掲載3 病気は正気と病邪のせめぎ合い
東洋医学では体にとって有害なものを「邪(じゃ)」あるいは「病邪(びょうじゃ)」といい、生体の抵抗力や防御能を「正気(せいき)」といいます。邪が正気に勝ったときに病気が発症すると考えており、病気とは、体内における正気と病邪のせめぎ合いの状況といえます。東洋医学では、病気に治療においては、病邪を抑えると同時に、正気(抵抗力や治癒力)を高めることを重視しています。
感染症においては、細菌やウイルスなどの病原菌が邪になります。発がん過程における邪とは、発がん物質やフリーラジカルやストレスや炎症の存在であり、さらに、生体内の諸機能の異常によって生じる機能失調(気・血・水の量的異常や巡りの停滞)や心身調和の異常などが相当します。
正気とは、生体内の全ての抗病物質を包含する漢方概念であり、現代医学的には、防御機構・恒常性維持機構・免疫監視機構・修復システムなどを包括する生体の自然治癒力そのものです。免疫システムや、活性酸素の害を防ぐ抗酸化力や、DNA変異を修復するDNA修復システムなども、漢方医学でいうところの「正気」の作用と基本的に一致しています。
がん予防対策において、唯物主義の西洋医学では、発がん物質や炎症など目に見える発がん要因のみをターゲットにしていますが、体の抵抗力を低下させる原因や機能失調に対応していない点に改善の余地があります。
がん治療においては、西洋医学では直接的な病邪である「がん細胞」だけをターゲットにし、フリーラジカルやストレスといった間接的な病邪や、自然治癒力や生体防御能といった正気への対処を軽視している点が欠点であると言えます。
がんに対する西洋医学の標準的治療である手術や抗がん剤や放射線治療は、病邪であるがん細胞を直接攻撃することが目標であり、そのために体の正気(抵抗力や治癒力)を犠牲にしても構わないと考えている点に問題があります。
がん治療に対する東洋医学の対策は、発がん促進因子や生体の機能失調といった邪を取り除く治療法に加えて、生体機能を高めて正気を充実させる治療法を同時に考慮している点に特徴と有用性があると言えます。
がんの予防や治療における健康食品の利用においても、病邪を抑え、正気を高めるという東洋医学の考え方を応用することが大切です。
フリーラジカルを除去する抗酸化物質や、免疫力や体力を高める機能性食品が、がんの予防や治療において有用である理由は、東洋医学の病邪と正気の考え方からは疑問なく理解できます。