米国で需要高まるアレルギー対策商品

米国で需要高まるアレルギー対策商品

米国で需要高まるアレルギー対策商品

FDAがグルテンフリーの新規制を発表 

9月 訂正スーパーマーケットや健康食品店にずらりと並ぶアレルギー関連商品。10年ほど前はまだ珍しかったグルテンフリー食品も、今では店の一角に特別コーナーが設置されるなどニーズが高まっている。米国におけるアレルギー対策商品の市況を報告する。

小麦やライ麦に含まれるグルテンでアレルギーを発症 

「セリアック病の症状悪化を防ぐには、グルテンフリーの食生活が必須だ」。FDA(米国食品医薬局)コミッショナーのマーガレット・A・ハンバーグ氏はそう指摘する。

小麦やライ麦などに含まれる蛋白質の一種、グルテン。このグルテンを含む食品を摂ると、免疫系が小腸の内膜を攻撃、内膜にある小さな突起にダメージを与え、小腸からの栄養分の吸収を阻害する。これにより、慢性の下痢、腹部の膨満感や痛み、貧血、疲労感などが生じる。

こうした症状はセリアック病と呼ばれ、アレルギー症状を伴う。セリアック病は、遺伝的要因が大きいともいわれるが、現在アメリカでの患者数は約300万人と推定されている。なにかと問題視されがちなグルテン。セリアック病ほど深刻な症状ではないにしろ、グルテンに過敏に反応するアメリカ人は2000万人を超えるとみられている。

「グルテンフリー」の新規制、含有量を20ppm未満に

そうした中、FDAは8月2日に、食品に表示されている「グルテンフリー」の定義及び新規制を発表した。新規制では「グルテンフリー」の定義を「小麦やライ麦などに含まれる蛋白質の一種であるグルテンの含有量が20ppm未満」とし、食品業界に表示の実施までの準備期間として1年間の猶予を与えた。

また、FDAは「ノーグルテン」「フリー・オブ・グルテン」「ウィズアウト・グルテン」といった類似の表示についても新規制を設け、消費者のためにも出来るだけ早い対応を食品業界に呼びかけた。

前述のマーガレット・A・ハンバーグ氏は、「FDAが今回、グルテンフリーの定義を確立したことで、グルテンにアレルギー反応を示す消費者が安心して商品を選べ、健康管理がしやすくなる」と語っている。

グルテンフリー市場は42億ドル 

ところで「フリー」といいながら、なぜ0ppmではなく20ppm未満なのか?理由は、単に20ppm以下を確認できる技術が存在しないためである。また、20ppm未満であれば、グルテンにアレルギー反応を示すセリアック病患者が摂取しても安全と考えられているためだ。

FDAはこれまでも商品のグルテン含有量が20ppm以下であれば「グルテンフリー」の表示を認めていた。しかしこれはあくまでも任意で、食品メーカーの判断に委ねていた。FDAによると、現状では流通している商品の大半が、今回確立された基準をすでに満たしているという。

ホールフーズ・マガジンによると、アメリカでのグルテンフリー商品の2012年の売り上げは42億ドルで、2017年には60億ドルに達するものと推定されている。パンやクッキーをグルテンフリーにするとどうしても味が落ち、食感もパサパサしがちだが、市場規模が急激に伸びる中、さらにおいしく、食感の良い商品の開発に加え、グルテンアレルギーに関する豊富な情報の提供が求められている。

アメリカ人の5人に1人がアレルギー 

グルテンフリーはアレルギー対策の一環だが、米国喘息・アレルギー協会によると、アメリカ人の5人に1人がアレルギー持ちだという。アレルギーは慢性疾患の中で5番目に罹患率の高い疾患だが、18歳以下となると3番目でさらに高い。罹患率は1980年代から年齢、性別、人種に関係なく上昇している。アレルギー別の罹患率では、花粉やほこり、カビなどへの過剰反応が大半で、それ以外では、アレルゲンに接触した際の皮膚炎の発症が全体の約7%、食品および薬によるアレルギーがそれぞれ全体の約6%を占めている。

ちなみに、食品アレルギーの8大アレルゲンは、牛乳、大豆、卵、小麦、ピーナッツ、木の実、魚、貝類で、フードアレルギーの原因の90%を占めている。また、ペニシリン投薬によるアレルギー反応で毎年約400人が死亡しているほか、食品アレルギーでは約200人が死亡している。

アレルギーの解決策に、代替療法を求める人々が増えている 

米国でのアレルギーによる年間医療費は123億ドルといわれる。内訳をみると診療費が13億ドル、処方箋薬が70億ドル、市販薬が40億ドルとなっている。また、アレルギーを発症し、死亡または会社や学校を休むなどで経済に与える年間の損失は約22億ドルにのぼるといわれている。

市場調査会社グローバル・インダストリー・アナリスト(GIA)によると、アレルギー薬の市場規模は2015年までに147億ドルに膨れあがるとみられている。即効性のある抗ヒスタミン薬といった医薬品が売れ筋だが、ここ数年、医薬品の副作用を懸念してかハーブやホメオパシーといった代替療法にアレルギーの解決策を求める人々が増えているという。

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