ワールドヘルスレポート

海外の健康や医療に関する旬なニュースをお届けしています。
2017年記事
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2017年12月号記事 vol.163 若者の「スマホ依存症」に注意
近年、中高生や若者の「スマホ依存症」が深刻な社会問題となっています。それでは、スマホの使い過ぎにはどのような問題があるのでしょうか。韓国、米国からの報告を紹介します。 スマートフォン(スマホ)から離れられない若者に脳画像検査を実施したところ、脳内の神経伝達物質の活性のバランスに異常が認められたとする研究結果が北米放射線学会(RSNA 2017、11月26日~12月1日、米シカゴ)で発表されました。この研究は高麗大学(韓国)のHyung Suk Seo氏らが、インターネット依存症またはスマホ依存症と診断された10歳代の男女19人(平均年齢15.5歳)と、年齢および性をマッチさせた依存症のない健康な男女19人(対照群)を対象として実施しました。 その結果、インターネットまたはスマホの依存症患者では、対照群と比べてグルタミン酸-グルタミン(Glx)に対するγアミノ酪酸(GABA)の […]
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2017年11月号記事 vol.162 夫婦関係の健康への影響
夫婦関係が良くなると夫の健康状態は良好に保たれるが、夫婦関係が悪くなると健康状態も悪化する可能性がある―こんな研究結果が「Epidemiology & Community Health」11月号に掲載されました。この研究では、夫婦関係の変化が男性のBMI(体格指数)や脂質値などの心血管リスク因子の変化にわずかですが関連することが示されたということです。 英ブリストル大学のIan Bennett-Britton氏らは、子どもが生まれた既婚男性を19年間にわたり追跡した英国の研究データを用い、研究開始時から6年後の夫婦関係の変化と19年後の心血管リスク因子との関連について検討しました。収入や年齢などのさまざまな因子で調整して解析した結果、夫婦関係の改善は総コレステロール値と拡張期血圧値の改善との間にもより弱いながらも関連が認められました。一方、同期間に夫婦関係が悪化した男 […]
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2017年10月号記事 vol.161 ストレスの対処と「瞑想」の健康効果、米学会の見解
現代はストレス社会と言われ、私たちは日々、多くの場面でストレスにさらされていると言えるでしょう。ストレスの健康への悪影響について様々な研究結果が進められており、心の健康管理も重要であることが指摘されています。特に職場でのストレスは、ストレスチェックの義務化が導入されるなど、近年大きな注目を集めています。今回は、仕事のストレスの対処法とその一つである「瞑想」の健康効果について考えます。 仕事のストレス対処法 仕事のストレスは、多くの人が抱えている問題でしょう。この問題について、米国心理学会(APA)は、ストレスに上手に対処する方法として以下を紹介しています。 ・ストレスの元になっているものは何か、どのように対処するかを突き止めるための日記をつけましょう。 ・ストレスを感じたときは、運動や読書をしたり、睡眠をたっぷりとったりすることで、その影響を最小限に抑えましょう。 ・四六時中仕事のことばか […]
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2017年9月号記事 vol.160 学校の始業時間を遅らせれば830億ドルの経済効果に?
米国内の中学校や高校の始業時間を午前8時30分以降に遅らせれば、10年以内に830億ドル(約8兆9640億円)の経済的な利益がもたらされる―。米国のシンクタンク、ランド研究所がこのような分析結果をまとめた報告書を発表しました。始業時間が遅くなることで中高生の睡眠時間が増え、学業成績が向上し、仕事でも成功しやすくなるため、長期的に見て経済に好影響を与えることになるということです。 米国小児科学会(AAP)などの専門家団体は、思春期の若者の就寝や起床の生体リズムに合わせ、健康を保つのに必要な睡眠時間を確保するため、中学や高校の始業時間を午前8時30分以降とすることを推奨していますが、実際にはそれよりも早い始業時間の中学・高校が82%を占めています。また、中高生で望ましい睡眠時間は8~10時間とされていますが、7時間未満の中高生が最大で60%に上るとの報告もあります。思春期の若者の睡眠不足は精神 […]
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2017年8月号記事 vol.159 運動は大切、でも楽しく適度に?
