ドクターからの健康アドバイス

掲載1  ニュートラシューティカルズと免疫

私たち人類が罹患しうる病気は、私たちが普段口にするものと密接な関わりがあり、そのほとんどが予防可能なものです。実は医師により行われる診察のうち、大部分の患者さんは生活習慣病に関連する問題に悩まされています。この厄介な問題は、健康的なライフスタイルを取り入れることで予防することができます。また、たとえ病気にかかってしまったとしても、その症状をただ抑えようとする治療 (対症療法) よりも、病気の原因そのものに対しての治療 (原因療法) を行うことは、より安全かつ経済的であるだけでなく、効果的でもあるでしょう。例えばCOVID-19のような感染症は、実に深刻な健康被害を引き起こします。今回、私の連載では健康増進と病気の予防という観点から、ニュートラシューティカルズの役割を見直してみたいと思います。

ニュートラシューティカルズ (Nutraceuticals) とは、Nutrition (栄養) とPharmaceuticals (医薬品) から作られた言葉で、食品の一次機能としての栄養価を備えていることに加えて、人々の健康増進に役立つと考えられる様々な原料から製造される食品のことです。その多くは、免疫システムにプラスの影響を与え、強化することができます。COVID-19の流行期には、ニュートラシューティカルズの売り上げは劇的に増加しました。しかし、天然由来のニュートラシューティカル製品については、その科学的組成や作用機序、健康や病気へ及ぼす影響を解明し、生体防御システムである免疫系とどのように相互作用しているかの全体像を理解するために、まだまだ多くの研究を必要としているのが現状です。

私と、博士課程研究者であるSoo Liang Ooiは「Nutraceuticals in Immune System (免疫系におけるニュートラシューティカルズ)」と題した電子書籍を編集・出版しました。この書籍には、厳格な査読プロセスに基づいて9つの原著論文と、10のレビュー論文が掲載されています。論文はそれぞれ、植物医薬からビタミン、微生物由来代謝産物に至るまで、ニュートラシューティカルズに関連した広範な天然成分を研究対象としています。またその対象疾患には、がん、神経疾患、消化器疾患、炎症性疾患、感染症等が含まれます。今日からの私の連載では、書籍の中で紹介されている研究結果を、皆さんに少し紹介したいと思います。まずはがんとニュートラシューティカルズの関係について議論していきましょう。

ドクタープロフィール

チャールズ・スタート大学, School of Biomedical Sciences, Australia Sok Cheon Pak, Ph.D. 氏

経歴

  • 1992年クレムソン大学 (米国) にて博士号 (生理学) 取得。
  • その後イリノイ大学医学部 (米国)、ドンシン大学 (韓国) 准教授、New Zealand College of Oriental Medicine (ニュージーランド) 学部長を経て、
  • 2007年からはチャールズ・スタート大学健康科学部 (補完医療) 准教授/プログラムリーダーを務める。
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