高齢者に優しいエクササイズ、ピラティス

高齢者に優しいエクササイズ、ピラティス

高齢者に優しいエクササイズ、ピラティス

kaigai23 米国では、ベビーブーマーがリタイアを迎えることから、予防医学への関心がますます高まっている。心身の健康維持のため、栄養成分の補給だけでなく、精神力のパワーアップをと、ここ数年人気を集めているのが、ヨガや瞑想、気功だ。今回、中でも成長株のピラティスエクササイズを紹介する。

1900年代初頭、負傷兵のリハビリ用フィットネスとして考案

ピラティスエクササイズは1900年代初頭、ドイツ人のJoseph. H. Pilatesが考案したプログラム。第一次世界大戦中、ピラティスはイギリスで捕虜となり、看護師として働くうち負傷兵のリハビリのためベッドの上でも可能なフィットネスを考え出した。

1926年、アメリカに移住したピラティスは、ニューヨークにスタジオを開設。ピラティスの提案するプログラムは多くの著名人に受け入れられ、さらに改良・開発を重ね発展していった。

ここ数年、ピラティスエクササイズはフィットネスクラブなどで提供するプログラムの中で著しい普及をみせている。

ピラティスエクササイズとは

ピラティスの根底にあるのはボディコンディショニング、心身の調整である。身体に無理な付加を加えず、体の中心(コア)を整えながら、筋力を強化していく。コアやその周辺の筋肉群(腹筋、骨盤、背筋など)に意識を集中し、正しい筋肉の使い方を覚え、身体のゆがみを矯正する。こうしたことによる筋肉機能の アップで姿勢も良くなり、内臓や身体全体の健全化がもたらされる。

ピラティスエクササイズには、マットを使ったもの、独自の道具を使ったものなど様々ある。その種類、600種にもおよぶといわれ、「ジャックナイフ」、 「ブーメラン」、「ハンドレッド」、「レッグ サークル」、「シーテッド ツイスト」、「ロールオーバー」といった名前がつけられている。それら全て、リラクゼーション、呼吸、集中、流れるような動き、調整、といったことがベースとなっている。また、「エクササイズの間、常にニュートラルポジションと言われる背骨の位置に注意する」、「呼吸を意識する」、「意識を集中して滑らかで無駄の無い動きを行う」などの決まり事がある。

身体への負荷が少なく、高齢者にも無理のないエクササイズ

健康維持や肥満解消にフィットネスクラブやジムは相変わらず人気を誇っている。だが、こうした施設・プログラムは殆どが50歳以下を対象にしているため、高齢者がエクササイズを続けるのはかなり辛い。その点ピラティスは、負傷兵のリハビリから始まったこともあり、負荷が少なく、無理なストレッチや激しい動きが無いため、高齢者にも適している。

University of Wisconsin研究者グループは、年齢18歳から26歳で健康体の被験者(女性)15人(ピラティス中級レベルのエクササイズ経験者)を対象にした研究では、被験者をマットエクササイズ セッション2本(初級レベル、上級レベル各50分)に参加させた。エクササイズの初級レベルでは、心肺機能改善運動の推奨ガイドラインを基にした場合、その激しさは、ストレッチなどと比べても、低いことが分っている。

さらに、タフツ大学が行った研究(1994年New England Journal of Medicine掲載)によると、ピラティスに似たトレーニング プログラムに参加した高齢者は、10週間で筋力が113%増大したという。

更年期障害の緩和や関節炎の改善などで有効性

ピラティスの効能としては、更年期障害による症状の緩和、筋肉の柔軟性アップ、背痛の低減、心臓病の改善、循環機能の強化、精神機能の向上、骨粗しょう症、関節炎の改善、などが挙がっている。
腰痛患者22人を対象にピラティスの有効性を調べた研究では、15人がマットエクササイズを1時間ほど行い、残り7人はエクササイズには参加せず、通常の生活を続けた。結果、エクササイズに参加したグループは背骨の下部で痛みがかなり緩和したことが分ったという。

また、認知力障害(軽度から中程度の自閉症、ダウン症候群、外傷性脳障害など含む)の患者(10~17歳、男子21人、女子10人)を対象にピラティス エクササイズの有効性をみた研究(Instructional Review Board of Southern Illinois University Edwardsville認可)では、患者はすべて、ピラティス初級レベルのマットエクササイズを2時間30分行い、Brockport Physical Fitness Testを受けた。結果、骨格筋機能などを調べるテストで、スコアの改善が見られたという。

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