ワールドヘルスレポート
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最新記事
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2024年10月号記事 vol.245 人類の平均寿命はここ30年で延び幅が鈍化
「人生100年時代」の到来は、現状では期待できないようです。食生活の向上や医学の進歩の恩恵を受け、19世紀から20世紀にかけて平均寿命はほぼ2倍に延びましたが、ここ30年でその延び方が鈍化し、最も長寿の国でも1990年以降の平均寿命の延び幅は平均するとわずか6.5年だったことが、新たな研究で明らかになりました。米イリノイ大学シカゴ校公衆衛生学部のS. Jay Olshansky氏らによるこの研究結果は、「Nature Aging」に2024年10月7日掲載されました。 Olshansky氏は、1990年に「Science」誌に、人間の平均寿命は85歳で上限に近づいているとする論文を発表しました。この見解に異を唱えた研究者らは、医療と公衆衛生の進歩により20世紀に認められた寿命の延長は加速を続けたまま21世紀に突入すると予測しました。しかし、今回発表された新たな研究では、老化の容赦ない影響を […]
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2024年9月号記事 vol.244 「声の変化」からCOPD増悪を予測
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を、患者の声の変化から予測できることを示した新たな研究結果が報告されました。患者の声は、増悪が始まる直前には高くなり、増悪が始まるとかすれることが判明したといいます。この研究を実施したマーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学(オランダ)のLoes van Bemmel氏らは、これらのサインを使ってCOPDの増悪に備えられるようにするためのスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に取り組んでいます。この研究結果は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024年、9月7~11日、オーストリア・ウィーン)で発表されました。 Van Bemmel氏は、「アプリの開発に成功すれば、家庭でCOPDの増悪を早期に検知し、診断につなげられる可能性がある。そうすれば、患者自身が自宅で増悪を管理できるようになるだろう」と言います。 COPDは肺気腫や慢性気管支炎を […]
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2024年8月号記事 vol.243 慢性的なカフェイン摂取で心血管疾患リスクが増加
コーヒーや紅茶などのカフェイン入りの飲み物は、世界中で朝食の定番になっていますが、飲み過ぎは良くないようです。1日に400mg超のカフェイン摂取は健康な人の心血管疾患のリスクを高める可能性があることが、新たな研究で示唆されました。Zydus Medical College and Hospital(インド)のNency Kagathara氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会アジア学術集会(ACC Asia 2024、8月16〜18日、インド・デリー)で発表されました。 この研究では、18~45歳の正常血圧で健康な成人92人(男性62%、30歳超60%、都市居住者79.3%)を対象に、慢性的なカフェイン摂取が心臓にもたらす影響が検討されました。慢性的なカフェイン摂取とは、週に5日以上、1年以上にわたってカフェイン含有飲料を摂取している場合と定義されました。全ての対象者は、3分間の踏み台昇 […]
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2024年7月号記事 vol.242 排便回数は健康状態に関連
健康な人において、1日の排便回数(bowel movement frequency;BMF)は、健康に大きな影響を及ぼしていることが、米シアトルにあるシステム生物学研究所のJohannes Johnson-Martinez氏らの研究で明らかになりました。BMFにより、腸内細菌叢の属、血中代謝物、および生活習慣因子に違いが認められ、便秘と下痢は、それぞれ腎臓や肝臓の機能に悪影響を及ぼし得る可能性が示唆されたといいます。この研究の詳細は、「Cell Reports Medicine」に7月16日掲載されました。 Johnson-Martinez氏らはこの研究で、1,425人の健康な成人の医療と生活習慣に関するデータを収集して分析しました。対象者はBMFに基づき、1)便秘群(週1~2回)、2)低頻度群(週3~6回)、3)高頻度群(1日1~3回)、4)下痢群の4群に分けられました。その上で、BMF […]
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2024年6月号記事 vol.241 生活習慣の改善でアルツハイマー病の進行が抑制か
食事や運動などの健康的な生活習慣を組み合わせて取り入れることにより、軽度認知障害(MCI)や初期の認知症の患者の認知機能維持に役立つことが、米国の非営利団体である予防医学研究所(Preventive Medicine Research Institute)所長のDean Ornish氏らが実施したランダム化比較試験(RCT)で示されました。このRCTでは、健康的な食事、定期的な運動、ストレスマネジメントなどを組み合わせた生活習慣改善プログラムを受けた患者の約71%で認知症の症状が安定、または薬剤を使わずに改善していました。それに対し、こうした生活習慣の改善を行わなかった対照群では約68%の患者で症状の悪化が認められたといいます。この試験の詳細は、「Alzheimer’s Research and Therapy」に6月7日掲載されました。Ornish氏らは、「生活習慣の改善が認知症やアルツ […]
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2024年5月号記事 vol.240 IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?
