オバマケア、米国皆保険の登録手続きでアクセス殺到

オバマケア、米国皆保険の登録手続きでアクセス殺到

オバマケア、米国皆保険の登録手続きでアクセス殺到

WHR 20131110月17日、米国与野党の対立で2週間以上続いていた政府機関の一部閉鎖が解除された。デフォルト(債務不履行)が土壇場で回避されたが、今後の予算計上で大きな火種となっているのが、「医療保険制度改革法(Affordable Care Act)」、いわゆるオバマケアである。10月1日に50州で保険の登録が開始され、好調なスタートを切ったオバマケアの現状を報告する。

高額な医療費請求、自己破産者が相次ぐなど社会問題化 

2010年3月、米国議会で日本の国民健康保険のような皆保険を目指す制度、「医療保険制度改革法」が成立した。米国は医薬品が他の先進国に比べ3割ほど高いといわれている。これまで高額な医療費を請求され、自己破産者が相次ぐなど社会問題化していた。米国勢調査局の統計によると、2012年の米国における医療保険の未加入者は約4800万人(全人口の15.7%)であった。ちなみに、2011年は4860万人(全人口の15.4%)。こうした無保険者を中心に、多くの国民が関心を抱いたのが西洋医療以外の医療、代替医療であった。その傾倒は、すでに1990年代より顕著になっていた。

米国で人気の代替医療というと、祈りの療法、栄養療法、ハーブ(薬草)療法、カイロプラクティック、鍼灸、漢方、バイオフィードバック、心理療法、催眠療法などである。1993年にハーバード大学のアイゼンベルグ教授らが調査したところ、1990年の代替医療の利用者は34%で、1997年には42%に増えることが予測された。つまり、米国では国民の3人に1人が何らかの代替医療を利用していることが分かった。

90年代、予防意識に目覚める米国民 

こうした米国民の代替医療への傾倒を米政府も見過ごせず、本格的にその立証に乗り出す。1992年には米国立衛生研究所(NIH)に、後の米国立補完代替医療センター(NCCAM)となる代替医療調査室(OAM)を設置、1999年には5,000万ドルの研究予算を計上した。

政府の取り組みには、年々膨れ上がる医療費を代替医療でカバーしたいという思惑もあった。中でも、サプリメントやハーブによる栄養療法は手軽で安価なため、1994年、当時のクリントン政権は、健康補助食品教育法(DSHEA法)を施行。販売規制の緩和を行い、市場拡大の後押しをした。DSHEAの恩恵を受け、その後サプリメント市場は2桁台の成長路線を辿った。90年代、高い治療費に辟易していた国民は予防意識に目覚めるが、その背景には無保険や高額な治療費で満足に医療が受けられないという事情があった。

「医療保険制度改革法」と「オバマケア」は別物と勘違い 

「医療保険制度改革法」は、オバマ大統領が内政の重要課題として公約に掲げたことから「オバマケア」と名付けられた。オバマケアは医療保険制度改革法の通称だが、打倒オバマに全力を注ぐ超保守派のティーパーティーを中心とする共和党が「オバマケアは政府の無駄遣いの象徴」、「オバマは社会主義者で、オバマケアは医療社会制度」とバッシングし、オバマケアが広く喧伝されたため、国民は「医療保険制度改革法」を「オバマケア」とはまるで別物と思い込んでしまったようだ。

つい最近も、有権者1000人を対象とした公共政策世論調査で、「オバマケアと医療保険制度改革法のどちらがいいと思いますか?」と質問したところ、14%が「オバマケア」、13%が「医療保険制度改革法」と回答し、同じ物であることを知っていたのは62%だったという。AP通信とNPR(ナショナルパブリック・ラジオ)はこれに責任を感じたのか、先日「オバマケア」という表現を控えると報じている。

2014年1月1日より保険適用、700万人が保険に加入 

そうした中、いわゆるオバマケアの主要政策である保険への登録手続きが、10月1日に50州で始まった。消費者はオンラインで医療保険の購入ができるほか、保険プランの月額料金や控除項目などの詳細の比較が可能となった。また、中間・低所得消費者には、保険購入で所得に応じた補助金が給付されることとなった。政府の10月2日付けの発表では、登録手続き開始後24時間で、470万人が手続き用のウェブサイトを訪れたという。予想をはるかに超えるアクセス数で、エラーなど技術的な問題が生じたために登録できない人が多く、政府はウェブサイトの修復に懸命に取り組んでいる最中だという。現在、一部の州で登録者数を発表しており、ケンタッキー州では10月9日現在1万8351人、ニューヨーク州では10月9日現在4万人、カリフォルニア州では10月8日現在1万6300人が登録済となっている。こうした一部の発表された登録者数からだけでも、これまでいかに米国民が高額の治療費や高い医療保険代に苦しめられてきたかがうかがえる。

保険は2014年1月1日から適用され、2014年中には700万人が加入するものとみられている。はたしてオバマケアは国民の救世主となり得るか。今後のなりゆきが注目される。

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