掲載 7 「オメガ3系脂肪酸と血流改善と血圧制御」
血流を良好にする事は生命現象維持には極めて重要である。
先ず酸素や栄養素の供給であり、また代謝産物(老廃物)排泄は重要である。さらには体温を体全体に行き渡らせる事も細胞機能維持には極めて重要である。
エネルギー生産に必須な酸素を運搬するのは血流中の赤血球である。容易に想定されるように、血行促進作用を有する栄養素の積極的な摂取は有酸素運動の効率化に関連する。
本シリーズ2回目に述べたように、EPAは血小板凝集抑制作用が強くいわゆる「血液サラサラ」機能を有する。 このメカニズムにより酸素供給が良くなり最近ではスポーツサプリとしても評価を受けている。
一方DHAは細胞膜リン脂質に組み込まれており、その化学構造に由来して細胞膜流動性を高め、また赤血球変形能を高める事が知られている。すなわち血管の柔軟性や毛細血管での血行促進作用を高めることで、全身の細胞への酸素供給が改善される。このようなメカニズムを期待して、大学陸上競技部選手を対象としたヒト試験を行った結果、摂取後(4ヶ月)の10,000mの記録において、平均51秒の機能向上が見られた。摂取しなかったトレーニングのみの選手では20.7秒の短縮に止まったことから、DHAサプリメントのスポーツ機能向上に有効性が示唆された。
血行促進はスポーツパフォーマンス向上に止まらず、高次トレーニングにも耐えられるだけの疲労回復作用も期待でき、また脳内への酸素供給も高まる事から脳機能にも間接的に良い影響が出る事が期待できる(「血の巡りが良い」状態)。
また高血圧に関しては、血圧低下を目的としてオメガ3サプリメントやオメガ3を多く含む食品を摂取することは、塩分やアルコール摂取の低減や運動量の増加と同じくらいの効果があることが70報のRCT試験(無作為化比較対照試験)結果を分析したメタ分析により明らかになった。臨床的観点から、DHA・EPA摂取は血圧を下げ、最終的には関連する慢性疾患の発症率を低下させる可能性があると研究者らは結論付けた。同結果は最近のAmerican Journal of Hypertension誌に掲載されている。