ドクターからの健康アドバイス

掲載6  感染性病原体

第6章:感染性病原体

本日は、感染性病原体の最新トピックをご紹介します。ピロリ菌感染症は、胃の炎症を引き起こし、症状が悪化すると潰瘍や胃がんまでも誘発します。Baeらは、ピロリ菌感染により誘発される炎症を、β-カロテンにより予防できるかどうか調べました。β-カロテンは、菌類、植物、果物に豊富に含まれる赤橙色の色素です。in vitro実験の結果、β-カロテンはピロリ菌により誘導されるMAPKとAP-1の活性化、マトリックスメタプロテアーゼ10発現促進、および細胞浸潤を阻害できることがわかりました。さらにβ-カロテンはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ (PPARγ) およびカタラーゼの発現を促進することで、ピロリ菌に感染した細胞の酸化ストレスレベルを低下させました。

新型コロナウイルス感染症は、幾度もの遺伝子変異を繰り返しながら世界中で猛威を振るいました。BaeとKimは、COVID-19に対してビタミンC、D、およびセレンが及ぼしうる有益な効果についての知見をまとめています。たとえばビタミンDはコロナウイルスに対する物理的障壁を強化し、抗菌ペプチドの産生を促します。セレンは免疫細胞の働きを強化します。またビタミンCには免疫力を高める効果があるため、抗ウイルス・抗炎症作用を発揮すると考えられます。このように、COVID-19患者がビタミンC、D、およびセレンを摂取することで、免疫システム全体が強化され、ウイルスの拡散を防ぎ、病気の進行を抑えるのに役立つのではないかと考えられます。

終章:まとめ

自然食品や栄養食品が、それらの持つ単純な栄養価という枠組みを超えて、人々の健康や免疫力をどのように改善できるのかという疑問は、現在に至るまで多くの研究者たちの関心を集めてきました。今回の「ドクターから健康アドバイス」の連載では、がん、神経、消化器疾患、炎症性疾患、そして感染症に関するレビューや学術研究を交えながら、ニュートラシューティカルズが私たちの免疫機能にどのような影響をもたらすのかについて概説しました。これらの知見は序章でも紹介しましたように、私たちが出版した書籍からの抜粋でありますが、その大本の書籍でさえも私たちの最終目的、つまり天然物が免疫系とどのように相互作用するかを明らかにするという目的に対して、その全体像を把握するには至っていないということを認めなければなりません。しかし、書籍に携わった研究者たちは、私たちの編纂した本が、ニュートラシューティカルズとその健康増進効果を体系的に理解するために求められる、確固たる科学的根拠を構築する一助になったと固く信じています。ここまでお付き合いくださった皆さんも、私たちと同じように考えてくだされば幸いです。このような機会を与えてくれた大和薬品株式会社に感謝いたします。

ドクタープロフィール

チャールズ・スタート大学, School of Biomedical Sciences, Australia Sok Cheon Pak, Ph.D. 氏

経歴

  • 1992年クレムソン大学 (米国) にて博士号 (生理学) 取得。
  • その後イリノイ大学医学部 (米国)、ドンシン大学 (韓国) 准教授、New Zealand College of Oriental Medicine (ニュージーランド) 学部長を経て、
  • 2007年からはチャールズ・スタート大学健康科学部 (補完医療) 准教授/プログラムリーダーを務める。
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