ドクターからの健康アドバイス

掲載8  生と死について

生と死については、まず死に対する教育が小学校でもできていないし、医療の中でもできていません。大学の医学部でも死についての講義はほとんどないのが現状です。死というものをしっかり見ないと、生はよくわかりません。

以前は、死というのは医師の仕事とは外れて考えられていました。治すのが仕事で、死は一種の敗北と言われ、宗教家の仕事だといわれていました。

医療から考えても、養生から考えても、死というものをたぐり寄せておくか視野の中に入れておかないと、生ははっきりわかりません。「あす死ぬとわかっても、するが養生」と五木寛之氏は私との対談の中で言っていますが、まさにその通りです。

死の世界まで考えた養生を考えていかなくてはいけないのです。死というのは、誰が何と言おうが必ず自分の前に来るものですから、考えないで生きていると直面したときに狼狽するわけです。

自分の死について折に触れて考えるということを、私はいつも患者さんに言いますし、職員にも言っています。これは、一番大事なことです。ホリスティック医学の最終は、生と死の統合であると、私はいつも言っています。生きながら生と死を統合する、これが理想だと思います。

実際に生と死を統合したと思える人が、私の患者さんの中にただ一人だけいます。太極拳の楊名時先生で、他には思い当たる人はいません。これからは、みんながこのように生と死を統合するようになっていかなくてはいけないと思います。

五木さんのように、明日に向かって希望を持って、死ぬとしても、死んでからに希望をつなぐ。そう思って死ぬのが一番いいのではないでしょうか。

ドクタープロフィール

帯津三敬病院 名誉院長 帯津 良一 (おびつ りょういち)

経歴

  • 1936年埼玉県に生まれる。
  • 61年東京大学医学部卒業。
  • 東京大学病院第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科を経て82年帯津三敬病院を設立。院長。
  • ホリスティックなアプローチによるがん治療を実践。
  • 2000年、「楊名時太極拳21世紀養生塾」を設立し、塾頭に。
  • 2001年、帯津三敬病院名誉院長。現在、NPO法人日本ホリスティック医学協会会長、調和道協会会長、楊名時太極拳21世紀養生塾主宰、日本ホメオパシー医学会理事長などを兼務。

<主な著書等>
『いのちの場と医療』(春秋社)、『気と呼吸法』(春秋社)、『気功的人間になりませんか』(風雲舎)、『がんになったとき真っ先に読む本』(草思社)、『身近な人がガンになったとき何をなすべきか』(講談社)、『ガンを治す大辞典』(二見書房)他多数。

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