ドクターからの健康アドバイス

掲載6  代謝を考えた血液検査の見方

皆さんは、ハートフルクリニックでも実践している血液検査の新しい見方をご存じでしょうか?まだ全国の医療機関では広まっていないのですが、血液検査の新しい読み方があるのです。

例えば、ある意味怖いことですが、症状があるのにある医療機関ではすべての採血検査値が基準値内にある、あるいは少々超えているくらいなので、検査上は異常なしとして言われる方がいますが、その同じ血液検査を私が判定するとすでに初期のメタボリック症候群が始まっていて、将来の糖尿病も危惧され、ビタミンやミネラルの不足があって、現在の症状と一致する場合があるのです。

そんなことあるの?ってお思いでしょうが、実際にあるのです。
なぜそのようになるのか?詳細をこの紙面で語ることはしませんが、その考え方を提示します。

そもそも血液の検査でわかっているものは何でしょうか?
肝臓や腎臓から出る酵素、たんぱく質、ミネラル、糖分、脂質、白血球、赤血球、血小板、リンパ球など、血液中にある成分の量が数値として表されるのが血液検査です。従来血液検査は、腎臓病、肝臓病、貧血、白血病、糖尿病など病気の有無をチェックするツールとしてこれまでの医療では使われていました。

病気を知ることはとても大事なことです。ところが臓器別にチェックしていたその血液検査から、見方を変えたら糖質代謝、タンパク代謝、ミネラル代謝、鉄代謝、脂質代謝、エネルギー代謝、水の代謝、ミトコンドリアの状態などがわかります。

すなわち病気か健康か以前の問題として、より高い健康状態にあるかも把握できるのです。糖質代謝は、たんに血糖値が基準値内にあるかどうかを読み取るのよりも、年齢を考慮し基準値内にあってもその中でも高いか低いかを読み取ることが大切です。

話は極端ですが、20歳と100歳が同じ血糖値で基準値内にある場合、いずれも“正常”ではないのです。血圧やコレステロール、血糖値など体の機能を一定に保つ働きがあり、それをホメオスタシスといいますが、100歳にもなるとホメオスタシスが維持できなくなります。

お仕事をされている方は職場健診の結果を一度確認してみて下さい。5年前の血糖値が1年ごとにどのようになっているか?すべての方がそうではありませんが、比較的多くの方は年々少しずつですが、基準値内で血糖値が上がっているのに気づくでしょう。

私もある職場の産業医をしていますが、5年間の血糖値が基準値内ですが年々上昇してくるのを観察することが少なくありません。体の機能を一定に保つ働きホメオスタシスが年齢とともに機能しなくなります。

それとともに血液検査が変化してきます。20歳と100歳の血糖値が同じ95mg/dlだったら・・・。100歳の人はすごく健康体ですが、20歳の人は血糖値が高い状態です。95は基準値内なのですが・・・。

このように基準値はあくまでも参考値であり代謝のいい年齢とそうでない年齢を考慮して評価しなければならないのです。GOT、GPTと言えば肝臓の機能を示す酵素ですが、この酵素は2つともビタミンB6が結合してできています。

その2つの数値のあり方で、ビタミンB6の不足がわかります。通常の医療機関ではそのような見方はしませんので、ビタミンB6が不足しているかどうかなどと判定はしません。ところがハートフルクリニックではそこを重視します。ビタミンB6の働きを考えたら重要視している意味がよくわかります。

ビタミンB6が直接、間接的に代謝に関係するものとして・・・。

①エネルギー合成、②精神安定、③味覚、④血糖値調節、⑤抗動脈硬化、
⑥抗うつ、⑦抗リウマチ、⑧抗骨粗しょう症、⑨抗心不全、⑩解毒、⑪睡眠

これだけのことに関わるビタミンB6です。その不足があると様々な症状がでます。だるい、眠れない、落ち着かない、イライラ、精神不安、多動症、統合失調症など。B6欠乏は、その補充をする必要があります。

ニンニクや玄米などに含まれるのでそれらを摂取するか、サプリメントで摂取してもらう必要があります。B6単独の不足は通常ないのでB群サプリメントとして摂取してもらっています。

このように見方を変えると同じ血液検査でも代謝が見えてきます。逆に代謝を見据えた血液検査の見方をすることで、現在の病気の発生源あるいは不健康な状態あるいは未病の状態把握ができます。今後このような新しい血液検査の見方が広がることを期待します。

ドクタープロフィール

ハートフルクリニック院長 平良 茂 (たいら しげる)

経歴

  • 平成元年琉球大学医学部卒業 医療法人白寿会理事長、ハートフルクリニック院長、 日本抗加齢医学会専門医、点滴療法研究会ボードメンバー、日本臨床自然療法研究会幹事、日本サプリメント評議会評議員、日本臨床自由診療研究会会長など。
  • 積極的に自由診療を治療に取り入れ多くの臨床例を持つ。
  • その独自の手法を全国の医師に共有すべく、日本臨床自由診療研究会を主宰し啓蒙活動を行っている。

<著書>
「病気にならない体づくり」「末期ガン克服への挑戦」「サプリメント図鑑」など。

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