ワールドヘルスレポート

海外の健康や医療に関する旬なニュースをお届けしています。
2021年記事
-
2021年12月号記事 vol.211 口の健康と身体の健康
口腔衛生が身体の健康に深く関わっていることが、近年指摘されています。今回は、日本国内での研究から、口腔機能と健康の関係についての報告をご紹介します。 中年期でも口の健康と栄養状態が有意に関連 口腔機能が低下している高齢者は栄養状態も良くないことが知られていますが、このような関連は非高齢者でも認められることが明らかになりました。東京歯科大学老年歯科補綴学講座の上田貴之氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Dental Research」に2021年11月17日掲載されました。 研究の対象は、東京都内の歯科医院(単施設)で2016年7月~2018年6月に歯科健診を受けた40~64歳の中年期成人117人。口腔機能は、残存歯数、口腔水分、口唇と舌の巧緻性、舌圧、口唇閉鎖力、および咀嚼能力で評価しました。一方、栄養状態は、BMI、除脂肪量指 […]
-
2021年11月号記事 vol.210 入浴の健康効果
日に日に寒さが厳しさを増し、温かいお風呂にゆっくり浸かってリラックスすることが一日の終わりの楽しみ、という方も多いのではないでしょうか。今回は、入浴の健康効果、そして入浴における注意について国内・国外からのレポートをご紹介します。 就寝前の入浴で睡眠が改善 ぐっすり眠れない…という人は、就寝前に入浴するとよいかもしれません。米テキサス大学のShahab Haghayegh氏らの研究から、就寝の1~2時間前に温浴したり温水シャワーを浴びたりすることで、入眠までの時間が短縮し、全体的な睡眠時間が延長することが明らかになりました。また、全般的な睡眠の質も向上したということです。この研究結果は「Sleep Medicine Reviews」2019年8月号に発表されました。 Haghayegh 氏らは今回、就寝前に温かいシャワーやお湯に浸かることと睡眠との関連を調べた17件の研究デー […]
-
2021年10月号記事 vol.209 適切な睡眠時間と健康
近年、健康管理における睡眠の重要性が注目を集めるとともに、日本人の睡眠不足の問題が指摘されています。「睡眠負債」という言葉を聞かれたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、適切な睡眠の重要性と日本人の子供の睡眠について、国内外からのレポートをご紹介します。 適切な睡眠時間は認知機能低下のリスクを下げる? たとえ初期段階のアルツハイマー病患者であっても、適切な睡眠時間を確保することで、加齢に伴う認知機能低下のリスクを下げられる可能性のあることが新たな研究で明らかにされました。睡眠時間は少な過ぎても多過ぎても認知機能低下と関連したということです。米ワシントン大学医学部のDavid Holtzman氏らによるこの研究結果は、「Brain」に2021年10月20日掲載されました。 Holtzman氏らは、同大学のKnight Alzheimer Disease Researc […]
-
2021年9月号記事 vol.208 規則正しい食生活と健康
健康の維持のために大切な規則正しい食生活。今回は、日本と米国からの報告をレポートします。 食事の時間が不規則な人にはメンタル不調者が多い 食事を取るタイミングが不規則な人は、メンタルヘルス状態が良くないという関連性を示唆するデータが報告されました。早稲田大学理工学術院の田原優氏らが、日本人労働者4,000人以上を対象に行ったWebアンケート調査の結果を解析したもので、詳細は「Nutrients」に2021年8月13日掲載されました。 今回発表された研究は、日本各地から9,000人近くを対象としました。そのうち年齢(20~69歳)や有職者であることなどの適格条件を満たす4,490人分のデータが解析されました。 その結果、食事時刻が不規則な人は、そうでない人と比較して主観的幸福感が低いという有意差が見られました。また、食事時刻が不規則な人は、神経症傾向と正の相関、誠 […]
-
2021年8月号記事 vol.207 若さを保つ秘訣
いつまでも若さを保てたら…、と考える方は多いのではないでしょうか。今回は、若さを保つ秘訣を国内、国外のレポートからご紹介します。 コーヒー・緑茶をよく飲む中年期女性はBMIが低く血管年齢が若い 全身の健康に大きく関係する血管。最近では血管年齢を若く保つことの大切さが注目を集めています。血管年齢を計測する機械や、血管年齢を若く保つためのサプリメントなどを目にすることも多くなりましたが、血管年齢を若く保つためにはコーヒーや緑茶が効果的であるようです。 コーヒーや緑茶の摂取量が多い中年期の女性は、BMIや体脂肪率が低く、血管の柔軟性が保たれていることを示す結果が、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座の寺内公一氏らの論文(「Nutrients」2021年5月11日オンライン版掲載)で示されました。 寺内氏らは、東京医科歯科大学病院の更年期外来を受診した患者 […]
-
2021年7月号記事 vol.206 最善の学習法は手で書いて覚えること?
