ワールドヘルスレポート

海外の健康や医療に関する旬なニュースをお届けしています。
2006年記事
-
2006年12月記事 vol.31 禁煙からパーキンソン病まで、太極拳の効用
アメリカで太極拳の健康効果が注目されている。関節炎やパーキンソン病の症状を緩和し、さらには禁煙にも役立つという。太極拳がもたらす健康効果について報告する。 気血の循環を高め、心と体を芯から癒す 太極拳は、中国古来の太極思想を背景に体系化された中国武術のひとつ。一説には、16世紀後半の中国、ヘビとツルが闘っている夢を見た武術家が、その動きの美しさにインスピレーションを得て生み出したともいわれる。 アメリカには、気血の流れをスムーズにし、体内の陰陽のバランスを整え、心と体を芯から癒す「マインド&ボディ健康法」として、1970年代に紹介された。 全身を使い、呼吸と合わせながら円を描くようなゆっくりとした動きで、気血の流れを良くするため五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の機能が活性化する。基礎代謝が活発になり、老廃物が体外に排出される。 「緩やかな動き」「瞑想」「深呼 […]
-
2006年11月記事 vol.30 酸素療法、米国医療施設で次々に採用
アメリカの医療現場で酸素療法が注目されている。現在、高圧酸素療法は、傷の回復やストレス緩和、心臓疾患、肺疾患の治療などに用いられている。アメリカにおける酸素療法の現況を報告する。 精神や身体機能におよぼす影響など幅広く研究 自然の大気中には酸素が1気圧・濃度21%で存在する。生物は酸素を吸い、二酸化炭素を吐き出す。 このプロセスに何らかの障害が生じると、血液中の酸素が減少し体内の機能にも異変が起きる。 酸素の供給が、心身に多くのメリットを生み出すことは、すでに明らかで、気分や認知力など精神機能におよぼす影響、また糖尿病や心臓病、肺病などの疾患への効用といった幅広い分野の研究が進められている。 自然の状態(1気圧)で取り込まれた酸素は、血液に溶け込み体内の各組織に運ばれるが、その量に限りがある。 酸素カプセルによる高圧酸素療法(HBO)は、平均1.2~2気圧・濃度30~35%の状態に設定さ […]
-
2006年10月記事 vol.29 フランス発祥のタラソセラピー、米国で浸透
アメリカでフランス発祥のタラソセラピーが注目されている。免疫力を高めるほか、ストレス解消やダイエットなど、効用は幅広い。アメリカではまだ本格的なタラソセラピーを提供する施設は少ないが、シーソルトや海藻パックなど家庭でタラソセラピーを楽しめるグッズは豊富で、タラソ人気が高まりつつある。 ヒポクラテスやアリストテレスも海水療法を支持 海は人間のあらゆる病気を治す――そう言ったのは、ギリシャの詩人エウリピデス。480B.C.のことだ。ヒポクラテスやアリストテレスも海水療法の推進者だったといわれる。 1753年に、イギリス人医師が海水の医療効果に関する本を出版。その後、海水療法を応用した病院がイギリスに設立、リュウマチや感染症などの治療が行なわれる。 次いで、フランスにも同様の病院がオープン。1869年には、フランス人医師、ボナルディエールが海水や海藻、海泥などを用いた療法を「タラソセラピー」と […]
-
2006年9月記事 vol.28 米国相補・代替医療機関(NCCAM)も注目、「祈りの療法」
古来より、祈りはストレスを緩和し、精神や身体機能にも良い影響を与えるといわれている。近年では、「精神神経免疫学」といったアカデミックな研究領域で、各種疾患やがんにも作用することが明らかになりつつある。アメリカで、公的医療機関も注目する「祈りの療法」の近況を報告する。 相補・代替医療の中でもトップの利用者数 アメリカで、代替療法を調査・研究するNational Center for Health Statistics and NCCAMが2004年に発表した調査報告によると、代替療法の利用者は62%で、そのうち最も多かったのが、「祈祷者に健康を祈ってもらう」で45%、次いで「自分で自身の健康を祈る」43%、「他の人の健康を祈る」25%という結果が出た。 調査は、全米の18歳以上、約3万1000人を対象にカイロプラクティクス、鍼療法、食餌療法、祈り療法など27種類の代替医療の利用度を調べたも […]
