ドクターからの健康アドバイス

掲載 9  リン脂質結合型オメガ3「クリルオイル」の機能性

クリルオイルは、オメガ3脂肪酸の新たな機能性食品素材として、近年、欧米を中心に心疾患リスク低減やジョイントヘルス(関節対策)を目的としたサプリメント利用が進んでいます。

これまで知られているクリルオイルの臨床試験報告を含めて健康効果を概説します。

①脳の老化防止

クリルオイルを摂取した人は脳の血流が大幅に増加し、脳が活発に動いていることが明らかになりました。また、クリルオイルを摂取した人は、クレペリンテスト(計算課題)中の脳波の脳波(P300)が出てくる時間が早くなりました。一般に加齢と共に脳の情報処理は遅くなりますが、P300が出てくるのが早くなった時間を年齢に換算しますと、クリルオイル摂取により20歳も脳機能が若返ったことになります。このようにクリルオイルは頭の回転の速さや脳の若返りに貢献することが示唆されました。

② 高脂血症の改善

クリルオイルと魚油をそれぞれ1日3g摂取した人を比較すると、魚油は善玉のHDLコレステロールが4%しか上昇していないのに対し、クリルオイルは59%も上昇しています。悪玉LDLコレステロールにつきましても、魚油は4%しか下がらないのに対し、クリルオイルは39%も下がりました。DHAやEPAは中性脂肪を低下することが知られていますが、その機能がより高く発現するものと考えられます。

③ 肝機能の改善

ラットを16時間絶食させたあと4つの群に分けて血中アルコール濃度を調べた結果、アルコールを12ml/kg投与しても、クリルオイルを沢山投与されたラットは血液中のASTの値が低く肝障害が抑制されたことは明らかとなりました。肝臓の解毒機能が向上したことを示します。

④ 生殖機能の向上

クリルオイルを投与したラットは、無投与のラットと比較してマウンティングの回数が大幅に増えていることが報告されています。精子の運動量も高くなっていました。

⑤ 心筋梗塞の予防

肥満のラットにクリルオイルを投与したところ、そのラットの心臓に含まれる脂肪の量が43%も減少しました。また、左心室肥大や心臓組織の変性も抑制され、心筋梗塞の予防につながる可能性が示唆されました。

⑥ 関節症にも有効

関節リウマチや変形性関節症による痛みに対しても、クリルオイルの摂取により1カ月で痛みが改善されたとの報告もあります。

 

ドクタープロフィール

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構
規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 研究院教授
矢澤 一良 (やざわ かずなが)

経歴

  • 京都大学卒業、農学博士(東京大学)。
  • (株)ヤクルト本社・中央研究所、(財)相模中央化学研究所にて勤務後、2000年に湘南予防医学研究所設立(主宰)。
  • その後、東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院)客員教授 、東京海洋大学特任教授を経て、現在、早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部 研究院教授。
  • DHA/EPAに関する研究の功績に対する評価により、日本脂質栄養学会より学会賞「ランズ産業技術賞」、マリンバイオテクノロジー学会より学会賞「岡見賞」を授与される。

<主な著書(全著書120冊以上)等>
「マリンビタミン健康法」:現代書林 (1999)、
「ヘルスフード科学講座」:食品化学新聞社(2007)、
「アスタキサンチンの科学」:成山堂(2009)、
「マリンビタミンで奇跡の若返り」:PHP研究所 (2010)、
「機能性おやつ」:扶桑社(2012)など、その他論文・特許出願多数。

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