筋肉量を維持するために継続的な運動を

筋肉量を維持するために継続的な運動を

筋肉量を維持するために継続的な運動を

WHR202004「運動は無理なく継続することが大切」と言われますが、運動を継続することは健康にどのように影響を与えるのでしょうか。また、あまり無理をすると継続することが難しくなってしまいますが、手軽に継続するためにはどのような方法が考えられるのでしょうか。英国と日本のレポートからご紹介します。

 

座りがちな生活で筋肉量が減少

わずか2週間、身体活動を控えて座りがちな生活を送るだけでも、健康な若者が筋肉を失い、内臓脂肪がつき始めるとの研究結果が報告されました。結果的には心疾患や2型糖尿病のリスクが高まり、早期死亡に至る可能性があるということです。この研究結果はポルトガルで開催された第24回欧州肥満会議(ECO 2017)で2017年5月17日に発表されました。研究を率いた英リバプール大学加齢・慢性疾患研究所のKelly Bowden-Davies氏は、「本研究で注意すべき点は、被験者が健康なボランティアであったことだ。被験者は何らかの疾患を持っているわけではなく、過体重でも2型糖尿病リスクがあるわけでもなかった」と話しています。

同氏らは健康なボランティア28人(平均年齢25歳)を対象として研究を行いました。被験者は適正体重で、1日平均1万歩歩いており、研究開始時に脂肪量、筋肉量、ミトコンドリア機能、体力測定を含む健康診断を受けました。被験者には身体活動を追跡するアームバンドを装着させ、2週間にわたり身体活動を減らしてもらいました。階段の代わりにエレベーターを使い、歩く代わりにバスを使い、普段よりも家で過ごすようにしたところ、1日の歩行量は80%以上減少し、約1,500歩となりました。なお、同期間中に食事の変化がないことを確認するため、食事内容も記録してもらいました。

2週間後、被験者の除脂肪筋肉量は1ポンド(0.45kg)近く減少し、体脂肪量が増加していました。体脂肪は特に腹部で増加する傾向がありました。また、体力が急激に低下し、以前と同じ距離・速さで走れなくなり、ミトコンドリア機能(細胞がエネルギーを調節する能力の指標)も低下していました。Bowden-Davies氏は、「幸いなことに、こうした不活発な生活習慣による悪影響は、再び活発な生活を送れば2週間以内に回復できるようであった。ただし、週2回ジムに行くのではなく、1日中立ったり歩いたりと活動的である必要がある」と述べています。

ラジオ体操で筋肉量が維持される――糖尿病患者で実証

それでは、手軽に筋肉量を維持するためにはどのような方法があるのでしょうか。筋肉量を維持するためには、高強度の筋力トレーニングではなく、ラジオ体操でも有効なようです。この報告は「BMJ Open Diabetes Research & Care」2020年2月24日オンライン版に掲載されました。2週間の入院中にラジオ体操をしなかった人は除脂肪体重(筋肉や骨の量を表す指標)が低下したのに対し、1日2回ラジオ体操をした人は除脂肪体重が減らず、上肢や体幹の筋肉量の増加傾向も認められたということです。

京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の岡村拓郎氏、橋本善隆氏らの研究グループは、同大学附属病院の糖尿病教育入院患者42人のうち15人に対し、朝食前と夕食後の1日2回、ベッドサイドでのラジオ体操を指示。入院中(14日間)の体重と体組成の変化を後ろ向きに検討しました。ラジオ体操には第1と第2がありますが、本検討では筋力強化に向いている第2を用いました。ラジオ体操の所要時間は1回3分で、それ以外に入院患者全員に1日60分の有酸素運動(主に速歩)を指導し、食事は病院から提供する食事のみで、間食やサプリメントの摂取を禁止しました。

その結果、除脂肪体重と骨格筋量指数(SMI)は、ラジオ体操をした群では有意な変化がなかったのに対し、ラジオ体操をしなかった群では有意に減少し、SMIに関してはその変化量に群間の有意差が認められました。またラジオ体操をした群でSMIが低下したのは46.7%だったのに対し、ラジオ体操をしなかった群では85.2%に上りました。さらに上肢や体幹の筋肉量はラジオ体操をしなかった群では有意に減少したのに対し、ラジオ体操をした群では有意でないながら増加傾向が見られ、入院前後の変化量で比較すると有意な群間差が認められました。下肢の筋肉量は、ラジオ体操をしなかった群では有意に減少し、ラジオ体操をした群でも減少傾向が見られましたが、変化量は有意ではありませんでした。

なお、ラジオ体操に起因する低血糖、転倒、筋肉痛などの有害事象は見られませんでした。これらの結果を踏まえ研究グループの木村智紀氏、福井道明氏らは「2週間の教育入院中に糖尿病患者の筋肉量が減少することが改めて示された。これに対し、年齢に関係なく容易に行える運動介入が必要であり、ラジオ体操がその有効な手段となり得る」と述べています。

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