンフリー食品の売り上げが上昇している。近年、セリアック病の患者が増加しているためだ。セリアック病ではないが、健康食品として食生活に取り入れる消費者も増えている。グルテンフリー食品の最新状況を報告する。 アメリカ国民の133人に1人がセリアック病 アメリカで、近年セリアック病の患者が増えている。セリアック病は、小麦やライ麦、大麦などの穀物に含まれるタンパク質のグルテンによって引き起こされる自己免疫疾患で、患者がグルテンを摂ると小腸の粘膜に炎症が起こり、栄養の吸収が阻害されて腹痛、下痢・便秘、栄養失調など様々な症状が起きる。今のところ薬剤での治療法はなく、グルテンを除去した食事を摂ることしか手立てがない。セリアック病患者の増加に伴い、スーパーマーケットでは年々グルテンフリー商品の売り場を拡大している。今年1月にはグルテンフリーのピザをメニューに加えた大手宅配ピザ […]
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2015年7月記事 vol.134 アメリカで食物アレルギー患者増加、望まれるアレルゲン表示
アメリカで食物アレルギー患者が増えている。しかしながら増加の原因は分からず、完治の治療法も確立されていないのが実状だ。アメリカにおける食物アレルギーの現況、アレルゲン表示の義務化と問題点について報告する。 アメリカで約1500万人が食物アレルギー アレルゲンを含んだ食品を知らずに食べてアナフィラキシー(全身性のアレルギー反応)を起こすと、死に至る恐れもある。今のところ、アレルギー反応を防ぐにはアレルゲンとなる食物を避けることしか方法がないため、食品のアレルゲン表示は重要なものとなっている。 アメリカでは近年、食物アレルギーの患者が増え続けている。非営利団体Food Allergy Research & Education (FARE)によると、現在アメリカでは約1500万人が食物アレルギーを患っている。そのうち約600万人が18歳以下で、子供の食物アレルギー患者は増 […]
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2015年6月記事 vol.133 アメリカで「腸の健康」市場が伸張
アメリカで「腸の健康」が注目されている。健康な腸は栄養素の吸収だけでなく、免疫力を高めるなど幅広い役割を果たす。アメリカだけでなく、世界的に腸の健康についての研究が進められている。アメリカにおける「腸の健康」市場を報告する。 過敏性腸症候群、米国で総人口の約30%が発症 腸の病気としてよく知られるのが過敏性腸症候群(IBS)で、アメリカでは総人口の約30%が発症しているといわれている。International Foundation for Functional Gastrointestinal Disordersによると、発症しても症状が軽いケースが多いため、発症に気付かない人も少なくない。それでもアメリカでは毎年240万人から350万人がIBSで通院しており、胃腸科専門医が診断する病気の中では最も多い疾患といわれている。罹患率の男女比では、女性のほうが高い。 そこで、腸 […]
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2015年5月記事 vol.132 米国で野菜・果物の消費量が減少
慢性病を予防して健康を維持するために野菜・果物をたくさん食べよう―アメリカでそういわれるようになって久しい。ところが、現実の食生活では5年前に比べて野菜・果物の消費量が減っていることが、最近発表された調査報告で明らかになった。アメリカ人の野菜・果物の消費傾向と疾患との関係についてまとめた。 ここ5年で野菜・果物の消費量が7%減少 アメリカでも健康志向の高いカリフォルニア州。ここでは、「体を動かし、タバコを吸わず、野菜・果物をたくさん食べて健康になろう」と、州政府スポンサーのTVコマーシャルが頻繁に流れている。連邦政府も健康的な食生活を推進する栄養ガイドラインで野菜・果物の大切さを強調、「マイ・プレート」という例えで、1枚の皿を栄養素ごとに4つに色分けし、たんぱく質と穀物が半分、残る半分は野菜・果物を摂ることを推奨している。国や州をあげてのキャンペーンで野菜・果物の消費量が増えているだろうと […]
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2015年4月記事 vol.131 米国における代替療法利用の現状
