アメリカで「腸の健康」市場が伸張

アメリカで「腸の健康」市場が伸張

アメリカで「腸の健康」市場が伸張

2015年7月アメリカで「腸の健康」が注目されている。健康な腸は栄養素の吸収だけでなく、免疫力を高めるなど幅広い役割を果たす。アメリカだけでなく、世界的に腸の健康についての研究が進められている。アメリカにおける「腸の健康」市場を報告する。

 

過敏性腸症候群、米国で総人口の約30%が発症 

腸の病気としてよく知られるのが過敏性腸症候群(IBS)で、アメリカでは総人口の約30%が発症しているといわれている。International Foundation for Functional Gastrointestinal Disordersによると、発症しても症状が軽いケースが多いため、発症に気付かない人も少なくない。それでもアメリカでは毎年240万人から350万人がIBSで通院しており、胃腸科専門医が診断する病気の中では最も多い疾患といわれている。罹患率の男女比では、女性のほうが高い。

そこで、腸内に棲む微生物の研究が急速に進められている。2013年12月には、5年間にわたる世界的な規模での腸の研究「My New Gut」がスタートした。今年1月現在で、15カ国、30団体の研究者が協力して、腸内微生物叢の解明を進めている。研究には脳、免疫学、微生物学、栄養学、生理学、メタゲノミクス、代謝学などの幅広い分野の専門家が参加している。

アメリカでは約20人に1人が大腸がん 

人の腸には約100兆個の微生物が棲み、健康に大きな影響を与えていると言われている。近年、これらの腸内細菌が、免疫機能の調整や炎症の抑制、さらにストレスやうつ病などのメンタル面にも影響を与えていることが科学的に立証されつつある。アメリカ人の食生活は肉食過多の傾向があり、腸内における腐敗菌の発生や、腸内細菌叢のバランスの乱れ、大腸がんなどさまざまな腸の疾患を引き起こしがちであることが指摘されている。

早期発見および医療の進歩によって、アメリカにおける過去20年間の大腸がんによる死亡率は低下していると言われているが、アメリカ人の20人に1人は大腸がんと診断されており、大腸がんは依然としてがんによる死因の第2位である。

クローン病や潰瘍性大腸炎も増加 

また、米国クローン病・大腸炎協会(CCFA)によると、アメリカでは約160万人がクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)を患っており、毎年約7万人が新たにIBDと診断されている。これに伴い、これらの疾患に対する医療費も増加傾向にある。

消化器系の機能性素材市場、年間成長率は13.2% 

アメリカでは、このような大腸に関わる疾患の増加を背景に、関連する治療薬や機能性食品素材の需要が年々高まっている。市場調査会社の統計は、消化器系疾患に対する治療薬、機能性食品素材の売り上げは増加傾向にあることを示している。機能性食品素材では、プレバイオティクス、プロバイオティクス、エンザイムが市場をほぼ独占している。中でも、プレバイオティクスとプロバイオティクスは売上が急増しており、特に近年はプレバイオティクスの売上が好調である。一方でエンザイムの成長率はやや鈍っている。

今、アメリカの消費者の間では、消化器系の健康が最大の関心事のひとつとなっている。今後も世界的な規模での研究に裏付けられたエビデンスとの相乗効果で、腸の健康市場のさらなる拡大が予想される。

 

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