ドクターからの健康アドバイス

掲載4  生姜の健康効果

生姜は、多くの方々にとって身近な食品素材です。米国では、生姜はジンジャーブレッドやジンジャースナップ(クッキー)で有名です。日本では、活用範囲は限られるものの、生姜はかなり一般的に食べられています。ガリ(生姜の酢漬け)は、世界中の「寿司バー」で親しまれています。生姜は、食文化以外の分野でも日本の伝統文化の一端でもあります。生姜湿布は、疼痛や様々な血行を巡るトラブルに対する伝統的な民間療法です。生姜灸は、伝統医学の役割も果たしています。最近の研究では、生姜塩灸が脳卒中後の排尿障害に対して治療効果があることを明らかにしたものもあります。生姜の根は、生も乾燥もいずれも、多くの伝統的な漢方(日本の伝統的な植物薬)の処方で見られます。

生姜は、ヨーロッパの植物医学でも使用されます。フランスのフィトアロマテラピーでは、消化性の抗炎症や抗潰瘍薬として使用されています。生姜は、消化酵素の産生を高め、インスリン活性を向上させると考えられています。副腎皮質刺激剤(糖質コルチコイド)、精巣アンドロゲンの刺激剤として使用され、T-4甲状腺ホルモンの分泌を刺激します。生姜は、抗凝固薬の効果を増強することもできます。また、産後の疲労、甲状腺機能低下症、閉経期の疲労、甲状腺炎、甲状腺結節、男性更年期、各種消化不全のためにも生姜は臨床的に使用されます。

これは、恐らくほとんどの人が気付いていないことですが、生姜は様々な広範囲にわたる疾患のための医学的研究の対象とされており、その治療価値はウコンにすら匹敵する高レベルの有効性を示しています。生姜は、ウコン同様に抗炎症効果がありますが、疼痛にも有効です。比較研究では、生姜は月経痛に対して鎮痛剤イブプロフェン(アドビル)やメフェナム酸(Ponstel)と同等の効果があることが明らかになっています。別の比較対照試験でも、生理開始時および開始前3日間に有意な疼痛の緩和が見られました。生姜とオレンジオイルでのマッサージ療法は、短期的な膝の疼痛の緩和の方法として施術されていて、良好な結果が得られています。生姜は、膝の変形性関節症の症状を軽減します。

一般的な片頭痛発作の治療に対する生姜パウダーの効果は、統計学的に薬剤スマトリプタンに匹敵するもので、しかも生姜の方が副作用がより少ないのです。二重盲検無作為化臨床試験では、100人の急性片頭痛の患者を対象に、無作為に生姜パウダー、もしくはスマトリプタンのいずれかを飲んでもらいました。いずれかの物質を摂取した2時間後、頭痛の重症度は有意に減少しました。治療効果から得られる患者の満足度と、摂取を継続する意欲を1ヵ月後に評価しました。生姜パウダーとスマトリプタンの効果はほぼ同等で、患者の満足度、摂取を継続する意欲は、生姜群においても薬剤群と同様に高いものでした。生姜の根は、被験者のめまいを軽減することも明らかになっています。

実際に多くの研究において、生姜には様々な健康上のトラブルに対して効果がある可能性が示唆されています。「食品が最良の薬」であるという自明の理を説明するために、生姜ほどふさわしい例は他にないと言っても過言ではないでしょう。

ドクタープロフィール

Acupuncture and Integrative Medical College
(AIMC Berkeley)
Dan Kenner, Ph.D., L.Ac. 氏

経歴

  • 1979年に明治東洋医学院専門学校(日本)を卒業後に鍼灸師の国家試験に合格。
  • 大阪医科大学ペインクリニックおよび近畿大学医学部付属病院で研修を受ける。
  • National University of Naturopathic Medical Sciences(米国)で自然療法医療科学(ナチュロパシー)のPh.D.を取得。
  • 現在、NHF(米国国民保険連合)およびBarkeley鍼灸統合医療専門職大学院(米国)において委員を務め、多くの著書がある。
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