ドクターからの健康アドバイス

掲載1  機能性食品におけるバイオアベイラビリティと吸収の重要性

はじめに

薬を飲んだり、機能性食品や健康食品を摂ったり、また、化粧品やスキンケア製品を使用する際、あなたは「バイオアベイラビリティ」の影響を受けていると言えます。難しそうな言葉ですが、「バイオアベイラビリティ」の基本を理解するために、特別な生化学の専門知識は必要ありません。しかし、「バイオアベイラビリティ」についての簡単な知識があると、薬、機能性食品、健康食品、スキンケア製品などの商品をより適切に選ぶためにきっと役に立つでしょう。

それでは、「バイオアベイラビリティ」とは何でしょうか?「バイオアベイラビリティ」とは、体内に吸収される有効成分の割合や量を指します。 そして、機能性食品、健康食品、薬、スキンケア製品などの「バイオアベイラビリティ」は、エマルジョン、リポソーム、ミセルのような画期的な技術によって上昇します。 また、「バイオアベイラビリティ」は、食生活、病気そしておそらく運動、体重や肥満、飲酒、喫煙、加齢、マイクロバイオーム(腸内等の細菌叢)、そして遺伝的要因など、様々な要素の影響を受けます。通常、私たちは生命を維持するために栄養を必要としていますが、この栄養は体内で消化され、細胞に運ばれる前に必要な過程として、混合ミセルに同化されます。この過程は、現代の科学が示す限りでは、主に小腸で行われています。

人間の生理学と健康に重要なミセル

「ミセル」という言葉を聞いても、「それは何?」と思われるでしょう。恐らく、生化学者でない限り、この言葉を聞いたことがない方がほとんどでしょう。 これから、ミセルの生物学的意義についてお話しします。ミセルは非常に重要な物質で、私たちは、ミセルがあるからこそ、消化器系で脂溶性分子を最終的に吸収することができるのです。

ミセルは脂肪酸、脂肪酸塩、リン脂質、または他の同様の分子によって形成されています。 ミセルは、通常は脂肪、もしくは脂質、その他の物質の外殻で覆われた分子の内側に有効成分を保持します。 ミセルを表現した図1をご覧ください。 私たちが脂溶性物質を摂取した場合、身体の消化器、胃、そして小腸におけるプロセスにおいてミセルを形成し、それによって栄養素が血流に吸収され、体内の細胞で活用されます。 吸収されない場合は尿中に排出され、私たちの身体のために役立てられることはありません。

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水溶性物質と小腸

それでは、「バイオアベイラビリティ」がなぜ重要なのか、そして「バイオアベイラビリティ」がどのように私たちの食事、機能性食品や健康食品の摂取、そして最終的には健康に関与しているかについてご説明します。

  • 食べたり飲んだりしたもの(食事摂取)を通して、私たちは栄養素を自身の身体に供給します。栄養素は、IV(静脈投与) や注射、栄養チューブを通しても供給することができますが、それらは特殊な状況であり、今回は例外と考えましょう。
  • 現在の科学が示す限りでは、栄養素は、主に小腸で摂取されています。
  • 小腸の細胞は、微細な水の膜で覆われています。
  • この水の膜を浸透することができる水溶性物質のみが、直接吸収されます。
  • したがって、糖類、塩分、およびビタミンCのような水溶性の高い物質は「バイオアベイラビリティ」が非常に高いのです。

脂溶性物質

  • 難溶性の物質や、ほとんどの脂溶性物質の「バイオアベイラビリティ」はあまり高くありません。
  • 例えば、クルクミン、βカロチン、ビタミンA、D、E、もしくはK、ルテイン、およびコエンザイムQ10など、重要で必要不可欠な栄養素がこれらに分類されます。
  • 脂溶性物質は腸の水膜に浸透できないため、「前処理」される必要があります。
  • この「前処理」は、胆汁塩を使用したミセルの形成によって、小腸で間接的に行われます。

ミセルの形成

  • 脂肪を消化するためには、ミセルの形成が必要です。
  • ミセルの形成には時間がかかります。
  • したがって、ミセルが形成されるのは、難溶性もしくは脂溶性物質の一部のみです。
  • つまり、難溶性の物質のほとんどは消化されず、身体で活用されないまま排泄されてしまうのです。

低いバイオアベイラビリティ

  • 難溶性物質と脂溶性物質のほとんどはバイオアベイラビリティが低いです。
  • つまり、これらの摂取された物質の大半は、未使用のまま尿中に排出されてしまうのです。
  • さらに、加齢に伴って、脂溶性物質を吸収する身体能力が低下します。

これは、何を意味しているのでしょうか?つまり、どのようなものであれ、ミセル化された成分は健康のために最大限に活用される可能性を秘めています。そのため、私たちの身体にとって大変有益と考えられます。したがって、「ミセル化」は、自然の神秘が造り出した驚くべき機能に基づいており、私たちの健康の向上に寄与しているのです。

 

ドクタープロフィール

マイアミ大学 Associate Professor John E. Lewis 氏

経歴

  • マイアミ大学医学部精神・行動科学科Associate Professor、同補完統合医療センターDirector of Research、医療ウェルネス学会顧問を務める。
  • テネシー大学ビジネス学科学士(1990年)、テネシー大学運動生理学修士(1992年)、その後、マイアミ大学教育心理学博士号(1995年)を取得。
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