近年、健康管理の一環として運動の大切さが注目を集めています。しかし、過度の激しい運動や、「自分は運動不足」と考えすぎることは、かえって健康に良くないことも指摘されています。 過度の激しい運動は腸の損傷につながる可能性があることが、モナッシュ大学(オーストラリア)のRicardo Costa氏らの研究で示唆されました。この研究結果は、「Alimentary Pharmacology & Therapeutics」6月7日オンライン版に掲載されました。Costa氏によると、長時間の激しい運動に対するストレス反応は、腸の機能を停止させてしまいます。運動中の筋肉に血流が集中すると、腸では血流が不足して細胞が損傷され、これにより細胞死や腸管壁の損傷、さらには腸内細菌が血流に入り込むことによる全身免疫反応につながる恐れがあり、このような腸の損傷や機能障害は“運動誘発胃腸症候群(e […]
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2017年7月号記事 vol.158 脳卒中後のリハビリ
脳卒中を発症してから長期間が経過した患者を対象とした研究から、リハビリテーション(リハビリ)として「乗馬療法」や、リズムと音楽を組み合わせた「リズム音楽療法」を実施することで身体機能や認知機能が改善する可能性が示されました。「Stroke」6月号に掲載されたこの研究は、ニューカッスル大学(オーストラリア)のMichael Nilsson氏らが実施したものです。 研究の対象は、スウェーデンの大学病院で治療を受けた、発症から10カ月以上5年以内の脳卒中患者123人。これらの患者を乗馬療法群、リズム音楽療法群、標準治療を行う対照群のいずれかに41人ずつランダムに割り付けました。それぞれを専門とするセラピストが主導した結果、これらのリハビリが終了してから6カ月後のバランス能力と移動能力は、対照群よりも乗馬療法群とリズム音楽療法群の方が優れていました。また、身体機能や日常生活動作、移動 […]
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2017年6月号記事 vol.157 眠気覚ましにはカフェインよりも階段?
眠くなると、眠気覚ましについコーヒーや紅茶などのカフェインが入った飲料を飲む方も多いかと思います。しかし、何日か睡眠不足が続いた後では、カフェインを摂取しても覚醒や精神能力を改善する効果が得られなくなることが、米ウォルター・リード陸軍研究所(メリーランド州シルバースプリング)のTracy Jill Doty氏らの研究でわかりました。 研究では、健康なボランティア48人を対象に、5日間、睡眠を一晩5時間に制限しました。被験者は1日2回、カフェイン200mgまたは作用しないプラセボのいずれかを摂取し、さらに起きている間は1時間ごとに知的技能テストを実施しました。その結果、最初の2日間はカフェイン摂取群がプラセボ群よりも試験成績が良かったものの、残りの3日間では差が認められなくなりました。Doty氏は、「カフェインは睡眠が足りないときの能力低下に抗うために広く使用されているため、こ […]
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2017年5月号記事 vol.156 脳卒中の予防で、認知症も予防
筋力トレーニングによって筋肉を強化することは、2型糖尿病リスク抑制や、高齢者の転倒防止など、幅広い年齢層で様々な効果が認められます。今回は、日本と海外からの報告をもとに、筋力トレーニングの有用性についてご紹介します。 筋力トレーニングは日本人の2型糖尿病リスク抑制に有用である可能性が、帝京大学公衆衛生学研究科の桑原恵介氏らによる研究で示されました。勤労者の健康状態についての検討から得られた知見で、「Journal of Diabetes Investigation」電子版に3月2日掲載された論文で明らかにされました。研究では、勤務先の健康診断を受けた非糖尿病の男女2万6,630人(30~64歳)にアンケートを実施し、余暇に筋トレを行っている1,090人(4.1%)と、非筋トレ群で糖尿病発症率を比較しました。平均5.2年の追跡中に2型糖尿病の発症が確認されたのは1,770人。年 […]
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2017年4月号記事 vol.155 認知症対策になる脳の刺激と睡眠
