ドクターからの健康アドバイス

掲載6  健康的に年をとる

人は血管とともに老いる

今回は「健康的に年をとる」というテーマです。年を取るという加齢現象は、老化を伴います。老化をどのようにコントロールするか、どのように老化のスピードを遅らせるかが健康の秘訣となります。今回は、本シリーズの最終稿なので総論的にまとめをしたいと思います。

「人は血管とともに老いる」、という言葉があります。人間の死亡原因は、脳卒中と心臓病が多数を占めています。いずれも動脈硬化であることから、多くの方が、血管の老化によって亡くなっていることになります。動脈硬化は、悪いライフスタイルによって発生しますが、実は腸内環境も関係しているのです。

体内インフラの整備

気になるお通じのお悩みですが、皆さんは「体内インフラ」、という言葉を聞いたことがあるでしょうか?血管と腸管の2つの管の中がきちんとよどみなく流れているか?その整備が必要ということです。

この2つは老化と関係します。動脈硬化は、腸内の悪玉菌が多く、お通じが悪い方に起こりやすくなります。腸内をキレイにすることは、健康的に年を取る第一歩となります。

食事に気を付けて、納豆食などで菌を入れて善玉を増やすこと、食物繊維を摂取すること、オリゴ糖など善玉菌を増やす成分を摂取するなどの工夫が必要です。私たちは菌とともに生きていると言っても過言ではないくらい、菌と共存しています。人それぞれ共存している菌種が異なり、それによって免疫力も変わります。

一番は快便です。快便をもたらすためには、ライフスタイルも大切です。規則正しい生活、飲水、ストレス回避、毎日適度な運動も必要です。本シリーズの最初では、白米より玄米、白いパンより胚芽パンを食べることが健康的であるとして説明しました。

このような食の選択は、ビタミンやミネラルが入るとともに、腸のお掃除となる食物繊維が入るので健康的なのです。

食物繊維は血管のお掃除にもなります。野菜、海藻類の摂取、穀物は精製されていないものを、さらに魚、豆腐、納豆などの豆類を摂取する必要、すなわち日本食がよろしい、ということになります。

肌の老化予防

お肌のシワができにくい食品について、研究した報告があります。魚、魚油、豆、魚などを食した場合、皮膚にできるシワの生成を抑制的に働くという報告があります。肉類は逆にシワを促進する方向で働くようです。

肌にしても血管にしても、腸管にしても、見えるところも見えないところも、食べるものが大切だということです。アンチエイジングの観点からは、お肌の健康は体の内部からと考えています。そのため、食事のみならず、ビタミンやミネラルの摂取もお勧めしています。

また、EPAは肌の弾力性を維持するという研究結果や、紫外線による紅斑形成を抑制するというデータもあり、EPAを含むサンマ、サバ、アジ、イワシなどの青魚の摂取は見た目のアンチエイジングを支える食材として期待されます。

抗酸化物の摂取

次に人間が老化する原因として、酸化現象があります。酸化とは体内の活性酸素で起こる生体膜やタンパク質、コラーゲンの酸化現象ですが、それらが見た目に老けた容姿を作るとともに、体内では細胞障害を引き起こし機能減退の原因になります。

NF‐κBという炎症のスイッチ(物質)が活性化されると、活性酸素による炎症による障害が発生します。睡眠不足、過食、たばこ、紫外線、酸化脂質、食事などの様々な要因が引き金となり、炎症がもたらされます。特に日本食に多く含まれる抗酸化物となるビタミンやミネラル、フィトケミカルを摂取して日々抗酸化を図ることはいい年の取り方の秘訣になります。

最近話題の抗糖化

最近注目されている酸化ストレスよりも重要なテーマが、抗糖化です。糖質の過剰摂取で起こる糖化、酸化というダブルストレスで来る老化現象です。血糖値が高い方、食後の血糖値が高い方は注意が必要です。果物の過剰摂取は糖化ストレスが高くなります。

果物に含まれる果糖という糖質は糖化ストレスの元凶として知られています。糖質は必要な栄養素ですが、摂りすぎは体に悪いものとなります。ありきたりな言葉ですが、”バランスのいい栄養摂取”をこころがける必要があります。

最後に

人生は一度きりといいます。その限りある人生を実りあるものにして頂くべく、初稿から12回記載させて頂きました。これまでの寄稿をぜひご活用下さい。この稿をお読みいただきました皆様の抗老化人生を祈念しつつ、今回のハートフルクリニック平良の連載を終了させて頂きます。ありがとうございました。

ドクタープロフィール

ハートフルクリニック院長 平良 茂 (たいら しげる)

経歴

  • 平成元年琉球大学医学部卒業 医療法人白寿会理事長、ハートフルクリニック院長、 日本抗加齢医学会専門医、点滴療法研究会ボードメンバー、日本臨床自然療法研究会幹事、日本サプリメント評議会評議員、日本臨床自由診療研究会会長など。
  • 積極的に自由診療を治療に取り入れ多くの臨床例を持つ。
  • その独自の手法を全国の医師に共有すべく、日本臨床自由診療研究会を主宰し啓蒙活動を行っている。

<著書>
「病気にならない体づくり」「末期ガン克服への挑戦」「サプリメント図鑑」など。

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