掲載4 生菌でも死菌でも効果は変わらない
殺菌酸乳の保健効果
発酵乳に含まれる生きた乳酸菌の作用を除くため、マウスに殺菌酸乳を用い、1群90匹のマウスを、普通飼料投与群、牛乳14%添加飼料投与群、殺菌酸乳14%添加飼料投与群の3群に分け、離乳期から一生にわたって試験飼料を与えて寿命をしらべました。その結果、普通飼料群、牛乳投与群がそれぞれ平均寿命84.9週と84.4週で変わらなかったのに対し、殺菌酸乳投与群では平均寿命は約7週間(8%)伸び、91.8週という結果が得られました(図)。なお、この実験に使用した殺菌酸乳はL.helveticus、Saccharomyces cervisiae から成るスターターで長時間発酵・熟成した殺菌酸乳です。この成績から、殺菌酸乳の中に含まれる乳酸菌の発酵生成物か、あるいは乳酸菌の菌体成分が、延命に何らか有効に働いているものと推測されました。また、この実験で各群の腸内菌叢を調べた結果、殺菌酸乳群では他の2群よりビフィズス菌の菌数が常に約10倍高く、このことも何らか延命に影響を及ぼしていると考えられました。
加熱殺菌乳酸菌のビフィズス菌増殖効果
Enterococcus faecalis EC-12の加熱殺菌乳酸菌顆粒(5×1012/g 殺菌菌体を含有)を11名のボランティアに600mg/日2カ月間摂取させ、体調および排便に関する調査を行いました。その結果11名中9名が排便状態の改善が認められました。そこでこの殺菌乳酸菌の効果を腸内菌叢や腸内代謝産物の面から検討するため、8名のボランティアに200mg/日のEC-12殺菌乳酸菌を2週間毎日摂取させ整腸効果について調べたところ、腸内菌叢のビフィズス菌の有意な増加とウェルシュ菌の菌数と検出率の減少が観察されました。これらの変化はヒトヘオリゴ糖を投与したときの変化と類似していました。また、糞便中の酢酸、プロピオン酸、および乳酸含量が摂取前に比較して有意に増加し、アンモニア、硫化物、フェノール、インドールおよびクレゾールのなどの腐敗産物の有意な減少が観察されました。
オリゴ糖を摂取した場合、大腸に常在しているビフィズス菌がオリゴ糖を資化し、その結果産生された短鎖脂肪酸によって大腸の蠕動運動が活発になり、排便が促進されます。このとき大腸の常在しているビフィズス菌のレベルは1010/gレベルであり、一方、1010/g以上の生きた乳酸菌やビフィズス菌を摂取したときの糞便から回収されました各々の細菌数は106~108個/gであって、腸内の常在ビフィズス菌数の1010個/gに比較し1%以下であることから、生きた乳酸菌やビフィズス菌を摂取しても、これらが腸内で増殖することは難しいことがわかりました。また、本試験で使用したEC-12は殺菌乳酸菌であるため、腸内でこの菌による有機酸の産生はありません。このような観点から、外来の生菌の乳酸菌やビフィズス菌、そして殺菌乳酸菌を摂取したときにみられた整腸効果は、腸管免疫機構を介した間接的な作用によるものと考えられます。