植物性タンパク質の摂取は長生きの秘訣?

植物性タンパク質の摂取は長生きの秘訣?

植物性タンパク質の摂取は長生きの秘訣?

Organic Raw Soy Tofu肉や卵などの動物性タンパク質よりも、大豆などの植物性タンパク質を多く摂取した方が健康には望ましいことは以前から指摘されていますが、健康だけでなく環境にも優しいようです。今回は、食生活の中で、動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えていくことのメリットについて、健康と環境の側面から米国のレポートをご紹介します。

朝食には卵の代わりに豆腐を食べ、料理には牛肉ではなく豆を使うようにすれば長生きできるかもしれない―。そんな研究結果を、米国立がん研究所(NCI)のJiaqi Huang氏らが「JAMA Internal Medicine」2020年7月13日オンライン版に発表しました。普段の食事中の動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えると、全死亡リスクが低下する可能性があることが明らかになりました。

Huang氏らは今回、1995年から2011年にかけて、食事パターンと健康に関する長期的な調査に参加した米国人男性23万7,036人と女性17万9,068人のデータを分析しました。対象者の食事中に含まれるタンパク質の割合は、平均で約15%であり、そのうち40%は植物性、残る60%は動物性でした。16年間の追跡調査の結果、男女ともに、植物性タンパク質の摂取が全死亡リスクの低下と関連する可能性が示されました。1,000kcal当たりのタンパク質の摂取量を、動物性タンパク質から植物性タンパク質に10グラム置き換えるごとに、全死亡リスクが男性では12%、女性では14%低下したということです。また、動物性タンパク質から摂取するエネルギーのうちの3%を植物性タンパク質に置き換えると、全死亡リスクが男女ともに10%低下し、心血管疾患による死亡リスクが、男性では11%、女性では12%低下することが明らかになりました。ただし、Huang氏は、卵や赤肉の摂取を制限する際には、健康的な代替品に置き換えることに留意すべきだとしています。

Academy of Nutrition and Dietetics会長のConnie Diekman氏は、「植物性タンパク質の摂取が長生きにつながる理由にはさまざまなことが考えられる」と述べた上で、「肉のタンパク質には飽和脂肪やコレステロール、塩分などが多く含まれる一方で、植物性タンパク質には食物繊維や抗酸化物質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれている」と指摘しています。また、Albanes氏らは、動物性タンパク質が体内で分解された後のアミノ酸は、動脈硬化や炎症を促している可能性を指摘。さらに、動物性タンパク質は、腸内細菌叢に影響を与える可能性があることも考えられると述べています。

健康的な「肉の代替品」は地球環境にも優しい?

また、肉を豆腐やそば粉、野菜などに置き換える食事は、十分な栄養が取れるだけではなく、地球環境にも優しい可能性があることが、米バード大学で都市環境学を専門とするGidon Eshel氏らの研究から明らかになりました。この研究結果の詳細は「Scientific Reports」2019年8月8日オンライン版に発表されました。

これまで数多くの研究で、ベジタリアン食が広がると家畜を飼うために必要な土地が縮小され、公害やエネルギー使用量が減り、地球温暖化の一因である温室効果ガスの排出量の削減につながると報告されています。Eshel氏らは「肉を植物性食品に置き換えることが環境に良いだけでなく、栄養面でも肉の代わりになることを明示する必要があった」と説明しています。Eshel氏らは今回、コンピュータモデルを用いて、米国の典型的な食事に含まれる肉の全て、あるいはその一部を植物性食品に置き換えた場合の影響について検討しました。

また、Eshel氏らは、これまでに発表されている研究データに基づき、それぞれの食事パターンを構成する食品の生産に必要な農耕地の広さや温室効果ガスの排出量、水や公害の原因となる窒素肥料の必要量を推定しました。その結果、全ての米国人が肉の代わりに植物性食品を摂取すれば、牧草地の必要性はなくなり、農耕地や窒素肥料の必要量、さらに温室効果ガスの排出量が35~50%削減できると推定されました。Eshel氏らによると、同氏は「肉の代替品を中心とした食事は、健康面でも典型的な米国人の食事よりもはるかに優れていることが、科学的にも明確に示されている」と指摘しています。

しかし、この研究には関与していない米国栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)のスポークスパーソンを務めるVandana Sheth氏は、コストや調理時間、おいしさなどの面から、肉を植物性食品で置き換えることは難しいと感じる人も多いだろうと指摘。「食事内容は急激に変える必要はない。例えば、月曜日は肉を食べない日にするなど、徐々に肉を減らしていくと良い」と助言しています。

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