夫婦関係の健康への影響

夫婦関係の健康への影響

夫婦関係の健康への影響

portrait of young desperate man praying夫婦関係が良くなると夫の健康状態は良好に保たれるが、夫婦関係が悪くなると健康状態も悪化する可能性がある―こんな研究結果が「Epidemiology & Community Health」11月号に掲載されました。この研究では、夫婦関係の変化が男性のBMI(体格指数)や脂質値などの心血管リスク因子の変化にわずかですが関連することが示されたということです。

 

英ブリストル大学のIan Bennett-Britton氏らは、子どもが生まれた既婚男性を19年間にわたり追跡した英国の研究データを用い、研究開始時から6年後の夫婦関係の変化と19年後の心血管リスク因子との関連について検討しました。収入や年齢などのさまざまな因子で調整して解析した結果、夫婦関係の改善は総コレステロール値と拡張期血圧値の改善との間にもより弱いながらも関連が認められました。一方、同期間に夫婦関係が悪化した男性では、常に関係が良好だった男性と比べて拡張期血圧値が2.74mmHg悪化していました。Bennett-Britton氏は「今回分かった夫婦関係の経時的な変化が及ぼす影響は、個人にとっては小さいものだが、社会全体でみればかなり大きなものと考えられるだろう」と述べています。

また、別の研究では「叫ぶ」か「黙り込む」か―夫婦げんかの反応でなりやすい疾患がわかることが明らかになりました。夫婦の意見が合わないとき、怒りを表に出す人では心疾患リスクが高まり、感情を押さえ込んで対話を拒否する人では背中の痛みや肩こりなどの筋骨格系の障害につながる可能性があることが、米ノースウェスタン大学(イリノイ州エバンストン)のClaudia Haase氏らの研究で示唆されました。

研究では、異性婚の夫婦156組に20年以上、5年ごとに研究室で楽しい話題と意見の合わない話題を話し合ってもらい、ビデオに録画しました。試験開始時の年齢は、約半数が40~50歳、残りが60~70歳でした。行動コーディングの専門家が顔の表情、ボディランゲージ、声のトーンを元に対話を評価し、被験者は特定の健康障害の詳細を尋ねる質問票にも記入しました。その結果、怒りと心血管の関係性が最も強いことが判明しました。「怒りを強く表す」群の被験者の81%は、胸痛や高血圧などの心血管症状を20年間で1回以上経験していましたが、「怒りをあまり表さない」群では約53%でした。一方、「強く拒否する」夫の約45%では背中の痛み、筋肉痛または肩こりがみられましたが、「あまり拒否しない」夫では23%のみでした。

今回の研究は行動と健康障害の因果関係を証明するものではありませんが、特に夫では関連性が強くみられ、妻においても重要な関連性の一部が同様に認められました。「この知見から、怒りっぽい人は怒りをコントロールする練習が有益ではないかを検討し、対話を拒否しがちな人は湧き出る感情を押し殺さないようにするとよいことが示唆された」と、Haase氏は話しています。

夫婦関係を良好に保つことと、自分自身の感情をコントロールすること、いずれもなかなかできることではないものの、健康には有益だと言えるようです。日常生活の中で、少しずつ心掛けることが望ましいかもしれません。

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