ドクターからの健康アドバイス

掲載10  マグネシウムは心血管系の健康のために重要である

マグネシウムは、健康のために必要不可欠な必須元素(ミネラル)です。私たちはマグネシウムなくしては生きられませんが、残念なことに多くの人々が健康を維持するために必要な量のマグネシウムを十分には摂取できていないと推定されています。マグネシウムの推奨摂取量は1日当たり男性が420mg、女性が320mgです。野菜の栽培土壌はミネラルの枯渇が進んでおり、食品を加工することによって食品の栄養の含有量、特にマグネシウムがさらに減ってしまっているため、多くの人々にとって高品質の栄養補助食品が必要になっていると考えられます。すでに健康上の問題に直面しているのであればなおさらです。

マグネシウムが脳、骨、筋肉に特に重要であることはご存知かもしれませんが、今回の記事では心血管系の健康における重要性についてお話ししたいと思います。心血管疾患は依然として世界中で最大の死因ですが、マグネシウムの欠乏がその一因となっていると考えられます。日々の食生活でのマグネシウム不足が多少なりとも原因となっている早期死亡や身体障害を避けるために、マグネシウムを十分に摂取することの重要性を理解していただきたいと思います。そのため、私たちの心臓の健康を維持するためにマグネシウムが果たしている複数の役割についてご紹介しましょう。

非常に基本的なことですが、マグネシウムは私たちの細胞内におけるDNAの合成と修復、タンパク質の合成、ナトリウムカリウムポンプ(私たちの体内の個々の細胞の電気の火花のようなもの)の制御、600を超える酵素の処理、ATP(細胞のエネルギー)の産生に関わっています。 したがって、マグネシウムはあらゆる細胞において役割を担っているのです。 DNAから細胞、そして細胞から臓器へと私たちの体内の経路をたどるとマグネシウムは必要不可欠です。

特に心臓では、マグネシウムは心筋(心臓の筋肉)、心拍出、カルシウム恒常性、血管緊張、末梢血管抵抗に関与しています。マグネシウムは、心臓細胞のイオンチャネルを介した心筋の電気的状態の調節や、細胞を通過するカルシウムの移動を調節して心臓の筋肉の収縮性を正常化することによって、抗炎症、血管拡張効果を発揮して、これらの機能のすべてに影響を与えることができます。

人間、動物を対象にした試験のいずれにおいても、マグネシウムに顕著な血管拡張効果があることは、科学者たちによって明らかにされています。つまり、これはマグネシウムが血流を改善することを意味します。動物研究では、マグネシウムが窒素酸化物(他の血管拡張物質)の合成に影響を与えましたが、人間の場合にはこれが当てはまらないようです。マグネシウム不足は、血管内皮細胞における酸化ストレスの増加に関係することが知られています。血管内皮細胞は、私たちの全ての血管の内側を覆う非常に薄い膜です。血液は閉塞や抵抗のない血管を通過する必要があるため、内皮を健康に保つことは、私たちの健康全般に非常に重要です。酸化ストレスは結果として活性酸素を増加させますが、時間の経過とともに血管内皮細胞にダメージを与えてトラブルを引き起こす可能性があります。低マグネシウムに酸化ストレスの増加が加わると、慢性炎症を引き起こし、最終的にアテローム性動脈硬化、血管抵抗性、血栓症などにつながる可能性がある全ての種類のたんぱく質や遺伝子を活性化させます。このように、マグネシウムは酸化ストレス、そして最終的には炎症から私たちの血管を防護するという重要な役割を果たしているのです。炎症は、時間が経つとともに最終的には心血管疾患として臨床的に認識されるような重大な疾患を引き起こします。

すでに冠動脈疾患のようなトラブルのある人は、マグネシウムの摂取量を増やすことによってこれらの疾患のバイオマーカーの一部を改善できる可能性があることを示している研究もあります。たとえば、マグネシウム摂取は脂質プロファイルを改善し、遊離酸素ラジカルの数を減少させ、血管内皮細胞の機能を高め、血小板凝集を抑制することによって血管凝固・血栓症を防ぎ、最大酸素摂取量を増やし、さらに左室駆出率を高めます。したがって、すでに心血管系疾患がある人には、心臓と血管の機能のためにマグネシウムの摂取が非常に重要であることが、これらの症状の改善によって示唆されています。マグネシウムの適切な活用は、とても有望なのです。ただし、急性心筋梗塞(心臓発作)や高血圧を患っている患者についてのデータは、冠動脈疾患の患者の場合と比較すると、一貫性が低くなります。それでもやはり、マグネシウム不足が心臓発作や高血圧のリスク上昇に関連していることを示す研究は複数あり、マグネシウムの摂取によって死亡率や血圧が低下する可能性があるのです。

簡単に言うと、マグネシウムはあらゆる細胞と体の器官の正常な機能に不可欠です。したがって、マグネシウムの欠乏は、特に心臓と血管に関連する様々な病気や障害に関係します。全ての研究で完全に結論が一致しているわけではありませんが、マグネシウムが様々な身体活動の回復に役立つことを考えると、すでに冠動脈疾患がある場合は、マグネシウムサプリメントの摂取が望ましいことが多くの研究で明らかになっています。高血圧や心臓発作がある場合、マグネシウムはそれほど有用ではないかもしれませんが、慎重に利用を試してみる価値はあるでしょう。マグネシウムが酸化ストレスや炎症を最小限に抑制する重要な役割を果たすことを考えると、毎日の食事の中でいつ、どのくらいの頻度でマグネシウムを摂取するかを検討することは大切です。マグネシウムはさまざまな食品に含まれる一方で、野菜や果物の生育条件の差異、土壌に含まれるミネラルの質、食品の加工方法によって、実際に人間の身体機能に活用することができるマグネシウムの量は非常に少なくなってしまっています。その中でも特に深刻なことは、研究で明らかにされているように、ほとんどの人が毎日のマグネシウム摂取量が標準推奨値を下回ってしまっていることです。したがって、マグネシウム欠乏状態を防いで慢性疾患のリスクを減らすために、マグネシウムが含まれている高品質の栄養補助食品を摂取することをお勧めします。

ドクタープロフィール

マイアミ大学 Associate Professor John E. Lewis 氏

経歴

  • マイアミ大学医学部精神・行動科学科Associate Professor、同補完統合医療センターDirector of Research、医療ウェルネス学会顧問を務める。
  • テネシー大学ビジネス学科学士(1990年)、テネシー大学運動生理学修士(1992年)、その後、マイアミ大学教育心理学博士号(1995年)を取得。
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