ドクターからの健康アドバイス

掲載1  プライムエイジングとは

皆さんこんにちは。M再生クリニック院長の飯塚(めしつか)翠です。当院ではHEART TO HEARTをモットーに患者様一人一人と真剣に向き合い、ただ病気を治すだけでなく人生を幸せに豊かに生きて頂きくためのお手伝いをさせて頂きたいという熱い思いを抱いて日々診療しております。(6回のシリーズのこのコラムを通して、皆様に健康の大切さをわかって頂ければ幸いです。)

ストレスの多い現代社会のなかで、医学の発展と共に平均寿命は延びつつあり、先進国では人生百年時代に突入してきています。しかし病的な老化だけを治すのでは、意味がありません。生理的な老化をいかに遅くするかによって、その人の健康寿命は延び、受動的な健康状態から積極的に健やかな人生を送る事ができるようになります。とは言っても、老化は誰にでも平等にやってきますし、時を戻す事もできません。お金で買えない数少ない物が幸せと健康なのです。ではどうすれば、健やかに年を重ねていく事ができるでしょうか?その答えはプライムエイジングです。アンチエイジングという言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、アンチエイジングとプライムエイジングはどう違うのでしょうか?

アンチエイジングは日本語で抗加齢と訳されますが、字のごとく、加齢に抵抗するという意味です。アンチエイジングの定義は「元気で長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学」とされており、いかに最新の科学を使ってきれいで若々しく健康にいるかがテーマです。もちろんこれは素晴らしい考え方ですが、時が経つと共に生理的老化のスピードが速まり、いかなる最新科学をもってしても追いつかなくなってしまい、それと反比例して本人の「若くなりたい」という欲求はどんどん強くなり過剰な治療につながりかねません。よくハリウッドの女優さんが昔の美しさを求めて、しわにヒアルロン酸を入れているうちにどんどん要求がエスカレートして、しまいには本人か識別できないくらいパンパンな人工的な顔になりゴシップネタのターゲットになる事がしばしば見受けられますが、まさにあれは過度なアンチエイジング治療が生み出したものと言えます。

それに対してプライムエイジングとは健やかに年を重ねることがテーマです。もちろんプライムエイジングで全く科学の力を使わないで自然にいるという意味ではありません。現代科学は非常に優れており忙しい方でも手軽にバランスの取れたサプリメントや副作用の少ないお薬、侵襲性の少ない治療などがありますので、時間の節約という意味においてそれらは非常に有効的です。プライムエイジングとは、つまり、科学の力のみに頼るのではなく、自分が本来持っている力を使ってより無理がなく、自然で、心と体のバランスを保ちながら人生を謳歌するという意味だと私は解釈しています。

ではどのようにしたらプライムエイジングを実践できるのでしょうか?その秘訣は「自身の中で起こっている変化を楽しむこと」と「自分らしくを大切にする事」です。私たちはみな平等に1日1日年を取ります。20歳くらいまではそれが向上の方向に向いているため、毎日進歩する自分がありますが、20歳を過ぎていくと少しずつ体の中で老化の変化も現れ始め、40歳くらいになってくると誰しもが以前はできていた事が出来なくなってきているというような何かしらの「老化」を感じ始めます。そこで大事なのが、その変化をただ単に「老化」とネガティブにとらえるのではなく、その月日を経て自分が何を得ることが出来たのかにフォーカスすることで、自分の歩んできた人生をより肯定的にとらえることが出来、満足感を持ちながら日々の生活を送ることが出来ます。例えば私のいる外科医の世界ですと、だんだん年と共に老眼がすすみ目が見えなくなってきたり手が思うように動かなくなってきて「自分はもう外科医として終わった」と絶望的にとらえることは容易ですが、そうではなく、今まで外科医としてたくさんのオペを執刀してその都度「もっとこうすればよかった」という反省や振り返りを基に、より安全で効果の高い手術をすることが可能になり、またそれを後輩に伝授することが出来るという風にプラスにとらえることが出来れば、今まで以上に仕事も楽しくなりますし、また今の自分を好きになる事もできます。年を重ねるごとに音楽や食べ物の趣向が変わっていくように、その時その時の自分の体や心と向き合って自分なりの幸せを実感できればそれで良いのです。 その上で、バランスの良い食事をとり、適度な運動をし、喫煙や紫外線などの酸化ストレスは極力避けて、自分なりのリラックス方法を見つけ、良い睡眠をとる事が大事なのは言うまでもないと思いますが、さらに、何歳になっても諦めずに前向きな気持ちで自分なりの目標を持ち、信頼して共に楽しい時を過ごせる仲間や愛する人との大切な時間を過ごす事がまさに充実した幸福な人生につながると私は思います。

脳科学的観点からみても、リラックスしている時人間はα波という脳波を出すことができ、このα波によってストレス解消や集中力の向上のほか病気を治す免疫力や自己治癒力をアップするような働きもあることが知られています。自分の考え方を少し変えるだけで自分の人生を豊かにし、それによって更に自己治癒力も上げて健やかで幸せな毎日を送る事こそプライムエイジングの目標としているところなのです。今後のシリーズではプライムエイジングを得るため、特に栄養、免疫力、や抗炎症に関する事について皆さんにお伝えしようと思います。

皆さん次回もお楽しみに!

ドクタープロフィール

M再生クリニック 院長 飯塚 翠 (めしつか みどり)

経歴

  • 2008年北京大学医学部卒業。
  • 中国医師国家試験、日本医師国家試験合格。
  • ハーバード大学医学部(米国)、北京大学医学部付属第三病院、東京大学付属病院、東京女子医科大学病院を経て、2019年M再生クリニック院長に就任。
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