運動は大切、でも楽しく適度に?

運動は大切、でも楽しく適度に?

運動は大切、でも楽しく適度に?

WHR 201709近年、健康管理の一環として運動の大切さが注目を集めています。しかし、過度の激しい運動や、「自分は運動不足」と考えすぎることは、かえって健康に良くないことも指摘されています。

 

過度の激しい運動は腸の損傷につながる可能性があることが、モナッシュ大学(オーストラリア)のRicardo Costa氏らの研究で示唆されました。この研究結果は、「Alimentary Pharmacology & Therapeutics」6月7日オンライン版に掲載されました。Costa氏によると、長時間の激しい運動に対するストレス反応は、腸の機能を停止させてしまいます。運動中の筋肉に血流が集中すると、腸では血流が不足して細胞が損傷され、これにより細胞死や腸管壁の損傷、さらには腸内細菌が血流に入り込むことによる全身免疫反応につながる恐れがあり、このような腸の損傷や機能障害は“運動誘発胃腸症候群(exercise-induced gastrointestinal syndrome)”と呼ばれます。

今回の研究の結果、運動の強度上昇や時間延長に伴い、腸の損傷や腸内細菌の流出、胃腸の動きの鈍化などが生じやすくなることが分かりました。最大強度の60%に相当する運動強度を2時間以上続けると症状の発生リスクが高まります。また、熱ストレスがあると症状が悪化しやすいことも明らかになりました。Costa氏は、「この問題を防ぐには、運動中はこまめに水分補給を行い、できれば運動前と運動中に少量の炭水化物とたんぱく質を摂るとよい。快適だと感じる範囲で運動することが重要で、運動中に胃腸の痛みを感じたなら、何かが適切でないというサインだと考えてほしい」と話しています。

また、日常的に運動を心掛けることはとても大切ですが、一方で、「自分は運動不足」と考えるだけで寿命が縮む可能性があることが最近の研究で示唆されました。実際の運動量は同レベルであったとしても、「同年齢の人と比べて自分は運動不足」と考えている人は、「同年齢の人と比べて自分は活動的」と考えている人よりも早く死亡するリスクが高い可能性があることが、新たな研究で示されたのです。研究を実施した米スタンフォード大学心理学のAlia Crum氏は「健康に長生きするには、健康的な行動だけでなく健康的な考え方を心掛けることが重要」と話しています。

Crum氏らは今回、主観的な運動量と死亡リスクとの関連について検討するため、米国で定期的に実施されている米国民健康聞き取り調査(NHIS)などの調査データを用い、成人6万1,141人を21年間追跡。実際の運動量、健康状態やそれに影響する行動、社会人口学的因子などで調整して解析した結果、「同年齢の人と比べて自分は運動不足」と考えている人では、「同年齢の人と比べて自分は活動的」と考えている人と比べて追跡期間中に死亡する可能性が71%高いことが示されたとしています。

Crum氏によると、最近、考え方(mindset)が健康面で重要な役割を果たしている可能性があることを示す研究報告が増えつつあるということです。同氏は「これまで、国民の健康増進を目的とした取り組みでは、より健康的な食事をとり、運動量を増やすといった行動面への働きかけに主眼が置かれていた。しかし、健康的な行動に関する考え方への働きかけは進んでいない」と指摘しています。では、日常生活でこの研究結果をどのように生かせばよいのでしょうか。Crum氏らは「十分な運動量を維持するにはジムで厳しいエクササイズをするしかないと考えている米国民は多いだろう。しかし、階段を上ったり、通勤で歩いたり、自転車に乗ったり、掃除をしたりといった日常的な活動を気分良く行うだけでも、健康にベネフィットをもたらす最初のステップになるだろう」と話しています。

健康維持のために日常的に運動を継続することはとても大切ですが、気負い過ぎず、気軽に楽しめる範囲の適度な運動量を日常生活に取り込んでゆけるといいですね。

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