近年、タブレット端末や便利な学習アプリが手軽に使用されるようになり、「勉強をするには、最新のツール?それとも、これまでの手書きのどちらが効果的?」と迷ったことがある方は多いのではないでしょうか。ある種の技術を習得するには、キーボードで打ったり、ビデオを見たりするよりも、手で書いて学ぶ方がはるかに早く、覚えも良いことが、新たな研究で示唆されました。米ノースカロライナ大学心理学分野のRobert W. Wiley氏と米ジョンズ・ホプキンス大学認知科学分野のBrenda Rapp氏によるこの研究結果は、「Psychological Science」(6月29日)に掲載されました。 研究では、42人の成人を、手書き、タイピング、映像視聴のいずれかの方法でアラビア語のアルファベットを学ぶ群に割り付け、文字を覚えること、そして文字を認識できるだけでなく、どの程度、その文字を使って書いたり、知らない単語 […]
-
2021年6月号記事 vol.205 人生の目的と健康的生活習慣
人生の目的と健康的生活習慣に有意な関連―健康管理士対象の調査 人生の目的がしっかりしている人ほど、日々の生活を健康的に過ごしていることが埼玉医科大学総合診療内科の廣岡伸隆氏らの研究(「BMC Public Health」2021年4月29日)で明らかになりました。著者らはこの結果から、「生活習慣が健康的であるということは、人生に明確な目的があるということでもある」と記しています。 廣岡氏らの研究は、国民健康・栄養調査と同様の広範な質問項目によって生活習慣を総合的に評価した上で、人生の目的意識との関連を検討したものです。 検討の対象は、日本成人病予防協会認定の健康管理士の有資格者であり、ヘルスリテラシーの高いことが見込まれる集団。生活習慣は、体重管理の意思、運動・飲酒・喫煙習慣の有無、食品の栄養成分表示ラベルを確認するか、バランスの取れた食事をしているか、運動を心がけているか、ストレスの程度 […]
-
2021年5月号記事 vol.204 オンラインコミュニケーションの注意点
コロナ禍で、職場やプライベートで、オンラインでのコミュニケーションやSNSの活用の機会が増えたのではないでしょうか。今回はZoom疲れやSNSの注意点について、海外からのレポートをご紹介します。 「Zoom疲れ」しないために大切なものとは? 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中にZoomなどを使ったWeb会議が急増し、多くの人に「Zoom疲れ」と呼ばれる症状が生じています。そんな中、Web会議への参加者がチームへの帰属感を感じることにより、そのような疲労感を軽減できる可能性があるとする研究結果が報告されました。米オールドドミニオン大学のAndrew Bennett氏らによるこの研究は、「Journal of Applied Psychology」2021年3月号に発表されました。 Bennett氏らは、法律事務や金融、エンジニア、医療、教育、情報テクノ […]
-
2021年4月号記事 vol.203 音楽の健康への効果
音楽が心や体の健康に有効であることは、これまでも指摘されてきました。今回は、音楽の健康効果についての報告をご紹介します。 音楽は心臓の健康に良い、AHAニュース ユニバーシティ・ヘルス・ネットワーク(カナダ)の循環器専門医で、音楽による心臓の健康促進について研究しているDavid Alter氏は、「Psychology of Sport and Exercise」2021年3月号に発表した論文で、音楽に運動のつらさから気をそらす力があることを明らかにしています。「だからこそ、音楽を聞きながらだと、普段より長めに、あるいは強度を上げて、運動できるのだろう。音楽は薬といっても過言ではない」と同氏は強調します。 古代ギリシャでも音楽のこのような治癒力は認識されていたようで、古代の医師たちは、患者を癒すためにフルートと弦楽器を利用していたと言われています。Alter氏は、「音楽は人間 […]
-
2021年3月号記事 vol.202 オンライン授業で親子のウェルビーイングが悪化
コロナ禍で、学校ではリモート授業の導入が検討されたり、職場でもテレワークが進んだりと、感染対策で大きな変化がありました。今回は、これらの変化が学校や職場で与える影響について、海外・国内のレポートをご紹介します。 オンライン授業で親子のウェルビーイングが悪化 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響により、学校での対面授業ではなくオンライン授業を受けている子どもとその親は、精神的、感情的、身体的な健康状態が悪化している可能性があるとする研究結果が、「Morbidity and Mortality Weekly Report」2021年3月19日号に報告されました。 新型コロナウイルス感染拡大のスピードを抑えるために、米国では2020年3月 に多くの学校が閉鎖され、授業がオンライン化されました。しかし、このような授業形式の変更は、子どもと親に心理社会的ストレ […]
-
2021年2月号記事 vol.201 腰痛治療の新ガイドライン ―まずは薬物療法以外を
寒い日が続き、自宅や屋内で過ごす時間が長くなっている方も多いのではないでしょうか。このような時に、気になるのが運動不足と、座りっぱなしによる腰痛。今回は、腰痛について国内外からの研究報告をご紹介します。 米国内科学会(ACP)が発行した新たなガイドラインによると、腰痛患者にはまず薬剤を用いない治療法を試すことが推奨されるということです。今回の勧告は、「Annals of Internal Medicine」に2017年2月14日オンライン掲載されましたが、この勧告は、腰痛治療に関するさまざまな研究のレビューに基づくものでした。ACP代表のNitin Damle氏によると、「神経根性(radicular)」腰痛は椎間板ヘルニアなどによる脊髄神経の圧迫に起因するもので、脚の放散痛や筋力低下、しびれなどの症状を伴います。一方で、明確な原因のない短期的な「非特異的」腰痛の多くは、加温 […]
-
2021年1月号記事 vol.200 今からできる春のアレルギー対策
今年も、花粉症の季節が近づいてきました。そろそろ病院を受診したり、薬の服用や点眼薬を始めたり、対策を始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、花粉症やアレルギーについて、国内・国外のレポートをご紹介します。 花粉飛散量が多いと慢性骨盤痛の症状が悪化する? 花粉飛散量が増えると肺に悪影響を及ぼすことはよく知られていますが、一部の人では骨盤痛が悪化し得ることが、新たな研究で示唆されました。米ワシントン大学医学部のSiobhan Sutcliffe氏らによるこの研究結果は、「Journal of Urology」に2021年12月21日掲載されました。 この試験の結果では、花粉飛散量が中等量または大量の閾値を超えた場合には、泌尿器科慢性骨盤痛症候群(UCPPS)症状再燃が有意に増加したことが明らかになりました。こうした結果を受けてSutcliffe氏は、「今回の研究か […]