ドクターからの健康アドバイス

掲載8  「血が流れない」中編

前回の記事では、「血が流れない」状態とその原因について紹介しました。

今回は、血の流れを良くするのに役立つ運動を紹介していきます。運動というと、苦手とか、おっくうだとか、継続するのが難しいとか言いたくなるかもしれませんね。ですが、どうかご安心ください。今回、紹介する運動は皆さんが生きている限り、毎日欠かさずに行っていることをチョット工夫するだけで良いものなのです。

それは、呼吸です。実は、息を吐いたときに優位になる副交感神経が、血管の弛緩を促す働きがあるからです。つまり、血管を収縮させる交感神経とは逆の働きをするということですね。血管が適度に緩めば、血の流れは良くなるのが想像できるでしょう。だとしたら、この呼吸を活かさない手はありません。

血の流れを良くするための呼吸法のコツは、「仰向けになって腹式呼吸」をすることです。仰向けになって行えば、重力の影響を受けづらくなくなりますので、頭のてっぺんから足の先まで血が流れやすくなります。また、仰向けになった状態で口から息を吐いて、鼻から息を吸えば、老若男女誰でも腹式呼吸になります。肩を上げて呼吸をする胸式呼吸よりも、腹式呼吸のほうが深く呼吸できる分、副交感神経を優位にしやすいのです。息を吸う長さに対し、息を吐く長さを2倍にするのが副交感神経を優位にしやすくするコツでしょう。なお、息を吐く時に、お腹が背中にくっつくイメージまでへこませるのが大切です。

ちなみに、「仰向けになって腹式呼吸」を行うのに適しているのは、就寝前でしょう。これには、ふたつの理由があります。ひとつは、就寝前に取る行動として、寝床で身体を横たえるでしょうから、仰向けの姿勢になりやすいですよね。もうひとつは、就寝そのものも息を吐いた時と同様、副交感神経を優位にしますので、相乗効果が期待できるわけです。

就寝前に「仰向けになって腹式呼吸」を行うメリットは、ただ単に血の流れを良くするためだけではありません。身体にリラックス状態をもたらす副交感神経を優位にしやすくなる分、睡眠の助けにもなるようです。現に、就寝前に「仰向けになって腹式呼吸」に取り組んでいただいた方の中で、睡眠導入剤を手放すことに成功した実例があります。このような呼吸法を実行すればするほど、眠れるようになる可能性が増しますので、腹式呼吸の回数は決めずに取り組み、眠くなったらそのまま眠ってしまいましょう。

【参考文献:血流がすべて解決する/堀江昭佳・著】

ドクタープロフィール

野口基礎医療クリニック 院長
内科医・産業医
野口 勇人 (のぐち はやと)

経歴

  • 2003年に日本大学医学部を卒業。
  • 研修医時代にオーストラリアの薬物リハビリテーション施設へ留学。
  • そこで病の真の原因と免疫、栄養の大切さを学ぶ。
  • 帰国後、首都圏内の民間病院・クリニックで総合的かつ根本的なケアに関する医療に従事する傍ら、予防医学やセルフ・ケアをテーマとした各種講演活動および動画出演、特別養護老人ホームの産業医活動、被災地ボランティア活動等を展開している。
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