米国女性の平均寿命が低下、主要メディアが一斉報道

米国女性の平均寿命が低下、主要メディアが一斉報道

米国女性の平均寿命が低下、主要メディアが一斉報道

report_201208 一般的に、男性に比べ女性の方が健康への関心が高く、食生活にも注意を払っている。世界的な傾向として、女性は男性より平均寿命が長い。ところが、つい最近、米国で女性の平均寿命が下がっているという調査報告が発表され話題を呼んでいる。

米国の43%の郡で女性の平均寿命が低下

なぜか、アメリカ人女性の平均寿命が低下している–。そんな報道を米国の主要メディアが一斉に行った。

米国各州で、女性が負担額を気にせずに予防医療サービスを受けられる法が整い、予防の検査を受けている女性も少なくない。一般的に、女性は健康への関心が高く、食事や生活習慣にも注意を払いがちだ。それなのに、なぜ平均寿命が低下しているのか。

主要メディアがこぞって取り上げたのは、3月4日付の医療専門誌Health Affairsに掲載されたウィスコンシン大学の研究報告である。

3,141の全米のほとんどの郡について、10年間にわたる死亡データなどを調べ、75歳以下の女性の死亡率を算出したところ、43%の郡で女性の平均寿命が低下していることが分かった。

平均寿命が下がっている郡の多くが南部と西部の農村地帯で、人種別では貧しく恵まれない境遇にいる白人女性の寿命が短くなっていた。喫煙率や肥満率が高いことなどが原因として考えられているが、はっきりとした理由は分かっていない。

一方、男性の平均寿命は、ほぼすべての郡で横ばい、あるいは伸びている。ちなみに、アメリカ人の平均寿命は女性が81歳で、男性は76歳。まだまだ女性の方が男性より長生きだが、CDC(米国疾病対策予防センター)のデータによると、その差は年々、縮まりつつある。

米国女性たちの命を奪う3大病魔

CDCが昨年末に発表した「2012年人口動態統計」によると、年齢や人種に関係なく米国女性の命を奪う3大疾患は、トップが心臓疾患、2位ががん、3位が慢性下気道疾患となっている。

心臓疾患:1984年以降、女性の死亡率が上昇

女性の心臓疾患の予防を推進する慈善団体women’s Heart Foundationによると、米国で約800万人の女性が心臓疾患を抱えており、うち3万5000人は65歳以下といわれる。また、毎年、約43万5000人の女性が心臓発作に襲われているが、うち8万3000人が65歳以下で、平均年齢は70.4歳。毎年、心臓発作で26万7000人の女性が死亡しており、乳がん死亡者の6倍といわれている。

心臓発作を起こし、1年以内に死亡する患者は、男性24%に対し女性は42%と高く、50歳以下の場合、女性の死亡率は男性の2倍ほどになっている。心臓発作をはじめ心臓疾患といえばとかく男性の病気と思われがちだが、1984年以降、毎年、男性よりも女性の死亡率が上昇しており、女性と男性の生存率の開きはますます大きくなっている。

がん:女性は乳がん罹患がトップ

米国がん協会の「2013年がん罹患および死亡推計」によると、今年新たにがんと診断されるケースは、男性が85万4790人に対し、女性は80万5500人と推定されている。女性のがん罹患のトップは乳がんで推定23万2340人、次ぎが肺・気管支がんで推定11万110人、結腸・直腸がんが推定6万9140人と続いている。

がんによる死亡者の推定は、男性が30万6920人で、女性が27万3430人。女性のがん死のトップは肺・気管支がんで7万2220人、2位は乳がんで3万9620人、3位は結腸・直腸がんで2万4530人と推定されている。

慢性下気道疾患:女性の死亡原因の5.9%を占める

慢性下気道病変には、慢性気管支炎、肺気腫(慢性閉鎖性肺疾患)、肺繊維症などが含まれる。CDCの2009年統計によると、慢性下気道疾患で死亡した女性患者は7万2234人で、同年に病気で死亡した女性の5.9%を占めている。

医療保険改革で女性向け医療サービスが一部無料化

米国で2010年3月に患者保護・医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act、PPACA)が成立。その一環として、マンモグラフィによる乳がん検診や大腸の内視鏡検査、血圧検査など科学的に予防効果が立証されている医療検査について、患者の自己負担や免責金額なしに医療費をカバーすることが民間の医療保険会社に義務付けられるようになった。

CDCによると、米国で高齢者向け公的医療保険が適用される以前の65歳以下の女性のうち15.6%が、医療保険に加入していない。予防検診についての2010年統計では、40歳以上の女性のうち67.1%が過去2年間にマンモグラフィを受診しており、18歳以上の女性のうち73.2%が過去3年間に子宮頸がん検査を受けている。

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