-
2006年8月記事 vol.27 手技(マッサージ)療法、米国で多彩なメニュー
アメリカでマッサージがブームになっている。街には指圧、リフレクソロジーの看板を掲げた店が点在し、ショッピングモールやジムの一角にもマッサージ・コーナーが登場するなど、だれもが気軽に利用している。メニューも指圧、スウェーデン式、タイ古式、リンパと多彩だ。アメリカでのマッサージの利用状況と人気のメニューを紹介する。 2005年の米国でのマッサージ利用者4,700万人 アメリカン・マッサージセラピー協会の調査によると、2005年のアメリカでのマッサージ利用者はおよそ4700万人にのぼり、前年を200万人上回ったという。また、医師に薦められてマッサージを利用している人が多いことも分かったという。 競争社会といわれるアメリカで、ストレス解消や疾患予防にとさまざまなマッサージがうけている。 マッサージは、約4000年前に中国で誕生したといわれている。かの医聖ヒポクラテスも、医師が学ぶべきものとして、 […]
-
2006年7月記事 vol.26 スローフードで、人に豊かな「食」や「健康」見直す
鳥インフルエンザや狂牛病の影響から、世界的に魚食志向が高まるなど、「健康」に配慮した「食」を求める動きが強まっている。インスタントフード、ジャンクフード、ファーストフードといった、経済効率を優先させ、大量生産された手軽な「食」ではなく、人に豊かさと健康をもたらす本来の「食」のあり方を見直すため、今「スローフード」という言葉が注目されている。 健康管理に未精製穀物の摂食を推奨 最近、アメリカの主要スーパーにキノアやアマランサスといったペルー産穀類が並び始めた。これらは通常の小麦全粒と比べ、栄養価が高いといわれている。 例えば、食物繊維は、通常の小麦は12.2g、アマランサスが15.2g、キノアが15.5g。プロテインはそれぞれ13.7g、14.5g、14.2g。鉄分では、3.8mg、7.6mg、4mg(資料;Bob’s Red Mill)。 アマランサス取引の大手、NuWorl […]
-
2006年6月記事 vol.25 インド伝承医学のアーユルヴェーダ、スパで人気メニューに
世界最古の伝承医学としてインドに伝わるアーユルヴェーダ。米国で今、スパブームからアーユルヴェーダが人気だ。トリートメントメニューにアーユルヴェーダを加えたスパが増えている。リゾート気分を味わえる贅沢なスパとインドの伝承医学のコラボレーションが広がりをみせている。 生命エネルギーのバランスを整え、身体の不調和を改善 アーユルヴェーダは、5000年以上も前からインドに伝わる世界最古の体系的な伝承医学。アメリカでは代替医療に分類され、世界保健機構(WHO)でも療法として正式に承認されている。 アーユルヴェーダは、サンスクリット語のアーユル(生命)とヴェーダ(科学)の複合語で、「生命の科学」の意。 宇宙に存在する全てのものは、「空」「風」「火」「水」「地」の5つの要素で構成され、それらが組み合わさり「ドーシャ」と呼ばれる3種類の生命エネルギー、「ヴェータ」「ピッタ」「カパ」を形成すると考えられて […]
-
2006年5月記事 vol.24 高齢者に優しいエクササイズ、ピラティス
米国では、ベビーブーマーがリタイアを迎えることから、予防医学への関心がますます高まっている。心身の健康維持のため、栄養成分の補給だけでなく、精神力のパワーアップをと、ここ数年人気を集めているのが、ヨガや瞑想、気功だ。今回、中でも成長株のピラティスエクササイズを紹介する。 1900年代初頭、負傷兵のリハビリ用フィットネスとして考案 ピラティスエクササイズは1900年代初頭、ドイツ人のJoseph. H. Pilatesが考案したプログラム。第一次世界大戦中、ピラティスはイギリスで捕虜となり、看護師として働くうち負傷兵のリハビリのためベッドの上でも可能なフィットネスを考え出した。 1926年、アメリカに移住したピラティスは、ニューヨークにスタジオを開設。ピラティスの提案するプログラムは多くの著名人に受け入れられ、さらに改良・開発を重ね発展していった。 ここ数年、ピラティスエクササイズはフィッ […]
