アメリカで食物アレルギー患者が増えている。しかしながら増加の原因は分からず、完治の治療法も確立されていないのが実状だ。アメリカにおける食物アレルギーの現況、アレルゲン表示の義務化と問題点について報告する。
アメリカで約1500万人が食物アレルギー
アレルゲンを含んだ食品を知らずに食べてアナフィラキシー(全身性のアレルギー反応)を起こすと、死に至る恐れもある。今のところ、アレルギー反応を防ぐにはアレルゲンとなる食物を避けることしか方法がないため、食品のアレルゲン表示は重要なものとなっている。
アメリカでは近年、食物アレルギーの患者が増え続けている。非営利団体Food Allergy Research & Education (FARE)によると、現在アメリカでは約1500万人が食物アレルギーを患っている。そのうち約600万人が18歳以下で、子供の食物アレルギー患者は増加傾向にある。
ヨーロッパでも増加傾向、10年間で7倍
食物アレルギーはヨーロッパでも増加傾向にあり、重度のアレルギー反応で病院に運ばれる子供の数は、10年間で7倍に増えている。
2006年に施行されたFALCPA
このような状況を受け、アメリカではアレルゲンを含んだ食品に表示を義務付ける「食物アレルゲン表示および消費者保護法(FALCPA)」が2004年に成立、2006年に施行された。同法は食品医薬品局(FDA)の管轄にある食品が対象で、牛乳、卵、魚、甲殻類、木の実、小麦、ピーナッツ、大豆の8つの主要アレルゲン(食物アレルギーの90%を占める)のいずれかを含んだ食品にアレルゲンの明確な表示を義務付けた。
ただし、甲殻類でもカキ、ハマグリやアサリなどの二枚貝、ホタテ貝は主要アレルゲンではないことから、表示義務の対象から外されている。また、食肉や卵製品など農務省の管轄にある食品、アルコール、タバコ等の税・貿易管理局(ATTB)の管轄にある商品、外食、店内などその場で包装された食べ物は表示義務の対象外となっている。
FDAは今年6月、食品メーカーに対して食品アレルギー表示免除のガイダンスを公表した。それによると、食品メーカーは商品販売に先立ち、製造過程でアレルギーを引き起こすタンパク質を取り除いた、あるいは人の健康に害をもたらす危険のない微量のアレルゲンしか含んでいないことを立証した科学的エビデンスをFDAに提出して認められれば、商品へのアレルゲン表示を免除されることになった。
望まれるラベル規制強化
しかし先頃、スーパーマーケットのベーカリーで購入したクッキーを食べて、11歳の少年がアナフィラキシーを起こして亡くなるという事件が発生した。患者にとってアレルギー発症を避けるためにアレルゲン表示は非常に重要であるが、先に述べたように表示義務の対象が限られているのが現状である。
先月、民主党の上院議員らがオバマ政権に対し、食品にアレルゲンとして「ゴマ」の表示義務を加えるよう要請した。米国でゴマのアレルギー患者は数十万人といわれ増加傾向にあり、ピーナッツや甲殻類と同じように重度のアレルギー反応を起こすリスクがあると主張している。
これらの問題点を踏まえ、アメリカでは食品のアレルギー表示義務の強化が求められており、今後の動きが注目される。