歯の健康と全身の健康

歯の健康と全身の健康

歯の健康と全身の健康

4.1.1近年、歯の健康が全身の健康に影響することが様々な観点から指摘されています。それでは大切な歯を守るためにはどのようなことに気を付けると良いのでしょうか。今回は、日本と米国の研究を中心に、歯の健康についてのレポートをご紹介します。

 

「喫煙、糖尿病、骨粗鬆症」で歯の喪失リスク増

日本人の高齢者では、喫煙習慣と糖尿病、骨粗鬆症が歯を喪失するリスク因子である可能性があると、敦賀市立看護大学(福井県)の中堀伸枝氏と富山大学教授の関根道和氏らの研究グループが「BMC Public Health」2019年6月4日オンライン版に発表しました。

歯周病などの口腔衛生と食生活や喫煙などの生活習慣は、高齢者が歯を喪失するリスクを高めることが報告されています。同調査は、同県在住の65歳以上の高齢者1,537人を無作為に抽出し、同意が得られた1,303人(回答率84.8%)を対象としたものです。今回の研究では、歯を完全に喪失した275人と残存歯がある898人(対照群)の計1,173人を対象に分析しました。年齢や性などで調整して解析した結果、喫煙習慣がある人や糖尿病、骨粗鬆症がある人では、歯の喪失リスクが高いことが分かりました。関根氏らによれば、喫煙習慣や糖尿病があると、口腔内の免疫力が低下して歯周病などの原因になることや、骨粗鬆症になると骨の強度が低下して歯の喪失につながりやすいといった理由が考えられるということです。

関根氏らは「歯の喪失は栄養不良の原因となり、高齢者のフレイル(虚弱)やQOL(生活の質)の低下につながりやすい。そのため、健康に老いるためには、小児期から高齢期にかけて、生涯にわたる総合的な対策が重要になる」と述べています。

歯磨きで心臓を健康に

健康な歯肉は心臓に良い――こんな研究結果が、「Journal of the American Heart Association」オンライン版に20.13年10月28日に掲載されました。米コロンビア大学メールマン公衆衛生学部疫学准教授のMoise Desvarieux氏らの研究の結果、歯肉の健康が改善すると、動脈でのプラーク形成が遅くなることが明らかになりました。この動脈の狭窄はアテローム性動脈硬化症と呼ばれ、心疾患、脳卒中、死亡の主要な危険因子と言われます。今回の研究の被験者は、歯肉の健康と頸動脈のプラーク形成を評価する検査を受けた成人420人。約3年間の追跡調査で、歯肉の健康の改善と歯肉感染症(歯周病)に関連する細菌の割合の減少は、頸動脈でのプラーク蓄積速度の低下と関連していることが明らかになりました

Desvarieux氏は、「アテローム性動脈硬化症は、歯周病と歯肉の細菌プロファイルの両方と並行して進行するため、この結果は重要であり、歯周の細菌プロファイルの修正が両疾患の予防または遅延に重要な役割を果たす可能性を示す最も直接的なエビデンス(科学的根拠)である」と述べています。動物試験では、歯周病関連の細菌がアテローム性動脈硬化症に関連する炎症を引き起こす可能性があることが示唆されています。定期的な歯科受診と日々のオーラルケアにより、歯周病リスクが低下する可能性があると言えます。

歯ぎしりの対処法

また、歯の詰め物が悪くなったり、歯の損傷、場合によっては睡眠の質を低下させるなど、様々な観点から健康に良くないと言われる歯ぎしり。米国では4,000万人もの人に歯ぎしりがみられると言われます。また、重度の歯ぎしりは顎関節異常(原因不明の朝の頭痛や顔面の痛み)の原因にもなると指摘されています。

歯ぎしりにはさまざまな心理的・身体的原因があります。例えば、ストレス、歯並びの悪さに対する身体の反応、重症の脳外傷の合併症、まれに一部の抗うつ薬の副作用などがあります。米コロンビア大学歯科・口腔外科学部によると、ストレスによる歯ぎしりがある場合、専門家のカウンセリングを受けたり、リラックス法を用いたりすることによって問題を予防できる可能性があるということです。また、アルコールやカフェインを控えるようにするとよいでしょう。歯の損傷を予防する対策がさらに必要である場合、歯の擦り合わせを防止するバイトプレートやバイトスプリントと呼ばれる歯科用品を医師や歯科医から勧められることもあります。

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