ワールドヘルスレポート

海外の健康や医療に関する旬なニュースをお届けしています。
2013年記事
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2013年12月記事 vol.115 注目されるサプリメントの医療費削減効果
病気の治療に莫大な医療費が使われているが、その予防のためにはごくわずかしか使われていない。そのような現状を受け、サプリメントを病気の予防に活用した場合に、どれだけ医療費を削減できるかを算出した興味深い調査報告が発表された。サプリメントによる医療費削減の効果はどのようなものなのか? 予防による医療費の削減効果が軽んじられている 米疾病管理予防センター(CDC)によると、米国で医療費の約75%が、冠状動脈性心臓病(CHD)や糖尿病によるCHD、加齢による眼病、骨粗しょう症など、予防できる可能性が高い病気の治療に使われている。一方で、米国公衆衛生協会(APHA)の調査によると、予防のために使われている医療費は、医療費全体のわずか3%にすぎない。そこで、カウンシル・フォー・リスポンシブル・ニュートリション(CRN)財団の資金提供で、経済調査会社フロスト&サリバンがサプリメントによる医療費削減効果 […]
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2013年11月記事 vol.114 ハーブ・栄養サプリメント、9年連続売上げ増
ハーブの啓蒙に力を入れるアメリカン・ボタニカル・カウンシル(ABC:米国植物協議会)は2013年11月に創立25周年を迎え、重要刊行物の一つ、『ハーバルグラム』も今年で創刊30周年となる。この間、民間療法として扱われてきたハーブだが、90年代後半からの代替医療ブームで科学的エビデンスも整い、その有用性が注目されている。オバマケアで国民皆保険を目指す米国、予防医療ではハーブ・栄養サプリメントに関心が集まっている。 「医療費の削減が期待」 テキサス州オースティンを拠点とする非営利団体ABCは、1980年代のナチュラル志向ブームでハーブの関心が高まる中、1988年に設立された。ハーバル・カーボーイのニックネームで知られるABC創設者でエクゼクティブ・ディレクターのマーク・ブルーメンソール氏は「ハーブ業界や消費者は、ハーブに関する科学的エビデンスに基づいた信頼できる情報を渇望していた」と当時を振 […]
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2013年10月記事 vol.113 オバマケア、米国皆保険の登録手続きでアクセス殺到
10月17日、米国与野党の対立で2週間以上続いていた政府機関の一部閉鎖が解除された。デフォルト(債務不履行)が土壇場で回避されたが、今後の予算計上で大きな火種となっているのが、「医療保険制度改革法(Affordable Care Act)」、いわゆるオバマケアである。10月1日に50州で保険の登録が開始され、好調なスタートを切ったオバマケアの現状を報告する。 高額な医療費請求、自己破産者が相次ぐなど社会問題化 2010年3月、米国議会で日本の国民健康保険のような皆保険を目指す制度、「医療保険制度改革法」が成立した。米国は医薬品が他の先進国に比べ3割ほど高いといわれている。これまで高額な医療費を請求され、自己破産者が相次ぐなど社会問題化していた。米国勢調査局の統計によると、2012年の米国における医療保険の未加入者は約4800万人(全人口の15.7%)であった。ちなみに、2011年は486 […]
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2013年9月記事 vol.112 米国立補完代替医療センター(NCCAM)、プロバイオティクスの研究を本格化
米国でプロバイオティクスへの認知度が高まっている。ヨーグルトや発酵食品の整腸作用が盛んに喧伝されているためだ。米食品医薬品局(FDA)はまだプロバイオティクス商品の健康表示を許可していないが、消費者の関心の高まりから、傘下の米国立補完代替医療センター(NCCAM)が効用の検証に乗り出している。プロバイオティクス商品の市況を報告する。 米国で高まるプロバイオティクス人気 「プロバイオティクスは、バクテリアなどの生きた微生物で、わたしたちの体にすでに存在する微生物と同じかあるいはそれに非常に近いものです。バクテリアというと、とかく体に有害な細菌と思われがちですが、バクテリアの多くは体の機能を正常にする働きがあります」。そう語るのは、米国立衛生研究所(NIH)の傘下にあるNCCAMのディレクター、ジョセフィーン・P・ブリッグス医学博士である。 ブリッグス博士は、近年の消費者のプロバイオティクス […]
