ドクターからの健康アドバイス

掲載2  歯周病と原因

前回のコラムで、歯周病は歯と歯肉に細菌が付着し、歯周組織が破壊される病気とお話しましたが、果たして細菌だけが歯周病の原因でしょうか。今回は歯周病の原因について詳しく説明したいと思います。
ここで一つ質問です。皆さんがよく耳にする歯石は、歯周病の原因になるのでしょうか。まず歯周病の原因となるものには何があるかみていきましょう。

 

1. 多因子性疾患としての性質

口腔内には500種類、1,000億個以上もの細菌がいるといわれています。歯周病はある特定のプラーク(細菌)が主な原因となって引き起こされる感染症です。これが直接的、間接的に歯周組織破壊を引き起こします。しかし、細菌がいれば必ず発症するわけではなく、私たちの防御機構である免疫も大きく関わっています。
コロナが流行した時、不顕性感染というのを耳にしたことがあるかもしれません。ウイルスや細菌に感染すれば必ず発症するわけではなく、症状がないことをいいます。口腔内も同じく、自己の免疫が細菌より優位であったり、均衡が保てていれば発症しませんが、細菌が優位になると歯周組織破壊が起こります。例えば、体調不良により自己の免疫が低下すると、細菌感染を許してしまい、歯周病を発症、進行させることがあります。
このように、歯周病は様々なリスクファクターが複雑に影響しあって発症と進行を促す多因子性疾患であり、その性質を理解する必要があります。

 

2. 多因子性疾患の分類

では、多因子性疾患にはなにがあるか詳細に分類し説明していきます。

1)細菌因子
歯周病原細菌

2)環境因子
喫煙、ストレス、偏食、肥満、やせすぎ、薬物依存

3)宿主因子
免疫応答、炎症反応、年齢、性別、全身疾患、遺伝的要因

4)その他の因子
歯石*、口呼吸、口腔内の不適な詰め物や被せ物、歯並び
*歯石とは、死んだ細菌の塊と唾液のカルシウム成分が石灰化したものです。歯石自体には病原性はありませんが、歯石には無数の穴が開いていて、細菌が付着する足場となってしまうため、プラークリテンションファクターと呼ばれる細菌感染を誘発する因子の一つとされています。

 
この4つの因子が重なり合うと、歯周病発症リスクが最も高く危険とされています。
 

 

図.  歯周病の発生環境

 

3. まとめ

私たちは、常に細菌と密接に関わり共存しています。しかし、均衡が崩れると病気を発症してしまいます。そのため、細菌数を減らしたり、細菌に侵されないように免疫力を高め、日ごろから健康な体作りを行う必要があります。

 
[参考文献]
村上伸也、申基喆、齋藤淳、山田聡、編:臨床歯周病学 第3版、医歯薬出版株式会社、2020

ドクタープロフィール

春日部 堀池デンタルオフィス 院長 堀池 将司 (ほりいけ まさし)

経歴

  • 明海大学歯学部 卒業。
  • 明海大学歯学部 研修医 修了の後、明海大学 保存修復学講座(歯内療法科)入局。
  • 埼玉県内の歯科医院および千住大橋歯科(東京都)を経て、現職。
  • 日本歯内療法学会 専門医、日本歯科保存学会 歯科保存治療 認定医、臨床歯科麻酔管理 指導医。
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