医療費高騰で苦しむ米国、代替医療に注力

医療費高騰で苦しむ米国、代替医療に注力

医療費高騰で苦しむ米国、代替医療に注力

whr5米国立衛生研究所(NIH)がこのほどロゴを一新した。傘下の米国立補完代替医療センター(NCCAM)など27の研究機関も同一のロゴとなる。既存医療と代替医療の統合化など、医療費削減へ向けた米政府の取り組みが注目される。

代替医療研究、2014年度予算はおよそ1億3000万ドル

米政府の尽きない悩みの種、それが年々増え続ける医療費の高騰。その解決の糸口として期待されているのが代替医療の活用である。
漢方にアーユルヴェーダ、カイロプラクティクスに栄養療法、アロマに心理療法といったさまざまな代替医療と既存医療とのコラボレーションによる医療費削減へ向けた医療体系の構築の模索が続いている。
代替医療の研究に投じる米政府の予算も増す一方だ。米国立衛生研究所(NIH)の傘下にあって、代替医療の有効性の検証を行う米国立補完代替医療センター(NCCAM)に割り当てられた2014年度大統領予算案は1億2904万1000ドル。

NIH、傘下機関のロゴ統一で連携を密に

NCCAM(本部:メリーランド州べセスダ)は1991年に、代替医療調査センター(0AM)という名称でスタートした。この時点での予算は200万ドルほど。1998年、補完代替医療の科学的調査、研究者の育成、信頼できる情報の提供を目的に、NCCAMに呼称変更され組織が強化されて以降、予算も増え続けていった。ちなみに、2012年は1億2782万ドル、2013年が1億2868万8000ドル。
今回、とくに米政府の医療体系の再構築への真摯な姿勢がみられるのが、NIHと系列機関のロゴの一新である。これまでNIH傘下の27の研究所やセンターではそれぞれ独自のロゴを使用していた。それが、今回NIHの新ロゴと同じものに統一、これには、母体であるNIHと系列機関とのコミュニケーションを強化し、連携を密にしていくという思いが込められている。

アメリカ人の約40%が健康管理に代替医療を利用

現在、アメリカ人の約40%が健康管理に何らかの代替医療を利用している。アメリカ人が代替医療に費やす総額は年間340億ドルにものぼる。ただ、全ての代替医療が安全性や効果の面で科学的に十分立証されているというわけではない。そのため、医師が患者に代替医療を勧めるということがまだ少ないのが実情だ。NCCAMはそのギャップを埋めるために科学的エビデンスの集積に努めている。

NCCAMでは、代替医療の普及・啓発のために、以下の目標を掲げている。
1) 代替医療の利用現状に対する理解を深める。
2) 代替医療について科学的エビデンスに立証された事実に基づく情報を広める。
3) ナチュラル・プロダクトの研究を推進する。
4) 瞑想や音楽療法など心身療法に関する研究を推進する。
5) 綿密な研究を実施するための研究能力を向上させる。

<h4慢性的な痛みを緩和する代替医療の模索

近年、とくにNCCAMが代替医療で取り組んでいるテーマを幾つか取り上げてみよう。
アメリカで慢性の痛みを抱える患者は約1億人、年間の医療費と生産性の損失額は少なくとも6350億ドルにのぼるといわれている。医薬品は効果が一時的なものにすぎない。そのため、NCCAMでは、代替医療の活用を最優先課題に掲げている。
具体的に、この1年間で鍼療法や脊髄の整体による痛み緩和効果や急性頸部痛には薬より運動のほうが効果があることを科学的に立証する、さらに来年は、既存医療の効果は代替医療との併用で向上するかどうか、生物学的メカニズムの解明に研究資金や支援を投じていく方針だ。
米国防総省および退役軍人管理局などの協力を得て、現役・退役軍人を対象に代替医療による痛み緩和の研究に力を入れるとしている。
食品の機能性については、オメガ3系脂肪酸やビタミンEの抗炎症作用、クルクミンの働きなどに関する研究を推進してきたが、今後もこれらの研究を継続し、効果や有害性について調べるとしている。
また、サプリメント市場の拡大に伴い、サプリメントと医薬品との併用による問題も浮上しているが、これについても調査し、科学的に裏打ちされた情報を提供するとしている。

TOP