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2013年8月記事 vol.111 米国で需要高まるアレルギー対策商品
FDAがグルテンフリーの新規制を発表 スーパーマーケットや健康食品店にずらりと並ぶアレルギー関連商品。10年ほど前はまだ珍しかったグルテンフリー食品も、今では店の一角に特別コーナーが設置されるなどニーズが高まっている。米国におけるアレルギー対策商品の市況を報告する。 小麦やライ麦に含まれるグルテンでアレルギーを発症 「セリアック病の症状悪化を防ぐには、グルテンフリーの食生活が必須だ」。FDA(米国食品医薬局)コミッショナーのマーガレット・A・ハンバーグ氏はそう指摘する。 小麦やライ麦などに含まれる蛋白質の一種、グルテン。このグルテンを含む食品を摂ると、免疫系が小腸の内膜を攻撃、内膜にある小さな突起にダメージを与え、小腸からの栄養分の吸収を阻害する。これにより、慢性の下痢、腹部の膨満感や痛み、貧血、疲労感などが生じる。 こうした症状はセリアック病と呼ばれ、アレルギー症状を伴う。セリアック […]
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2013年7月記事 vol.110 米国ダイエット産業、低成長時代に突入
米国のダイエット市場は616億ドル 大手市場調査会社マーケットデータの最新調査報告「The U.S. Weight Loss & Diet Control Market」によると、アメリカの2012年ダイエット関連商品売り上げは前年比1.7%増の616億ドルで、2010年の584億ドルを3.8%上回った。2013年の売り上げについては前年比2.6%増と予測している。代表的なダイエットセンターのウェイト・ウォッチャーズやジェニー・クレイグの2012年の売上高をみると、前年比横ばいの34億2000万ドル。2016年までには年間平均2.7%増のペースの伸びが予想されている。 ダイエットフードの宅配が一頃話題となったが、こちらは低迷気味。2012年の売上高は8億5800万ドルで2009年に比べ7.5%減少。売上の46%シェアを占めるニュートリシステムも5年連続で売り上げダウンとなり、苦戦し […]
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2013年6月記事 vol.109 米国IFIC調査、健康に関する意志と現実に大きなギャップ
運動、健康的な食生活、体重管理はあくまで自分次第とわかってはいるものの、実行するのは困難――そんなアメリカ人の健康に関する意志と現実のギャップが浮き彫りになった調査結果が公表された。毎年行われるこの食と健康の意識調査で明らかになった今年の傾向とは? アメリカの成人の36%が肥満と推定 先月末、健康・栄養・食の安全について科学的根拠のある情報を提供するInternational Food Information Council Foundation(IFIC)の「2013年版Food & Health Survey」が発表された。 同調査は今年4月11日から19日にかけ、18歳から80歳までのアメリカ人1006人を対象に行われた。肥満対策が緊急課題となっている米国だが、同調査によるとアメリカ人の56%が20ポンド(約9キログラム)体重が増えるくらいなら、1000ドル(約10万円)を失 […]
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2013年5月記事 vol.108 医療費高騰で苦しむ米国、代替医療に注力
米国立衛生研究所(NIH)がこのほどロゴを一新した。傘下の米国立補完代替医療センター(NCCAM)など27の研究機関も同一のロゴとなる。既存医療と代替医療の統合化など、医療費削減へ向けた米政府の取り組みが注目される。 代替医療研究、2014年度予算はおよそ1億3000万ドル 米政府の尽きない悩みの種、それが年々増え続ける医療費の高騰。その解決の糸口として期待されているのが代替医療の活用である。 漢方にアーユルヴェーダ、カイロプラクティクスに栄養療法、アロマに心理療法といったさまざまな代替医療と既存医療とのコラボレーションによる医療費削減へ向けた医療体系の構築の模索が続いている。 代替医療の研究に投じる米政府の予算も増す一方だ。米国立衛生研究所(NIH)の傘下にあって、代替医療の有効性の検証を行う米国立補完代替医療センター(NCCAM)に割り当てられた2014年度大統領予算案は1億2904万 […]
