米国で寿司ブーム、和食がヘルシーフードの定番に

米国で寿司ブーム、和食がヘルシーフードの定番に

米国で寿司ブーム、和食がヘルシーフードの定番に

report_201202 アメリカですっかりヘルシーフードとして定着した日本の寿司。アメリカ人が寿司を箸で上手に口に運ぶ光景は、もう珍しくなくなった。米国で浸透しつつある和食という文化。前回の、大豆、穀物に続き、魚や緑茶といった日本人に馴染み深い食の広がりについて報告する。

空前の寿司人気、一方で魚介類の消費量が減少

先日、運転しながらラジオを聴いていた。すると、「週末に寿司屋に行き、緑茶を飲んで枝豆をつまみながら、メニューから寿司を選ぶ時が、最高にハッピーな気分」と、DJが話していた。とにかく寿司好きのアメリカ人が実に多い。

アジア・パシフィック・ジャーナルの2012年寿司統計によると、日本国外に推定16,000軒の寿司屋があり、うち3,846軒がアメリカで営業しているという。
アメリカの寿司業界の年間の市場は20億ドルで、2000年から2005年までに寿司の消費量は40%もアップしている。

寿司に緑茶。日本人には馴染み深い食材だが、アメリカ人がいつからこうした和食へと傾倒し始めたか。そのきっかけは、やはり「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」であろう。この中で、全粒穀物はアメリカ人の肥満や高血圧、動脈硬化など生活習慣病を防ぐと、初めてその健康効果を明示し、穀物摂取の有用性をアピールした。

また、魚の摂食についても魚油に含まれるオメガ3系脂肪酸は、鬱やアルツハイマー、動脈硬化、心臓病などを予防するとし、1週間に8オンスの魚の摂食をガイドラインで薦めた。もちろん、心臓病対策に懸命なFDA(米食品医薬品局)も魚の摂食は心臓病予防に有用であると認めている。

脂ぎった肉より、穀物に魚、寿司といった食はまさにアメリカ人の目にヘルシーフードの理想形のように映るのだろう。

ただ、そんな寿司ブームに反して魚介類の消費量はというと、近年減少傾向にある。National Oceanic and Atmospheric Administration(NOAA)の統計によると、2011年のアメリカ人1人あたりの魚介類の消費量は15ポンドで、前年の15.8ポンドから減少。1人あたりの魚介類の年間消費量は2004年の16.6ポンドをピークに下り坂だ。その一因として、魚介類に含まれる水銀やPCB汚染の問題が指摘されている。

ちなみに、アメリカの消費者が2011年に魚介類に費やした金額は総額で834万ドル。2011年にアメリカで消費された魚介類の約91%は輸入もので、前年を5%上回った。とはいえ、輸入ものの一部はアメリカの漁師により捕獲され米国外で処理された後、アメリカに再輸入されたもので、そのほぼ半分は養殖といわれている。

魚の摂食、脳の老化防止に関与

水銀やPCBの問題が指摘されているとはいえ、一方で、魚の健康効果も相次いで報告されている。神経学誌の2012年に掲載されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究報告によると、脂肪分の多い魚を多く摂取している人はそうでない人に比べ脳の老化が遅いという。

平均年齢67歳の高齢者1,575人を対象に、脳のMRI検査と行動・能力・知能などを調べる一連のテストを行ったところ、赤血球中のオメガ3系脂肪酸が低い人は、老化促進の兆候がみられるほか、脳容積も低いことが分かったという。

また、魚摂取は卒中リスク低下に有用であると、European Journal of Clinical Nutrition誌12.10月号で報じている。University of North Carolina研究者グループが、総計402,127人の被験者を含む16研究のデータを分析。フォローアップ期間は平均12.8年。その結果、1週間に魚を5人分以上摂取した場合、全タイプの脳卒中リスクが13%低下したことが分かったという。とくに虚血性卒中の場合、同じ量の摂取で17%低下したという。

緑茶の研究も米国で盛んだが、その健康影響についての最近の研究報告を挙げておこう。
緑茶摂取は消化器官がん予防に役立つと、American Journal of Clinical Nutrition誌12.11月号で報じている。Vanderbilt University Medical Center研究者グループが、Shanghai Women’s Health Studyのデータを用いて、お茶の有効性を調べた。

平均11年間の追跡研究により、定期的に緑茶を飲む群では、全消化器官がんのリスクが17%低下していることが分かった。とくに、1日2~3杯(月に最低150gの緑茶)摂取する群では全く飲まない群と比較して、リスクが21%減少していたという。

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