掲載5 加齢と疾病
加齢に伴う体表面の変化は、シミ、シワ、タルミがありますが、体の内部では骨粗鬆症、心筋梗塞、高血圧、糖尿病、動脈硬化がひそかに進行しています。
日本人の死因のほとんどは脳卒中や心筋梗塞を中心とする動脈硬化、そして癌です。そのいずれも悪いライフスタイルによって加齢とともに発症するため、生活習慣病と言われているものです。
人はなぜ加齢に伴い各種疾病を発症するのでしょうか?このメカニズムに関してはこれまで酸化ストレスによる体のサビが要因のひとつであることをこのシリーズで語ってきました。
酸化ストレス以外にも糖化ストレスが存在し、これも人間がサビる要因として知られています。
この2大ストレスは、加齢とともにダメージを蓄積します。その累積された体のサビが疾病の発症となって人々を悩ませます。
サビの蓄積は、ライフスタイルによっては抑制されたり、あるいは促進されたり、人によって異なるスピード、すなわち個人差という形になり、時間とともに見た目の若さとして表現されることになります。
同期会で若いままの人、老けている人がいるのもそのためです。同じ顔形をした一卵性の双子を研究した結果でも、生活習慣が異なると、シワの深さや本数、シミの多さが異なり、加齢とともに見た目にはっきり違う顔貌になります。
さらに別の研究では見た目で若い人が長生きをしているということも知られています。サビる生活習慣、サビない生活習慣、いずれをおくるかが、とても重要です。加齢イコール、疾病の発症ではないのです。
今回のコラムでは、加齢に伴う疾病の発症メカニズムを知っていただいた上で、疾病予防について、ひいてはアンチエイジングライフのコツについて語りたいと思います。
酸化ストレスは、体内に発生する活性酸素が多い場合にダメージをもたらします。たとえば、夜更かし、睡眠不足、暴飲暴食、不規則な生活、偏食、日焼け、紫外線、スナック菓子、加工食品、有害金属、糖質過多、脂質過多、過剰な塩分、肥満、歯周病、ストレス、たばこ、運動不足、過激な運動、食品添加物、手術、排気ガスなどで発生します。
これらは生活から完全に排除することはできません。活性酸素は呼吸とともに入り込んだ酸素の一部から産生され、単に食事をしただけでも体内では活性酸素が発生しています。したがって、活性酸素の発生をゼロにすることは不可能です。
その一方で、活性酸素は菌やウイルスを攻撃し、各種情報伝達物質として非常に重要な役割も担うため、発生をゼロにすることは、健康上逆効果になります。
要は過剰な活性酸素を発生させない生活をし、不要なものは消去することが大切なのです。前述の活性酸素発生源に暴露されやすい生活を避けるために、一般的に健康的と言われている規則的な生活をこころがけ、体にいいものを食し、適度に運動し、禁煙・飲酒は適量にして、体重コントロールをすることです。
過剰な活性酸素を消去するためには、野菜や海草類などの食物繊維の摂取、1日1個ほどの果物の摂取、肉や魚などの動物性蛋白の摂取、豆腐や納豆などの植物性蛋白の摂取、飲水、そして塩分と脂肪分、糖質を適度に制限することが大事です。
摂取する栄養分の中でも、過剰なナトリウムや脂肪、糖質は活性酸素を発生させる元凶になります。野菜はキャベツ、白菜、チンゲン菜、カリフラワー、コマツナなどのアブラナ科の植物が特に女性のホルモンをコントロールするのでお勧めです。
また、最近よく糖化ストレスが話題にのぼります。ぶどう糖や果糖などの糖質を過剰に摂取することにより炎症や酸化をもたらします。果物は果糖を含むのでその過剰摂取は、糖化ストレスのダメージをうける可能性があるので要注意です。
過ぎたるは及ばざるがごとしとなります。ある研究結果からブドウ糖よりも果糖の方が体に与えるダメージが大きいことが知られています。
ソフトドリンクには多量の糖質が含まれています。ソフトドリンクの過剰摂取は女性の脳卒中リスクを上げるとする研究結果が出ています。さらに糖質が入ったドリンクの多用はうつ病の発症リスクを上げるとする報告もあり、糖質の過剰摂取が疾患と関連することが知られています。
反対に糖質の過剰摂取を控えると血圧が降下することや体重減少とも関連することが知られています。加齢とともに酸化ストレス、糖化ストレスは蓄積され、その結果が疾患となってくるのでしょう。
他にも有害金属の蓄積、腸内環境の乱れ、便秘、ビタミンやミネラルの不足が相まって、長い年月とともにそのダメージが疾患となって現れる、生活習慣病はいわば身から出た”サビ”とでもいうものになります。
本文をお読みの皆様はぜひとも、いいライフスタイルをこころがけ、ワビサビを感じることができる余裕のある人生をおくられて下さい。