ドクターからの健康アドバイス

掲載3  アンチエイジングとミトコンドリア

アンチエイジングは抗老化

アンチエイジングとは、老化しないことです。人は年齢とともに加齢しますが、同じ年齢でも老化が進んだ人もいれば、ストップしている人もいます。できるだけ老化の進行を遅くしてガンや病気を逃れることが大切です。

アンチエイジングとは、見た目の若返りだけを目的とするように誤解されていることが多いのですが、アンチエイジングの基本は体の中からの若返りです。

目に見えない細胞レベル、分子レベルでの若返りこそ、アンチエイジングの根本的な課題なのです。細胞の中で、アンチエイジングの中心的な役割を果たしているのがミトコンドリアです。

ミトコンドリアは代謝の交差点

ミトコンドリアは、学校の教科書ではひょうたんのような形をしている細胞内小器官ですが、実際はひものような形をしていて、分裂したり融合したりとかなりダイナミックな動きをしています。

小器官でありながらその役割はとても複雑です。糖質、たんぱく質、脂質の代謝をつかさどり、まるで代謝の交差点のようです。

人間が食べたもの、糖質、たんぱく質、脂質はすべてミトコンドリア内で水素が取り出され、そのエネルギーをATPというエネルギー物質、あるいは熱に変換しています。エネルギー物質なのですぐに分解されて、エネルギーが放出されます。そのため、1日に作られるATPは本人の体重以上と言われています。

人間が、短時間にたくさんの糖質、脂質、たんぱく質を摂取すると、まさしく代謝の交通渋滞が起こります。すなわち処理できない分のエネルギーは、脂質として一時的に蓄えられます。これが続くと、目に見える脂肪となって、私たちの体形を変化させ、おなかやお尻が出てしまいます。

代謝は私たちにとって、生きるために重要な化学変化です。代謝がまわらないと、生命維持ができません。

ATPの働きはエネルギーだけではない

ミトコンドリアがあるおかげで、私たちは日々活動し、考えることもでき、笑うこともでき、ハッピーにもなれます。エネルギー物質として知られるATPですが、実は様々な働きを有することが最新の研究で分かってきました。

味覚と関係することや、GABAという精神安定をもたらすアミノ酸の分泌を促進するなどの働きがあります。

さらには血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌にも関わっています。ATPが不足すると、味覚が低下あるいは変化し、元気がなくだるくなり、精神が不安定になります。血糖値の下がりも悪くなる可能性もあり、糖尿病の懸念もあります。

味覚異常、精神不安の状態って女性は経験があると思います。妊娠の際は、胎児に栄養素がいきわたり母体のATP産生が低下します。

その結果、味覚異常、だるい、つわり、マタニテイーブルーなどの状態となります。妊娠の際こそ、栄養素を多くとりいれて、健康を維持することが胎児の成長にも大切なのです。

ミトコンドリアは細胞内に平均的に2000個ほどあると言われています。卵子にはなんと1万個ものミトコンドリアが存在すると言われており、10か月で3kgもの赤ちゃんを育てるのに多くのATPが必要であることを物語っています。

このようなオールマイテイーなミトコンドリア、加齢とともに機能低下する傾向にあるので、ぜひとも活性化させるべきです。

ミトコンドリアを活性化するには?

さて、ミトコンドリアを活性化させるには、まず栄養素です。ビタミンB群を中心としたビタミン、ミトコンドリアを酸化の害から守る抗酸化ビタミンと言われる代表的なビタミンA、C、E、その他にαリポ酸、L-カルニチン、コエンザイムQ10、マグネシウム、鉄、カルシウムなどのミネラルも必要です。

ミトコンドリアの働きを阻害するカロリー過剰、水銀、鉛などの有害金属、炎症、トランス脂肪酸などを避けることです。

野菜や果物食などからミトコンドリアを守るSOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素を増やすことです。カロリー制限や運動もミトコンドリアを活性化します。

以前から注目され最近取り上げられているミトコンドリア活性化素材としては、レスベラトロールがあります。

レスベラトロールは、ブドウの皮やピーナッツの薄皮に存在するポリフェノールの一種です。微量ながら赤ワインにも含まれています。身近なものでは、ウーロン茶ポリフェノール、茶カテキンもミトコンドリア活性化素材として知られています。

長寿の秘訣

体に悪いものを避け、いいものを摂り、いいライフスタイルを続けること、それがミトコンドリアを活性化して、長生きをする秘訣です。人間ドック、定期健診などで、体の点検を行い、必要に応じて医師のアドバイスを受けメンテナンスをして下さい。日ごろから、摂生に努めることです。

ドクタープロフィール

ハートフルクリニック院長 平良 茂 (たいら しげる)

経歴

  • 平成元年琉球大学医学部卒業 医療法人白寿会理事長、ハートフルクリニック院長、 日本抗加齢医学会専門医、点滴療法研究会ボードメンバー、日本臨床自然療法研究会幹事、日本サプリメント評議会評議員、日本臨床自由診療研究会会長など。
  • 積極的に自由診療を治療に取り入れ多くの臨床例を持つ。
  • その独自の手法を全国の医師に共有すべく、日本臨床自由診療研究会を主宰し啓蒙活動を行っている。

<著書>
「病気にならない体づくり」「末期ガン克服への挑戦」「サプリメント図鑑」など。

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