インド伝承医学のアーユルヴェーダ、スパで人気メニューに

インド伝承医学のアーユルヴェーダ、スパで人気メニューに

インド伝承医学のアーユルヴェーダ、スパで人気メニューに

kaigai24 世界最古の伝承医学としてインドに伝わるアーユルヴェーダ。米国で今、スパブームからアーユルヴェーダが人気だ。トリートメントメニューにアーユルヴェーダを加えたスパが増えている。リゾート気分を味わえる贅沢なスパとインドの伝承医学のコラボレーションが広がりをみせている。

生命エネルギーのバランスを整え、身体の不調和を改善

アーユルヴェーダは、5000年以上も前からインドに伝わる世界最古の体系的な伝承医学。アメリカでは代替医療に分類され、世界保健機構(WHO)でも療法として正式に承認されている。

アーユルヴェーダは、サンスクリット語のアーユル(生命)とヴェーダ(科学)の複合語で、「生命の科学」の意。
宇宙に存在する全てのものは、「空」「風」「火」「水」「地」の5つの要素で構成され、それらが組み合わさり「ドーシャ」と呼ばれる3種類の生命エネルギー、「ヴェータ」「ピッタ」「カパ」を形成すると考えられている。

身体に不調が生じるのは、この「ドーシャ」のバランスが崩れるため。中国の伝承医学の 「陰」と「陽」の考えと同じだ。アーユルヴェーダでは、さまざまな症状がどの「ドーシャ」が原因で起きたのかを知り、食事やハーブ、オイルマッサージ、浣 腸による解毒などで「ドーシャ」のバランスを整え、不調を改善する。

アーユルヴェーダ:3つの生命エネルギー

アーユルヴェーダの基本となる3つの生命エネルギーについては下記の通り。

< ヴェータ (空と風の組み合わせ) >
最もパワフルなドーシャといわれる。体内の血液を運び、栄養を送り込み、排泄にも関わる。また神経系の伝達機能といった働きもする。このエネルギーに強く支配されている人は、太りにくい、皮膚や髪が乾燥しやすい、気分の変動がはげしい、などの特徴があり、バランスが崩れると呼吸器系疾患、精神・神経疾 患、循環器系疾患などが発症する。

< ピタ (火と水の組み合わせ) >
ホルモンと消化器系をコントロールするといわれる。このエネルギーは、温性、鋭性、流動性、軽性などの性質があり、バランスが崩れると、消化器系疾患、肝臓・胆のう・すい臓の疾患、皮膚病などになりやすい。

< カパ (水と地の組み合わせ) >
安定のエネルギーとよばれ、免疫力や体力などに影響を及ぼす。このエネルギーは、重性、冷性、油性などの性質があり、バランスが崩れると気管支疾患、糖尿病、肥満、関節炎、アレルギーなどの症状がもたらされる。

ドーシャのバランスは人によって異なり、常に一定ではなく、1日の時間帯、季節、年齢によっても微妙に変化する。3つのドーシャの割合により個人の体質が決まるといわれ、それぞれがもって生まれたドーシャのバランスを保つことで、健康が維持されると考えられている。

舌、皮膚、眼球、体重などの状態から、ドーシャのバランスをみる

では人によって異なるドーシャのバランスをどのように調べることができるのか?
アーユルヴェーダによる療法は、その人の生まれつきのドーシャのバランスと本来のバランスがどう崩れているかを知るところからスタートする。療法士は患者に食事やライフスタイルなどについてさまざまな質問をし、舌、皮膚、眼球、体重といった体の状態を調べ、さらに脈をとり診断をくだす。ドーシャによって 脈の打ち方が異なっているからだ。

脈診については、強く圧して深部、浅く圧して浅部の脈をそれぞれとる。深部の脈でその人の持って生まれたドーシャのバランスがわかり、浅部の脈で現在のバランスがわかる。この2つを比べることで、バランスの崩れがわかるといわれる。

毒素の排出から精神不安の排除まで

バランスの崩れがわかったら、どうやってそれを整えるかだ。療法の目指すゴールは、1)毒素を出す、2)症状を緩和する、3)不安を取りのぞき、心の安らぎを得る、4)精神的、肉体的な不調を改善、である。

まずは、「毒素を出す」。疾患の原因となる毒素を体内から追い出す。解毒のプロセスは「パンチャカルマ」と呼ばれ、消化器系と呼吸器系に焦点を絞り解毒を行う。具体的な療法としては、浣腸、断食、食事療法など。その他、発汗による解毒、解毒を目的とした薬用オイルを鼻から吸い込むなどの療法がある。

「症状を緩和する」には、症状によって、ヨガ、ストレッチ、呼吸法、瞑想のほか、動植鉱物からなる生薬、食事療法などが処方される。ごく少量の金や鉄といった重金属が処方されることもあるが、少量でも体に害になる恐れがあるため、処方には細心の注意が払われる。

「不安を取り除く」には、ヨガ、瞑想、エクササイズなど。「精神・肉体の不調改善」には、痛みを緩和し、疲れをとり、血行をよくするため、マッサージが行われる。アーユルヴェーダでは、人間の体には生命エネルギーを貯蔵する107ヶ所のツボがあるといわれており、薬用オイルを使いマッサージし、ドーシャのバランスを整える。

全米の高級スパの70%がアーユルヴェーダを取り入れる

そんなインド5千年の知恵がいま、スパで人気を呼んでいる。全米で極上スパの70%がアーユルヴェーダをトリートメントメニューに加えているという報告もあるほどだ。

本格的なアーユルヴェーダを体験できると話題になっているのがアイオワ州フェアフィールドにある「Rajスパ」。解毒プロセス「パンチャカルマ」をフル メニューでサービスしている数少ないスパだ。女性客が半数以上で、30歳から60歳までの層が中心。ストレス解消や更年期障害の症状緩和などで訪れる人が 多いという。

セラピストがまずゲストのドーシャ・バランスをチェック。それに合わせたトリートメントが処方される。滞在中のスケジュールは、決められた時間に食事を して、マッサージや浣腸といったアーユルヴェーダのトリートメントを1日約3時間ほど受け、軽いヨガのエクササイズをして、夕食後はアーユルヴェーダにつ いてのレクチャー。フリータイムは読書をしたり瞑想したりして、スローな時間を過ごす。

また、トップクラスの高級ホテルでアーユルヴェーダを提供しているのがマイアミにある「マンダリン オリエンタル」。アーユルヴェーダをとり入れた豊富なトリートメントメニューが人気を呼んでいる。中でも好評なのが同ホテルならではのシグネチャーメ ニュー「Ayurvedic Holistic Body Treatment」。

アーユルヴェーダのテクニックをふんだんに使い、頭のてっぺんからつま先までマッサージしてくれる。ちなみにトリートメントは110分で270ドル(6 月20日現在)。ほかにも、フットマッサージをしながらドーシャのレベルをチェック、ゲストのドーシャタイプに合わせたトリートメントを施すメニューも人気だ。

ちょっと贅沢な雰囲気のなかでホリスティックなアーユルヴェーダのトリートメントを受ける――これが今、アメリカのスパトレンドだ。

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