近年、高齢化が進むとともに日本でも認知症が問題となっています。今回は、認知症の対策のために日常生活でできることを米国における研究からご紹介いたします。 精神的な刺激となる活動は、70歳以上の加齢による認知機能低下リスクを低減させることが明らかになりました。この試験は、メイヨークリニックアルツハイマー病研究センター(米国、ミネソタ州)において、Ronald Petersen氏らによって実施されました。メイヨークリニック加齢研究に参加した認知機能の正常な男女1,900人超を4年間にわたり追跡調査しました。研究開始時の対象者の平均年齢は77歳で、研究期間中に450人超が軽度認知障害(MCI)を発症しましたが、特定の精神的な刺激となる活動を定期的に行うと、記憶障害や思考障害のリスクが低下することが明らかになりました。具体的には以下のとおりです。 コンピュータ使用で30%のリスク低下 […]
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2017年3月号記事 vol.154 眼科の定期検診が見逃されている眼疾患の発見に有用
糖尿病は、重篤な眼疾患や失明などの合併症リスクが高いにもかかわらず、糖尿病患者の約3分の2は、年1回の眼科検診を受けていないことが、新たな研究で示されました。米国では、成人の10人に1人が糖尿病患者だとされます。研究著者によると、糖尿病による失明は、眼科検診を年1回以上受診することで95%以上が防げると言われています。「失明は予防できることを糖尿病患者は自覚すべきです。眼科検診の重要性について、もっと理解を深める必要があります」と、研究を主導した米ウィルズ・アイ病院(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のAnn Murchison氏は述べています。 また、高齢者の場合は、糖尿病ではなくても、定期的に眼科検診を受診することによって、気付かれていない問題が発覚することが多いことが明らかになりました。この研究はウォータールー大学(カナダ、オンタリオ)のElizabeth Irving氏らによるもの […]
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2017年2月号記事 vol.153 食事のタイミングにより健康リスクが変わる?
心臓の健康のためには、何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも重要であることが、米国心臓協会(AHA)の新たな科学的声明により報告されました。声明の筆頭著者で米コロンビア大学(ニューヨーク)准教授のMarie-Pierre St-Onge氏によると、身体のさまざまな器官はそれぞれ独自の「時計」をもっているということです。たとえば1日の早い時間帯に比べて、夕方の遅い時間には身体がブドウ糖を処理しにくくなると、同氏は説明しています。短時間に大量に食べたり、朝から夜まで食べ続けたりするよりは、1日の「一定の」時間内でカロリーを分散させて摂取することを勧めており、エビデンスに基づけば、早い時間帯にカロリーを多く摂るほうがよいとAHAは述べています。声明では、「朝食が最も重要な食事である」とは明言していませんが、朝食をきちんと食べる人は、朝食を抜く人に比べて体重、血圧、コレステロール値が良好であり、2 […]
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2017年1月号記事 vol.152 耳掃除のしすぎは有害:最新ガイドラインが警告
耳掃除は耳の損傷につながる可能性があると、米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が発表した最新の臨床診療ガイドラインで警告されています。同ガイドラインは「Otolaryngology-Head and Neck Surgery」1月3日号に掲載されました。 同ガイドラインは、耳垢は耳を清潔にして保護するために生じ、塵や埃などを捉え、耳の奥に入り込まないようにしていると指摘しています。つまり、顎を動かして咀嚼するなどの日常動作で、新しい耳垢は古い耳垢を耳の入口に押し出し、耳垢は剥がれ落ちるか入浴中に洗い流されます。正常な場合は、持続的にこのプロセスが機能しますが、時にこの自浄プロセスがうまく働かずに耳垢がたまってしまい、部分的もしくは完全に外耳道を塞いでしまうことがあります。 ガイドラインでは、過度の耳掃除は外耳道を刺激して感染を引き起こし、耳垢が蓄積する可能性を高めてしまう可能性が示 […]