ドクターからの健康アドバイス

掲載1  歯周病とは

皆さんは、歯周病と聞いてどんな事を思い浮かべますか。中高年の方がなる病気、歯がぐらぐらする、歯科医院で歯周病といわれしっかり歯磨きをするように指導された...など色々あると思います。しかし、どれも半分正解で半分不正解です。その説明をする前に歯周病とはどのような病気なのか、説明していきたいと思います。

 

1. 歯周病(歯肉炎・歯周炎)とは

歯周病とは一言でいうと、歯と歯ぐきの隙間に細菌が付着し続け、それにより歯周組織が破壊されていく病気です。また、日々の生活習慣がこの病気になる危険性を高めることから、生活習慣病のひとつに数えられています。
歯周病は歯肉炎・歯周炎の総称で、歯肉炎は歯周病の初期段階のことをいいます。以前は、歯周病の事を歯槽膿漏と呼んでいましたが、歯槽膿漏とは歯周病が進行し、歯ぐきが腫れ、膿が出る状態の事を言うため、現在では総称して歯周病と呼ぶようになっています。
虫歯と歯周病の違いは、虫歯は、歯への細菌感染による破壊ですが、歯周病は歯周組織への細菌感染による破壊です。
では、歯周組織とはどういったものがあるのでしょうか。

 

2. 歯周組織とは

私たちの歯の周りには、歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨と呼ばれる歯周組織があります。では、どうやってその歯周組織が破壊されていくのでしょうか。

 

3. 歯周病の進行過程

通常、正常な場合、歯と歯ぐきの間には1~2mm程度のすき間があります。これを歯肉溝と呼びます。この隙間に、細菌(歯垢またはプラーク)が付着した状態を放置すると、歯ぐきに炎症が起き、2~3mmのすき間ができます。隙間を仮性ポケットと呼び、この状態を歯肉炎と呼びます。その後も、歯と歯ぐきの間に細菌が付着した状態が続くと、歯ぐきの炎症がひどくなり、歯周病原菌が歯周組織に侵入し、歯槽骨や歯根膜も破壊されはじめます。そしてこの歯と歯ぐきの隙間を歯周ポケットと呼び、歯周ポケットが3~4mmの状態を軽度歯周病と呼びます。そして炎症がさらに拡大し、歯槽骨も半分近くまで破壊が進み、歯がぐらつきはじめます。歯周ポケットが4~5mmの状態が中度歯周病です。最後に、歯槽骨が半分以上破壊され、歯はぐらぐらになり、歯周ポケットは6mm以上になります。この状態が重度歯周病です。

 

4. 歯周病の年齢別有病率

歯周病の有病率について年代別に見ると、50代から70代にかけての有病率が高くなっています。高齢になるにしたがって、症状が進行した人の割合が増加しているともとらえられます。そして、対象となる歯を喪失していく70代ごろまで、その傾向は続きます。また、20代後半から30代後半にかけて歯周ポケットが4mm以上6mm未満ある人の割合は、3割を超えていて3.3人に1人となっています。若年者でも歯周病に罹患している人はかなり多いという結果になっています。

 

表  歯周ポケットを有する者の割合、年齢階級別

「令和4年 歯科疾患実態調査結果(厚生労働省)」より

 

5. まとめ

歯周病はある日突然、歯周病になるわけではなく、徐々に進行する病気です。そしてそれを放置したままにすると、急に歯ぐきが腫れたり出血したり、痛みがでるのです。初期段階でしっかり細菌を除去すれば症状は進行せず、現状維持が望めます。ですが、この段階では腫れや痛みがほとんどないため、症状に気がつかなかったり、歯科医院で指摘されてもあまり重要視せず、そのまま放置したりする方が多いように思います。しかし、放っておけば症状は年齢とともにどんどん進んで取り返しのつかない状態になります。歯周病が進行しすぎると、歯磨きだけでは元通りの健康な歯周組織にはほぼ戻りません。だからこそ、そうなる前に口腔内の細菌の数を減らし、歯と歯ぐきの間の細菌を取り除き付着させないようにし、歯周病を進行させないことが大切です。

ドクタープロフィール

春日部 堀池デンタルオフィス 院長 堀池 将司 (ほりいけ まさし)

経歴

  • 明海大学歯学部 卒業。
  • 明海大学歯学部 研修医 修了の後、明海大学 保存修復学講座(歯内療法科)入局。
  • 埼玉県内の歯科医院および千住大橋歯科(東京都)を経て、現職。
  • 日本歯内療法学会 専門医、日本歯科保存学会 歯科保存治療 認定医、臨床歯科麻酔管理 指導医。
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