-
2006年4月記事 vol.23 米国で流行る食事療法の真髄、マクロビオティック
マクロビオティックは、明治時代に日本で生まれた雑穀と野菜を中心にしたヘルシーな食事 法。体のバランスを整え不調を改善するほか、ガンの再発予防や生存率アップに効果があると医療面でも注目されている。最近では、米国のオシャレなエリアでマクロビオティックをメニューに加えるレストランも増えている。食事療法の真髄、マクロビオティックの現況を報告する。 ハリウッドスターやスーパーモデルの間で評判に マクロビオティックは、明治時代の名医、石塚左玄が生み出した食事法「食養生」がベースになっている。 同氏が創設した大日本食養会に参加していた桜沢如一氏(欧米ではジョージ・オーサワの名で知られている)が食養会から独立し、食養生と「宇宙万物は陰陽からなる」という陰陽の法則を組み合わせ、「穀物菜食」という自然に則した食事法を確立し、世界に広めた。 アメリカで普及させたのは、桜沢氏の影響を受けた久司道夫氏。1949年 […]
-
2006年3月記事 vol.22 医療現場で急速に応用進む、ヒプノセラピー
言葉による暗示—、すなわち催眠療法で、痛みやストレス、悪癖の改善など、疾患の引き金となる要因を除去する。近年、こうした試みが医療現場で進んでいる。米国における催眠療法(ヒプノセラピー)の現状を報告する。 公的医療機関で催眠療法を採用 現在、催眠療法は米国の医療現場で急速に浸透している。 例えば、American Society of Clinical Hypnosis(ASCH)のメンバーは医科、歯科、心理学などの博士号を取得しているが、ASCHの認可する催眠療法のトレーニングを最低20時間受講しなければならないとされている。 また、American Psychotherapy and Medical Hypnosis Associationでも医師に6~8週間の催眠療法のコースを設定し、証明書を与えている。 催眠(hypnosis)は、「sleep(睡眠)」を意味するhyp […]
-
2006年2月記事 vol.21 心の深層に刻まれたトラウマを開放、アートセラピー
絵は多くを語る――。言葉ではうまく表現できない心のモヤモヤを、絵画を通して表現する。同時多発テロや超大型ハリケーン「カトリーナ」といった惨事が続くアメリカで、不安や怒りといったネガティブな感情をアートに吐き出し、心を楽にしようとするアートセラピーに関心が集まっている。最新情報を報告する。 災害で受けた心の傷も、絵を描くことで癒される 倒壊するツインタワービル、燃えさかる炎、立ち上る噴煙、そして、次々にビルから飛び降りる人々。01年9月11日、アメリカを襲った同時多発テロの直後、ショックを受けた子供たちはそうした絵を描いた。 アートセラピスト(絵画療法士)は、心の深層に刻まれたトラウマ(精神的外傷)を開放するには、「絵に描いて表現させること、それが癒しにつながる」という。 アートセラピーによる、9.11からの癒しの過程で、「なぜ起きたの?」という言葉を世界地図に綴った子供もいた。惨事につい […]
-
2006年1月記事 vol.20 不眠や鬱に悩む現代人に、ライトセラピー(光療法)
古代ギリシャ、ヒポクラテスの時代から、日光は医療で利用されてきた。現代医学においても、19世紀後半から、日光を治療に利用する医療現場が増えている。第2次世界大戦前、病院には通常、サンルームが設けられ、患者が日光浴をしながら時を過ごしたといわれる。ライトセラピー(光療法)にはどのような効用があるのか。最新情報を報告する。 高齢者の変性関節炎の痛みが軽減 1980年、A・J・Lewyら研究者グループが科学誌「Science」で日光の効用をテーマにした研究を発表したことから、ライトセラピーが広く知れ渡るようになった。 Lewyは、被験者に明るい人工灯(通常の室内灯ではなく)を浴びせると、メラトニンの分泌が抑えられることを確認した。後の研究で、サーカディアンリズム(生物時計の概日リズム)の影響から、夜間に脳の松果体からメラトニンが分泌され、入眠を知らせる作用があることが分かっている。 光線は目の […]