ドクターからの健康アドバイス

掲載4  健康食品に頼る現状

健康食品を利用する目的

前回は、わが国が世界第一位の健康食品消費国(国民一人当たりの消費額)であることをご紹介しました。ちなみに、わが国で最も多く販売されている健康食品は複合ビタミンだそうです。

健康食品とサプリメントはほぼ同様の意味で使われていますが、食生活で不足する食品成分または通常の食生活に追加して摂取することが健康の維持や増進に役立つと期待されている食品のことです。

したがって、多くの方が健康食品を利用するには主に3つの目的があります。それは、1)栄養を補助すること、2)病気を予防すること、3)病気の治療を補助することです。

まず、栄養の補助ですが、利用者が自らの食生活に偏りがあることに気づいて、それを補おうとすることです。次に、病気の予防では、日頃から健康であるとされている人が病気にかからないように健康食品を利用することです。

近年、未病という言葉が使われ始めています。これは、病気にかからないように、積極的に予防を行うことです。したがって、未病の一環で健康食品が利用されるのです。

さらに、病気と診断されていなくても、体が冷える、肩がこるといった何らかの自覚症状を有することがあります。これらの症状を軽快させるためにも健康食品が利用されます。

さて、病気の治療についてですが、医療機関を受診して治療を受けている人の中にも、健康食品が併用されていることがあります。例えば、骨折などの怪我や脳血管障害などで寝たきりになると、褥創(とこずれ)が生じます。褥創の予防には体位変換を頻回に行う対策がとられていますが、さらに亜鉛のサプリメントが利用されることもあります。

また、がんを患っている人の中には、食欲が落ちている人がいます。このような患者さんには、食欲を増進させるサプリメントや、精神安定を目的としてリラックス効果があるハーブを含有するサプリメントを摂ってもらうこともあります。
このように、健康食品は、いまや日常生活から切り離すことができない存在なのです。

健康食品を利用するうえで気をつけること

気をつけなくてはならないことがあります。健康食品はすべての症状や病気に有効というわけではありません。同じ商品でも人によって効果に違いが出ることや、予期せぬ副作用が出る可能性もあります。したがって、まず、使用前によく情報を収集し、効果について確認して下さい。

さらに、利用してから自覚症状が悪化した場合は、直ちに中止するべきです。また、一定期間利用しても予想される効果が現れない場合には、いったん利用を中止することも検討して下さい。

いまや健康管理も自己責任の時代です。前回までご紹介した方法で健康食品を正確に選択して下さい。そして、心配なことがあればホームドクターに相談してはいかがでしょうか。

最後に、最も基本的で重要なことを忘れてはいけません。からだに必要な栄養素は毎日の食事からバランスよく摂るべきです。多くの食材を摂取することで味を楽しむことができ、食欲を満たすことができます。健康食品に目を向けることは結構ですが、日常の食生活や運動習慣をおろそかにしないで下さい。

ドクタープロフィール

滋賀医科大学 教授 一杉 正仁 (ひとすぎ まさひと)

経歴

  • 1994年、東京慈恵会医大卒。
  • 川崎市立川崎病院勤務を経て東京慈恵会医大大学院修了、同大助手、獨協医科大学法医学講座准教授を経て、現職。
  • 国立大学法人滋賀医科大学医学部社会医学講座 法医学部門教授。医師、医学博士。
  • 日本法医学会法医認定医。日本法医学会評議員。
  • 専門は血栓症突然死の病態解析、バイオレオロジー、予防医学。
  • 国際交通医学会東アジア地区担当理事、日本バイオレオロジー学会理事、日本交通科学会理事、日本医学英語教育学会副理事長などを務める。
  • 2010年、International Health Professional of the Year, 2010 受賞。
  • いわゆるエコノミークラス症候群の原因究明、納豆による血栓症予防についての研究で広く知られており、代表著書に「ナットウプロテアーゼ」などがある。
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