近年、タブレット端末や便利な学習アプリが手軽に使用されるようになり、「勉強をするには、最新のツール?それとも、これまでの手書きのどちらが効果的?」と迷ったことがある方は多いのではないでしょうか。ある種の技術を習得するには、キーボードで打ったり、ビデオを見たりするよりも、手で書いて学ぶ方がはるかに早く、覚えも良いことが、新たな研究で示唆されました。米ノースカロライナ大学心理学分野のRobert W. Wiley氏と米ジョンズ・ホプキンス大学認知科学分野のBrenda Rapp氏によるこの研究結果は、「Psychological Science」(6月29日)に掲載されました。
研究では、42人の成人を、手書き、タイピング、映像視聴のいずれかの方法でアラビア語のアルファベットを学ぶ群に割り付け、文字を覚えること、そして文字を認識できるだけでなく、どの程度、その文字を使って書いたり、知らない単語をつづったり発音したりすることができるのかをテストしました。その結果、いずれの点においても、手書き群が他の2群よりも優れていることが判明しました。
Wiley氏は、「どの群も文字の認識の点では申し分ないレベルに達するものの、それ以外の全ての点では手書き群が最も優れていただけでなく、習得に要した時間も短かった」と述べています。同氏らは、このような結果が得られた理由について、「手で書くことで、視覚と聴覚を通して学んだことが強化される。手で書くという行為により、文字の形や音、手の使い方など、文字の習得に付随する知覚と運動の経験が一つにまとめられるのだ」と説明します。なお、この研究の参加者は全て成人でしたが、Wiley氏らは、小児でも同じ結果が期待できるとしています。
Wiley氏らは、今回得られた知見は、タブレットやノートパソコンの使用がメインになりつつある学校授業だけでなく、アプリやカセットテープを通して語学を学んでいる大人にも重要な意味を持つと考えています。同氏らは、「アプリなどで語学学習をしている人は、そこに”紙に書いて覚える”という作業を追加すべきだ」とアドバイスしています。
タッチスクリーンは幼児の集中力の発達に悪影響?
また、近年は大人や子供だけでなく、乳幼児のタッチスクリーンの使用も急増しています。こうした中、幼児が集中力を養う大切な時期にタッチスクリーンを使うことで、悪影響がもたらされるのではないかと懸念する声は高まる一方であるものの、この懸念を実証的に裏付けるエビデンスは報告されていませんでした。
スマートフォンやタブレットなどのタッチスクリーンの使用が、幼児の集中力の発達に影響を及ぼす可能性があるとする研究結果を、英ロンドン大学バークベック校脳・認知発達研究センターのTim Smith氏らが「Scientific Reports」(2021年1月26日)で報告しました。毎日のスクリーンタイムが長い幼児は、スクリーンタイムが短い幼児やタッチスクリーンを全く使わない幼児に比べて、注意散漫である可能性が示されたということです。
Smith氏らは、2015年10月〜2016年3月にかけて、スクリーンタイムが異なる生後12カ月の乳児を対象に、2.5年にわたって追跡し、タッチスクリーンの使用と集中力との関連の解明を試みました。対象者には、生後12、18カ月時、および3.5歳時に、コンピューターを使った課題を行わせ、集中力を評価しました。解析の結果、タッチスクリーンをよく使う幼児では、あまり使わない幼児に比べて、スクリーン上に現れたオブジェクトにより速く目を向け、また、気を散らすオブジェクトを無視できず、集中力が途切れやすいという結果が出ました。
このトピックについては、今後、様々な観点からのさらなる研究が必要であると言えるようです。