米国における代替療法の最新の利用状況が、2月に発表された。2012年版National Health Interview Surveyを基にした調査報告で、マインド&ボディー療法、そしてナチュラルプロダクツの利用状況が、大人と子供とに分けてまとめられている。米国における代替療法のトレンドを報告する。 全米の約4万世帯を対象に調査 代替療法利用に関する最新報告書によると、18歳以上の大人で33.2%、4歳から17歳までの子供で11.6%が何らかの代替療法を利用している。このうち最も利用者が多いのが、大人も子供もナチュラルプロダクツ(ビタミンとミネラルを除くサプリメント)で、大人の利用者は17.7%、子供では4.9%だった。 今回発表された代替療法利用に関する最新報告書は、2012年版National Health Interview Survey(NHIS)が基になっている。 […]
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2015年3月記事 vol.130 米国成人の半分が慢性疾患、望まれる食事改善
アメリカ人の食生活の指針となるアメリカ農務省の「2015年版アメリカ人のための栄養ガイドライン」が今年末に発表される。それに先立ち、栄養ガイドライン諮問委員会が、2015年版の要点などを明らかにした。諮問委員会の公表で浮き彫りになったアメリカ国民の食事内容の現状を報告する。 現状は、理想にほど遠い 今回、諮問委員会が公表したのは「2015年栄養ガイドライン諮問委員会の科学報告書」。諮問委員会は保健社会福祉省と農務省とで組織、食生活の現状分析と栄養素の新たな科学的エビデンスを基に2015年版ガイドラインを作成している。その過程で明らかになったことなどが、今回の500ページ以上にわたる報告書で示された。 それによると、アメリカ人の食生活は理想にはほど遠いことが明らかになった。全体的に野菜や果物、全穀物の摂取量は低く、砂糖、塩、飽和脂肪、精製された穀物の摂取量が相変わらず高い。栄 […]
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2015年2月記事 vol.129 プロバイオティクス、グローバル規模で売り上げ急上昇
プロバイオティクスがグローバル規模で売り上げを伸ばしている。その効果が消費者の間ですでに定着しているアジア、ヨーロッパが主な市場だが、アメリカでも近年、消費者啓蒙に視点を置いたTV広告や学術報告などの影響で、着実に市場規模が広がっている。プロバイオティクスのグローバル市況およびアメリカでの最新の研究成果を報告する。 世界市場での複合年間成長率6.8% 市場調査会社トランスペアレンシー・マーケットリサーチ社の調査報告によると、プロバイオティクスの世界市場における2013年から2018年までの複合年間成長率は6.8%。市場規模は2011年が279億ドルだったが2018年には449億ドルに達するものと予想されている。 製品カテゴリー別の売り上げでは、プロバイオティクスを含んだ食品・飲料が圧倒的なシェアを占めており、また、サプリメントも順調に売り上げを伸ばしている。動物飼料でもプロ […]
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2015年1月記事 vol.128 アメリカがん協会、2015年版がん発症・死亡推計を発表
先頃、アメリカがん協会が発表した2015年版がん発症・死亡推計によると、アメリカでのがんの死亡者数はここ20年間で22%減っている。アメリカにおけるがん対策の現況について報告する。 165万人が新たにがんと診断 非営利団体のアメリカがん協会が、アメリカでのがん発症・死亡数の推計を発表した。それによると、アメリカでは、今年165万人が新たにがんと診断され、58万人ががんで死亡するものと推定される。アメリカでは2007年から2011年の5年間で、新たにがんと診断されるケースが男性は毎年1.8%減少、女性は横ばい状態が続いている。死亡率はそれぞれ男性が毎年1.8%、女性は1.4%減少している。 アメリカがん協会のチーフ・エクゼクティブ・オフィサー、ジョン・R・セフリン博士はこの状況を次のように述べている。「がんの死亡率は減少傾向にあり喜ぶべきことだが、闘いはまだまだ続いている。ア […]