認知症対策になる脳の刺激と睡眠

認知症対策になる脳の刺激と睡眠

認知症対策になる脳の刺激と睡眠

S近年、高齢化が進むとともに日本でも認知症が問題となっています。今回は、認知症の対策のために日常生活でできることを米国における研究からご紹介いたします。

 

精神的な刺激となる活動は、70歳以上の加齢による認知機能低下リスクを低減させることが明らかになりました。この試験は、メイヨークリニックアルツハイマー病研究センター(米国、ミネソタ州)において、Ronald Petersen氏らによって実施されました。メイヨークリニック加齢研究に参加した認知機能の正常な男女1,900人超を4年間にわたり追跡調査しました。研究開始時の対象者の平均年齢は77歳で、研究期間中に450人超が軽度認知障害(MCI)を発症しましたが、特定の精神的な刺激となる活動を定期的に行うと、記憶障害や思考障害のリスクが低下することが明らかになりました。具体的には以下のとおりです。

  • コンピュータ使用で30%のリスク低下
  • 手工芸で28%のリスク低下
  • 社会活動で23%のリスク低下
  • ゲームで22%のリスク低下

週1、2回以上これらの活動をすると、月2、3回以下の場合に比べて記憶力や思考力の低下が少ないことが明らかになりました。Petersen氏は、「脳に良いトレーニングには、問題を発見し、その解決のために物を動かすなど、さまざまなレベルの知的刺激が必要と思われます。ただし、これらの活動を毎日の決まった作業にしてはならず、楽しむことが重要です」とアドバイスしています。

また、別の研究では認知症を予防するためには睡眠を十分にとることも有効であることが指摘されています。加齢に伴って睡眠習慣が変化することは多いですが、一部の高齢者ではそれに伴って深く良質な睡眠をとる能力も失われることが、カリフォルニア大学バークレー校(米国)のBryce Mander氏らによって示唆されました。 Mander氏は、「高齢者に生じる睡眠の“断片化”は健康に影響し、うつ病や認知症など多くの疾患とも関連しています。睡眠が断片化されると夜中に何度も目を覚まし、深い睡眠段階がなくなってしまいます」と指摘します。同氏らによると、特定の疾患やその治療が睡眠障害を引き起こしますが、逆に、睡眠の質の低下が疾患を引き起こすこともありうるということです。

たとえば、睡眠障害と認知症の進行には「双方向」の関係があることが知られています。認知症の患者では睡眠障害が起きやすく、一方で、睡眠の質の低下は記憶力やその他の認知機能の低下を加速させます。認知症になると脳内で蓄積されるアミロイドβ蛋白は、深い眠りによって除去されるという動物研究の報告もあります。つまり、認知症と睡眠不足が互いに助長しあう「悪循環」に陥る可能性があるのです。ただし、高齢者では「早寝早起き」の傾向があり、若い頃よりも睡眠時間がわずかに短くなることも知られています。こうした睡眠習慣の変化は正常であるということです。

「健康に影響する重要な生活習慣因子として、運動や健康的な食生活だけでなく、睡眠にも気を配ることが大切です」と同氏は述べています。定期的な運動による効果の1つとして、睡眠の質の向上も期待できると指摘。深い睡眠をとる能力は中年期から低下する場合も少なくないため、若いうちからケアをするべきだとアドバイスしています。

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