掲載10 アマニとα- リノレン酸
アマニとは中央アジア原産の亜麻の種子である。アマニは日本ではなじみの薄い食材であるが、欧州では古くから食されている食材である。アマニは炒った状態で市販されており、サラダや料理にふりかけて食したり、シリアルやパン、マフィンに入れて食したりと、日本食におけるゴマのような用途で食されている。アマニの一般分析では、およそ脂肪が40%、たんぱく質が20%、食物繊維が28%、水分が7.7%、その他に灰分が含まれると報告されている。アマニの全脂質のうちの53~57%がオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸であるという大きな特徴があり、また他の穀類と比較してリグナン含量が多いという特徴もある。アマニにはリグナンや必須脂肪酸であるα-リノレン酸の含有量が多いことから、アマニの抗酸化作用や血清脂質および心血管保護作用が報告されている。
このアマニ油の他、エゴマ油、シソ油などにオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸が多く含まれており、最近では魚臭の無いオメガ3油として用途が広がってきた。 α-リノレン酸はヒトの体内においてEPAやDHAに変換され、それぞれこれまで本シリーズで述べてきた重要な役割を果たすものの、摂取したα-リノレン酸からは10%程度しか変換されないと言われている。
α-リノレン酸にはアレルギーを抑制する効果が知られている。各種アレルギー症状の原因のひとつに、オメガ6系脂肪酸であるリノール酸の過剰摂取がありますが、α-リノレン酸はリノール酸対して競合的に働く性質があるため、リノール酸を原因とするアレルギー症状を緩和できるというしくみです。その他、がん細胞の増殖抑制、血圧の低下、血液改善などの報告もあります。
もうひとつ興味深いデータとして、2011年にアメリカ・ハーバード大学で発表された10年間、のべ50,000人以上の女性を対象とした疫学調査において、α-リノレン酸を豊富に摂取し、同時にリノール酸を控えることで、うつ病の発生が減少したという結果もある。これは、あくまでα-リノレン酸を摂取した場合であり、魚油由来のEPAやDHAの摂取はではなかったものの、EPAやDHAへの生体内変換によるものである事が予測できます。
しかしながら上述のように、α-リノレン酸には体内でEPAやDHAに変換される働きに加え、独自の効果を発揮させるという性質も併せ持っている。