ドクターからの健康アドバイス

掲載2  加齢の基礎知識

加齢とは年を重ねることを意味します。毎年、誰でも平等に1歳年をとります。すなわち加齢は平等に起きる現象として知られています。ところが同じように加齢しても老化が進む方、進まない方がいるのは、何十年ぶりの同期会で集まった人々を比較してご存知のことと思います。今回は加齢現象にともなう老化について語りたいと思います。

老化現象は様々なメカニズムが働いて起こることが知られています。DNAのエラーや異常たんぱく質の蓄積、タンパク質結合の異常、突然変異、ミトコンドリアの異常、フリーラジカルや活性酸素による酸化などです。異常物質の蓄積については、アルツハイマーの脳細胞への蓄積や、ミトコンドリアの異常により多くの疾患が発生することがよく知られています。

老化により疾患が発生します。すなわち健康な人が老化することにより疾患が発生します。老化を予防することは単に見た目の良さを求めるものではありません。疾患予防のための老化予防ということになります。もちろん長寿にも関係します。

今回は主に酸化やミトコンドリア異常についてお話します。フリーラジカルや活性酸素による酸化が老化に関係することは一般的にもよく知られています。活性酸素の消去、すなわち抗酸化が長寿をもたらすことは新聞などでも紹介されました。

活性酸素はミトコンドリアで発生します。酸素を取り込むとその酸素からミトコンドリアは活性酸素を発生させます。質のいいミトコンドリアでは活性酸素の発生量は少なく老化を遅くします。

ミトコンドリアは二重になった生体膜で包まれていますが、その膜の質もミネラルの質の維持に重要です。食べたものが私たちの体を構成します。当然生体膜にもなります。トランス脂肪酸を過剰に摂取した場合は、それが膜に取り込まれ、膜の異常を満たします。

ミトコンドリア膜の異常は活性酸素発生につながります。異常ミトコンドリアからは多くの活性酸素が発生します。それが老化につながります。発生した活性酸素は消去することが大切です。人体にはその消去システムが備わっています。SOD酵素がミトコンドリアから出る活性酸素を消去します。

SOD酵素が多い人と少ない人が存在しますが、それが老化しやすい人としにくい人の差になります。SOD酵素を高くすることで老化から遠ざかることが知られています。SOD酵素は野菜や果物から摂取することです。それでも酸化しやすいライフスタイルでは老化が加速されます。

たとえば、ストレス、睡眠不足、水分不足、食べ過ぎ、過剰な薬物、大気汚染、有害金属、過剰な飲酒、野菜果物食が少ない生活、喫煙、過体重、運動不足、糖質の過剰摂取などが老化を促進するものとなります。

また、ミトコンドリアの機能を低下させるものとして過剰な肉食、前述したトランス脂肪酸、有害金属の摂取、喫煙、ビタミンやミネラルの不足などがあります。これらも老化と関連する因子となります。ミトコンドリアの機能低下、酸化しやすい生活、活性酸素を消去できない体質が関連します。

また最近、鉄がたまりやすい体質があることが報告されました。採血検査でそのチェックが可能となっています。鉄が過剰に蓄積すると体が酸化しやすい状態になります。さらには、血糖が高い方や、糖尿病の患者さんでも糖が災いして体がさびやすい、酸化しやすい体質となります。

さらに体のどこかに炎症があるとこれも酸化しやすい状態になります。いわゆる慢性炎症がそうですが、歯周病や関節炎など体内の炎症が酸化をもたらします。肥満は脂肪組織の慢性炎症として知られています。

そのため、肥満者に糖尿病の持病があり、鉄がたまりやすい体質であれば老化しやすい体質になると考えられます。体質をチェックすることで老化しやすいかどうかがある程度わかることになります。採血で鉄や糖、炎症などの体内環境をチェックすることが今後老化しやすいしにくいかが判定できる可能性があります。

今後の医療では老化のメカニズムについてチェックしてそれをいち早く改善する、アンチエイジング医療(抗老化医療)がこれからの予防医療を飛躍させる可能性があります。皆さんもアンチエイジング医学で老化を遅くしてみてはどうでしょうか?

ドクタープロフィール

ハートフルクリニック院長 平良 茂 (たいら しげる)

経歴

  • 平成元年琉球大学医学部卒業 医療法人白寿会理事長、ハートフルクリニック院長、 日本抗加齢医学会専門医、点滴療法研究会ボードメンバー、日本臨床自然療法研究会幹事、日本サプリメント評議会評議員、日本臨床自由診療研究会会長など。
  • 積極的に自由診療を治療に取り入れ多くの臨床例を持つ。
  • その独自の手法を全国の医師に共有すべく、日本臨床自由診療研究会を主宰し啓蒙活動を行っている。

<著書>
「病気にならない体づくり」「末期ガン克服への挑戦」「サプリメント図鑑」など。

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