ドクターからの健康アドバイス

掲載6  歯周病予防と今後

これまでに、歯周病に関わる5回のコラムを書かせていただきました。今回は、歯周病の治療、そして健常な状態や歯周病治療が終了し良好な状態を維持していく、メインテナンスについてお話します。

 

1. 歯ブラシの使用状況

前回のコラムで、自分自身でできる歯周病予防で一番効果的なのは、ブラッシングとお話ししました。では、皆さんの歯磨きの頻度はどのような状態なのでしょうか。

 

図. 歯ブラシの使用状況の推移(昭和44年(1969年)~令和4年(2022年))
「令和4年 歯科疾患実態調査結果(厚生労働省)」より

 
これは、1歳以上の人を対象とした歯を磨く頻度の昭和から令和にかけての年代別の総数のグラフです。1歳以上の人では、毎日歯をみがく者の割合は97.4%です。毎日2回以上、3回以上歯を磨く人の割合は増加を続けており、令和4年では79.2%でした。これはとても素晴らしいことで、皆さんの歯周病やブラッシングの意識が高くなっているといえます。しかし、2回しか磨かない人が多く、3回以上磨く人は3割しかいないのが現状です。3回食事をすれば3回磨く必要があります。

 

2. 歯周病の治療

大きく分けて、歯周基本治療、歯周外科治療、メインテナンスの3つからなります。
歯周基本治療とはプラークコントロールを主体とするすべての患者さんに行う基本的な治療です。具体的に、歯磨き指導や口呼吸から鼻呼吸に修正したりして、プラークが付きにくい口腔内環境を意識して、モチベーションをアップさせることが重要です。
次に、歯周外科治療ですが歯周基本治療だけでは改善することのできない中等度から重度の歯周病の患者さんに行う治療です。具体的に、深い歯周ポケットのある患者さんの歯肉を切り、剥離した状態で歯の歯石や細菌感染物を除去していきます。これにより、炎症が収まり、歯周ポケットも改善していきます。
最後に、メインテナンスですが、主に歯周病の進行および再発防止をするのが目的です。次で詳しく説明していきます。

 

3. メインテナンス

メインテナンスとは、歯周病治療の1つであり、歯周基本治療や歯周外科治療後の歯周組織の状態を、維持、管理するためにおこなわれます。1~3か月後、状態がいい方で半年後に1回程度と、患者さんの状態により期間を決定します。ここで重要なのが、治療ではありますが、あくまで患者さん主体のセルフケアができているかのチェックになるので、ご自身のブラッシング等でプラークコントロールが良好な状態を保つ必要があります。

 

4. まとめ

ブラッシングは、歯周病予防の最前線の治療です。しかしブラッシングの回数や時間が少ないと、磨いているつもりでも磨けていないわけです。回数は毎食後、時間は最低3分以上は磨きましょう。それだけではなく補助器具もしっかり活用しましょう。
また、ブラッシング時に歯肉からの出血がある、歯肉が腫れて痛い、歯が少しぐらぐらする、口臭を指摘されたなどの症状がある場合は速やかに歯科医院を受診しましょう。早期発見、早期治療ならまだ間に合います。そして、なるべく良好な状態でメインテナンスに移行し、モチベーションを維持し、セルフケアを積極的にしていきましょう。
最後に、このコラムを通して皆さんが歯周病についての知識を深めることができたのであれば幸いです。最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 
[参考文献]
村上伸也、申基喆、齋藤淳、山田聡、編:臨床歯周病学 第3版、医歯薬出版株式会社、2020

ドクタープロフィール

春日部 堀池デンタルオフィス 院長 堀池 将司 (ほりいけ まさし)

経歴

  • 明海大学歯学部 卒業。
  • 明海大学歯学部 研修医 修了の後、明海大学 保存修復学講座(歯内療法科)入局。
  • 埼玉県内の歯科医院および千住大橋歯科(東京都)を経て、現職。
  • 日本歯内療法学会 専門医、日本歯科保存学会 歯科保存治療 認定医、臨床歯科麻酔管理 指導医。
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