掲載 1 序論~魚食の疫学研究~
わが国は総人口減少と同時に、すでに2007年には超高齢社会(65歳以上の老人人口が総人口の21%を超える)に突入した。また2006年には肉食が魚食を超えており、2000年に比較して2010年では全ての年代において魚食が減り肉食が増加していた。このような超高齢社会と食事の欧米化の進展が、殆どの生活習慣病の増加をもたらした一因である。さらに平均寿命に対して健康寿命はおよそ10年ほど短く、この事が医療費増大をもたらしている。重要なことは、悪くなった病気を治す「治療医学」よりも、病気になる時期を遅らせる「予防医学」であり、天寿をまっとうするまで健康でいることである。
一方現実的な実生活においては、バランスの悪い食生活やストレスフルな社会環境の中でいかに健康に生きていくかということは、極めて重要であり知恵を要する。その実践には、三次機能を有する「機能性食品」を利用する事が必要であると考えられるが、その条件としては、1.科学的な有効性が証明されていること、2.安全性が担保されていること、3.作用メカニズムが解明又は推定されていること、の3点が確保されていることが必須条件と考えている。
魚食と健康に関する多くの疫学調査や介入試験から、殆どの生活習慣病予防には魚油中に多く含まれるEPAとDHAの摂取が有効であるとするエビデンス(科学的根拠)が得られている。EPAとDHAはオメガ3系の高度不飽和脂肪酸の一種であり、海産性の魚油に豊富に含まれている。近年、オメガ3系の高度不飽和脂肪酸や魚油の摂取量が、脳・心臓血栓性疾患、炎症性疾患、うつ病、がん、アルツハイマー病等の罹患率に大きな影響を持つことが、疫学的および栄養学的研究の成果により漸次明らかとなり、これらの疾患の予防・治療の観点からEPA、DHAなどの海産性オメガ3系高度不飽和脂肪酸が世界においても注目を浴びるようになって来ている。