腹痛などの過敏性腸症候群(IBS)の症状を軽減する最善の治療法は適切な食事法であることを示唆する結果が、ヨーテボリ大学サールグレンスカアカデミー(スウェーデン)のSanna Nybacka氏らが実施した臨床試験で示されました。同試験では、IBSの症状に対する治療法として2種類の食事法の方が標準的な薬物治療よりも優れていることが示されました。詳細は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に4月18日掲載されました。 IBSは、消化器疾患の中で最も高頻度に生じる上に、治りにくい疾患の一つです。米国人のIBSの有病率は約6%で、患者数は男性よりも女性の方が多いです。IBSの症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などの無視しがたいもので、死に至る場合もあります。IBSに対しては、食事の改善のほか、便秘薬や下痢止め薬、特定の抗うつ薬、腸管内の水分の分泌 […]
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2024年4月号記事 vol.239 気候変動により脳卒中による死者数が増加か
気候変動による気象の激しい変化は、脳卒中による死者数の増加につながっているようです。新たな研究で、2019年には、厳寒をもたらす寒冷前線や灼熱の熱波が年間50万人以上の脳卒中による死亡に関係していた可能性のあることが示されました。中南大学湘雅医院(中国)のQuan Cheng氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月10日掲載されました。 Cheng氏は、「近年の劇的な気温の変動は、人間の健康に影響を及ぼし、広範な懸念を引き起こしている」と述べ、「われわれの研究では、このような気温の変動は世界中で脳卒中の負担を増加させ、特に高齢者や医療格差の大きい地域においてその影響が強い可能性が示唆された」と同誌のニュースリリースの中で述べています。 研究グループは、「気温は、高過ぎても低過ぎても、脳卒中のリスクを高め得る」と説明します。気温が低いと、血管が収縮して血圧が上昇します。高血圧 […]
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2024年3月号記事 vol.238 健康的な食事による生物学的な老化の遅れが認知症予防に
健康的な食生活を送っている人は年を取っても脳の健康を維持しやすい――。当たり前のように思えることかもしれませんが、科学者たちはその理由を明らかにできていませんでした。しかしこのほど、その答えとなり得る研究結果が発表されました。この研究によると、健康的な食事は生物学的老化のスピードを遅くし、脳機能の保護に役立っている可能性があるといいます。論文の筆頭著者である、米コロンビア大学アルツハイマー病・加齢脳タウブ研究所のAline Thomas氏は、「われわれの研究では、より緩徐な老化速度が、健康的な食事と認知症リスク低下との関係の一部を媒介していることが示唆された」と述べています。この研究の詳細は、「Annals of Neurology」に2月26日掲載されました。 Thomas氏らは今回、健康的な食事は生物学的老化を遅らせ、それにより認知症の発症リスクが低下するという仮説を立て、フラミンガム […]
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2024年2月号記事 vol.237 自然の中の散策は注意力を回復させる?
都会でアスファルトの上を歩くよりも森の中を散歩した方が、頭が冴えるようです。米ユタ大学の樹木園を散歩した人では、アスファルトだらけの医学部キャンパスを散歩した人に比べて、散歩後に、注意力に関係する機能の一つである実行制御が改善することが、脳波(EEG)の測定から明らかにされました。ユタ大学心理学分野のAmy McDonnell氏とDavid Strayer氏によるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月22日掲載されました。 Strayer氏らは、人間には自然に対する原始的な欲求があると話します。同氏は、「これは、人間は何十万年にもわたる進化の中で自然や生物とのつながりに愛着を持つようになったとする、バイオフィリアと呼ばれる考え方だ」と説明し、「現代の都市環境は、携帯電話や自動車、コンピューター、交通が密集する都会のジャングルと化している。これは、回復力を備え持つ自然 […]
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2024年1月号記事 vol.236 料理が苦手な高齢者の一人暮らしでは死亡リスクが高まる?
一人暮らしの高齢者は、調理技術が低いと死亡率が高まる可能性のあることが、東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野の谷友香子氏らによるコホート研究から示されました。調理技術が高い一人暮らしの高齢者と比較すると、低い人では死亡リスクが2.5倍に上った一方で、同居している高齢者では調理技術と死亡リスクに関連は見られませんでした。研究結果の詳細は「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に11月10日掲載されました。 調理技術が低いことと自炊の機会が少ないことには相関性がありそうだと誰もが想像するでしょう。さらに自炊の機会が少ないことは栄養の偏りなどを引き起こすことで健康リスクにつながる可能性があり、その傾向は一人暮らしの高齢者ほど強くなると考えられています。このような背景から谷氏らは今回、自立して生 […]
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2023年12月号記事 vol.235 赤ワインで頭痛が生じる人がいるのはなぜ?
ホリデーシーズンには数え切れないほどのコルク栓が開けられ、たくさんのワインが飲まれることになりますが、飲酒を楽しむ人たちの中で密かにひどい目にあう人がいます。それは赤ワインを飲んだ時だけ小さなグラス1杯でも頭痛が起きてしまう人です。今回、米カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部のApramita Devi氏らが、このような「赤ワイン頭痛」が引き起こされる原因の解明につながり得る研究結果を、「Scientific Reports」に11月20日発表しました。それによると、果物や野菜に含まれているフラボノールの一種であるケルセチンが、赤ワイン頭痛を引き起こしている可能性があるといいます。 アルコールは、まず肝臓でアセトアルデヒドに分解され、次いで、主にALDH2 (2型アセトアルデヒド脱水素酵素) により酢酸に分解されます。ALDH2遺伝子には多くの多型がありますが、その中にはALD […]
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2023年11月号記事 vol.234 生物学的年齢は脳卒中や認知症のリスクに影響を及ぼす
年齢には、出生からの経過年数で表す暦年齢(れきねんれい)のほかに、科学者が生物学的年齢と呼ぶものがあります。これは、老化や健康状態の個人差を加味した年齢で、テロメアの長さ、エピジェネティック・クロックや多様な生物学的バイオマーカー値を基に算出されます。スウェーデンの新たな研究で、この生物学的年齢が暦年齢を上回っている人では、認知症や脳梗塞(虚血性脳卒中)の発症リスクが高まることが明らかになりました。カロリンスカ研究所(スウェーデン)医学疫学・生物統計学部門のSara Hägg氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry」に11月5日掲載されました。 一般的に、心血管疾患や神経変性疾患などの慢性疾患のリスクは加齢とともに増加すると考えられていますが、これまでは暦年齢を使って研究を行うことが一般的でした。しかしH […]