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2013年4月記事 vol.107 約880万人のアメリカ人男性が冠動脈性心疾患
米国心臓協会によると、アメリカの成人男性の3人に1人がなんらかの心臓血管疾患を抱えているという。 アメリカ人男性の死因のトップは心臓血管疾患で、現在約880万人の男性が冠動脈性心疾患(CHD)を抱えている。 2009年には21万69人の男性がCHDで死亡。心臓血管疾患による男性の死亡者は38万6436人にものぼる。 心臓血管疾患は女性より男性に多く、2010年にバイパス手術を受けた患者の74.9%、また2011年に心臓移植した患者の68.7%が男性だった。 心臓血管疾患の要因として、肉の摂食や過食での肥満による代謝障害が指摘されており、食生活の改善が急務となっている。食事による心臓の健康維持についての最近の研究では、British Journal of Nutrition誌13.2月号がカロチノイド色素のリコペンが有用であると報じている。 Tufts UniversityおよびBoston […]
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2013年3月記事 vol.106 米国女性の平均寿命が低下、主要メディアが一斉報道
一般的に、男性に比べ女性の方が健康への関心が高く、食生活にも注意を払っている。世界的な傾向として、女性は男性より平均寿命が長い。ところが、つい最近、米国で女性の平均寿命が下がっているという調査報告が発表され話題を呼んでいる。 米国の43%の郡で女性の平均寿命が低下 なぜか、アメリカ人女性の平均寿命が低下している–。そんな報道を米国の主要メディアが一斉に行った。 米国各州で、女性が負担額を気にせずに予防医療サービスを受けられる法が整い、予防の検査を受けている女性も少なくない。一般的に、女性は健康への関心が高く、食事や生活習慣にも注意を払いがちだ。それなのに、なぜ平均寿命が低下しているのか。 主要メディアがこぞって取り上げたのは、3月4日付の医療専門誌Health Affairsに掲載されたウィスコンシン大学の研究報告である。 3,141の全米のほとんどの郡について、10年間にわ […]
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2013年2月記事 vol.105 米国で寿司ブーム、和食がヘルシーフードの定番に
アメリカですっかりヘルシーフードとして定着した日本の寿司。アメリカ人が寿司を箸で上手に口に運ぶ光景は、もう珍しくなくなった。米国で浸透しつつある和食という文化。前回の、大豆、穀物に続き、魚や緑茶といった日本人に馴染み深い食の広がりについて報告する。 空前の寿司人気、一方で魚介類の消費量が減少 先日、運転しながらラジオを聴いていた。すると、「週末に寿司屋に行き、緑茶を飲んで枝豆をつまみながら、メニューから寿司を選ぶ時が、最高にハッピーな気分」と、DJが話していた。とにかく寿司好きのアメリカ人が実に多い。 アジア・パシフィック・ジャーナルの2012年寿司統計によると、日本国外に推定16,000軒の寿司屋があり、うち3,846軒がアメリカで営業しているという。 アメリカの寿司業界の年間の市場は20億ドルで、2000年から2005年までに寿司の消費量は40%もアップしている。 寿司に緑茶。日本人 […]
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2013年1月記事 vol.104 玄米に米ぬか、免疫力向上で期待される機能性
米国で日本発祥のマクロビオティクス(以下マクロビ)がヘルシーな食事法として高い評価を得ている。そこで注目されているのが、マクロビの主食となる玄米。前回の大豆に続き、アメリカ人が健康作りで最も関心を寄せる和の食材を取り上げる。 米ぬかの粘膜免疫、ビル&メリンダ・ゲイツ財団で研究支援 世界最大の慈善基金団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」。2000年、世界の病気や貧困の撲滅を目的に、マイクロソフト会長のビル・ゲイツと妻のメリンダが創設した財団(本部:ワシントン州シアトル)である。 現在、この財団が研究費を支援しているのが、米コロラド州立大学の研究員らによる研究、そのテーマが「米ぬかの粘膜免疫向上効果」である。 米ぬかは、玄米を精白する過程で、除去した表皮や胚芽を粉末にしたもの。ビタミンB群や各種ミネラル、食物繊維などを豊富に含むため、栄養の宝庫と呼ばれている。 研究は、世界中の子供たちの病気や […]