米国成人の半分が慢性疾患、望まれる食事改善

米国成人の半分が慢性疾患、望まれる食事改善

米国成人の半分が慢性疾患、望まれる食事改善

2015年4月アメリカ人の食生活の指針となるアメリカ農務省の「2015年版アメリカ人のための栄養ガイドライン」が今年末に発表される。それに先立ち、栄養ガイドライン諮問委員会が、2015年版の要点などを明らかにした。諮問委員会の公表で浮き彫りになったアメリカ国民の食事内容の現状を報告する。

 

現状は、理想にほど遠い 

今回、諮問委員会が公表したのは「2015年栄養ガイドライン諮問委員会の科学報告書」。諮問委員会は保健社会福祉省と農務省とで組織、食生活の現状分析と栄養素の新たな科学的エビデンスを基に2015年版ガイドラインを作成している。その過程で明らかになったことなどが、今回の500ページ以上にわたる報告書で示された。

それによると、アメリカ人の食生活は理想にはほど遠いことが明らかになった。全体的に野菜や果物、全穀物の摂取量は低く、砂糖、塩、飽和脂肪、精製された穀物の摂取量が相変わらず高い。栄養素ではビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンC、葉酸、カルシウム、マグネシウム、カリウム、食物繊維が不足している。なかでも、カルシウム、ビタミンD、食物繊維、カリウムは欠乏すると健康に悪影響を及ぼすことが科学的に立証されていることから、諮問委員会は健康上の問題として重視する必要があると指摘している。また、未成年と閉経前の女性の鉄分が不足していることも報告された。

また、健康の観点から望ましくない食品として、塩分と飽和脂肪が多く含まれるハンバーガー、タコス、ピザなどを挙げている。こうした一方で、将来を担う子どもたちの食生活は改善の傾向にあることを示している。2歳から5歳までの子どもたちは、果物と乳製品で推奨されている分量をしっかり摂っていることが明らかになった。このように幼少期に身に付けた健康的な食習慣をその後もどのように維持するかが、今後の重要な課題だと考えられている。

不健康な食生活のつけで成人人口の半分が慢性疾患 

報告書は、長年の不健康な食生活が慢性疾患を蔓延させていることも指摘している。運動不足も加わり、アメリカの成人人口の半分にあたる約1億1700万人が、心臓血管疾患、高血圧症、2型糖尿病、がんといった慢性病を患っていると言われている。

また、成人人口の3分の2以上、未成年の3分の1近くが太りすぎか肥満で、この20年以上慢性病の発症リスクは高まる一方で、特に低所得層にその傾向が強い。残念なことに現状は治療に焦点が置かれ、食事による予防は二の次になっている。その結果、医療費は膨れ上がり、不健康な人が増え、国民の生活の質や生産性が低下するという負のスパイラルに陥っている。不健康な食生活は、慢性病だけでなく骨の健康にも害を及ぼし、神経心理学的異常および先天性疾患の重大な要因となっている。

地中海ダイエットを推奨 

諮問委員会が提唱しているのが、ハンバーガーやピザを控え、代わりに野菜や果物をたくさん食べること。諮問委員会のお墨付きの食事法というと、例えば地中海ダイエット。地中海ダイエットは低脂肪ではないが、オリーブオイルや木の実をふんだんに使っていることから不飽和脂肪酸が豊富で、赤身や加工の肉、バターを使わず、野菜や鶏肉、魚をたくさん摂るのが特徴である。不飽和脂肪酸は体内で善玉コレステロールとなり、血中のコレステロール値を下げる。2013年にNew England Journal of Medicineに掲載された臨床試験結果では、地中海ダイエットは、米国心臓協会の推奨する低脂肪ダイエットより心臓疾患の発症リスクがさらに30%も低いと報告されている。

2015年版で摂取制限リストからはずされる食品も 

2015年版では、これまで摂取量で制限が設けられていたコレステロールとコーヒーが控え目リストから取り除かれるようだ。

コレステロールの摂取量は2010年版では1日に300ミリグラム(たまご約1個半)と制限されていた。ところが、食べ物に含まれるコレステロールの摂取量と血中のコレステロール値に明らかな関連性はなく、コレステロール値を上げているのは飽和脂肪であることが判っている。また、これまで1日にコーヒーを3杯から5杯飲むと健康に悪影響があると言われていたが、長期にわたる摂取も健康への害がないうえ、むしろ2型糖尿病と心臓疾患の発症リスクを下げる働きも判っていることから、諮問委員会はコレステロールとコーヒーの摂取制限を取り除くようアドバイスしている。

このように様々な新しい情報が発表されることへの期待から、今年末に発表予定の2015年版栄養ガイドラインに大きな関心が寄せられている。

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