アメリカでマッサージがブームになっている。街には指圧、リフレクソロジーの看板を掲げた店が点在し、ショッピングモールやジムの一角にもマッサージ・コーナーが登場するなど、だれもが気軽に利用している。メニューも指圧、スウェーデン式、タイ古式、リンパと多彩だ。アメリカでのマッサージの利用状況と人気のメニューを紹介する。
2005年の米国でのマッサージ利用者4,700万人
アメリカン・マッサージセラピー協会の調査によると、2005年のアメリカでのマッサージ利用者はおよそ4700万人にのぼり、前年を200万人上回ったという。また、医師に薦められてマッサージを利用している人が多いことも分かったという。
競争社会といわれるアメリカで、ストレス解消や疾患予防にとさまざまなマッサージがうけている。
マッサージは、約4000年前に中国で誕生したといわれている。かの医聖ヒポクラテスも、医師が学ぶべきものとして、マッサージについても言及している。
アメリカへは1850年代はじめ、ニューヨークの医師、テイラー兄弟によって近代マッサージが紹介された。
医師も認めるさまざまな効用
マッサージに関する研究報告は、1930年代までに主な医療専門誌に英語で600ほど掲載されているといわれる。
マッサージは手技療法として、身体的不具合の改善やストレス解消、各種疾患予防の有効性が期待され、ナチュラル志向の高まった1960年代にブームとなる。
その後、現代医療全盛の時代が到来すると、マッサージはその影に隠れ、医療効果の研究は次第に沈静化していく。しかしながら1980年代に入って代替医療への関心が高まったことから、ふたたびマッサージの有効性についての研究が活発になってきた。
現在では、痛みや炎症、筋肉の痙攣といった身体的症状から、不安、不眠、うつ、ストレスといった精神的症状まで、幅広い治療効果が立証されている。
マッサージの医療効果については、未熟児40人を対象にした研究で、赤ちゃんの1日の体重増加が、マッサージを受けた赤ちゃんの方が受けていない赤ちゃ んに比べ平均して47%ほど多く、入院日数も平均して6日少なかったという報告がある。マッサージで順調に育ち、入院日数が短縮されることから、赤ちゃん 1人につき約3000ドルの医療費節約になるという。
うつ病および適応障害で入院している子ども52人を対象にした研究では、マッサージを受けた子どもの症状が改善したという。また、高齢者18人を対象にした研究では、マッサージを受けた高齢者の血圧と心拍が下がったと報告している。
また、けがをして脊髄に痛みのある患者52人を対象にした研究では、マッサージを受けた患者の痛みが緩和したほか、筋肉の柔軟性が高まったという。同研究では、マッサージにより脳内で鎮痛効果のあるとされる神経伝達物質エンドルフィンの分泌が増加され、患者の痛みが緩和されたと報告している。
アメリカで人気のマッサージメニュー
マッサージとひと口にいってもその種類は実に豊富だ。そこで、アメリカで今、人気のマッサージを紹介しよう。
< スウェーデン式マッサージ >
アメリカで最もポピュラーなマッサージ。マッサージオイルを使い、頭、肩、背中と体のすみずみまで優しいタッチでマッサージする。長いストロークで筋肉の疲れをほぐし、心臓に向かって血液の流れに沿って行なうため、気血の流れをよくし、基礎代謝を高めて体内の老廃物を排出する効果もある。
< 指圧 >
日本独特のマッサージ。体のツボを指で刺激し生体機能に作用させ、自然治癒力を高める。ストレス解消や痛みの治療で人気を呼んでいる。
< タイ古式マッサージ >
指圧、整体、気功とヨガを組み合わせたマッサージ。人間のからだにある「セン」と呼ばれる生命エネルギーの通路のうち10本の最も重要なセンに沿って、指 圧やストレッチを行ない、体のエネルギーのバランスを整え、 筋肉の疲れをほぐし、心と体を活性化させる。体内の老廃物を排出し、血液やリンパの流れをよくし、筋肉の柔軟性が高まることから老化防止の効果もある。また、ヨガの呼吸法で自律神経のバランスが調節されるほか、骨盤をはじめ体のゆがみが調整さ れ、関節痛の症状緩和や内臓機能低下などの改善などの効果も報告されている。
< ワツ >
水中で行なわれる指圧ストレッチ。体温とほぼ同じ水温の専用温水プールで、セラピストに支えられ全身の力を抜いて浮きながら、体をゆすったり、ストレッチしたりのマッサージを受ける。心身のバランスを整え、リラクセーション効果がある。
< ホットストーン >
セレブの間で大人気のマッサージ。長い間熱を保つのに適しているといわれる玄武岩を50度前後に温めて、オイルを塗った体をマッサージし、50個近くの温 かい玄武岩を全身のツボにのせ、石の重さと温かみで体のコリがほぐれる他、熱で基礎代謝が高まり老廃物が排出されるなどの効果もある。
< ディープティッシュ・マッサージ >
筋肉の深い部分を親指、腕、ひじなどを使い、短いストロークでもみほぐす強めのマッサージ。アロマオイルを使いマッサージすることで、体が温まり深部組織まで刺激され、血液の循環を高め、疲れた筋肉をほぐし、心身ともにリフレッシュできる。
< リンパマッサージ >
リンパ液の流れをよくするマッサージ。リンパ液は体の中の老廃物を回収・排出する働きがある。リンパ液の流れが悪くなると、体に水分や老廃物が溜まり、脚 のむくみや頭痛などの原因に。ライトタッチのマッサージでリンパ液の流れを良くして、老廃物や余分な水分をしっかり体の外に出せば、むくみが取れるほか、 アレルギーなどの症状緩和にも効果があるという。
< リフレクソロジー >
足裏のマッサージ。足裏にはいくつものツボがあり、それぞれ身体の臓器や組織と結びついている。ツボを刺激することで、そのツボと結びついた臓器や組織の働きが活性化される他、血行を促進し、基礎代謝を高め老廃物を体の外に追い出し、自然治癒力を高めるといわれている。