前向きな心理や幸福感と健康

前向きな心理や幸福感と健康

前向きな心理や幸福感と健康

前向きな心理や社会とのつながりが糖尿病腎症リスクに影響

4.1.1幸福感が高く、心理的ストレスをあまり感じず、社会とのつながりも強いことは、2型糖尿病患者において細小血管合併症である糖尿病腎症のリスク低下と関連する可能性のあることが、大阪大学大学院内分泌・代謝内科の片上直人氏と二宮浩世氏らの研究グループによる検討でわかりました。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」オンライン版に2017年2月8日に掲載されました。

研究グループは、同大学病院に通院中の30~79歳の2型糖尿病患者343人(平均年齢は65.1歳、男性が約56%)を対象として、対象患者を糖尿病腎症の有無で分けて心理・社会的因子による影響を調べました。

評価した因子は、「幸福感」「楽観性」「笑う頻度」「自覚しているストレスの程度」「社会とのつながり」「社会的支援」の6つとし、自記式アンケートの結果に基づいて評価しました。その結果、検討した6つの因子のうち、「笑う頻度」を除く5つの因子が糖尿病腎症リスクの低減と関連しており、糖尿病腎症をもたない患者に比べて、糖尿病腎症を合併した患者では、幸福感や楽観性が低く、社会とのつながりや社会的支援が不十分であることがわかりました。

前向きな気持ちで過ごす

このように、心の健康状態は、体の健康に大きく影響します。そこで、自分に対して前向きな気持ちを持ち、問題が発生する前に対処することが重要になると考えられます。米国家庭医学会(AAFP)は、心を健康な状態で維持するために、次のようなことに注意するようアドバイスしています。

・感情を健康的に表現する方法を探す。ほかの人と前向きな態度でコミュニケーションを取る

・強い感情に流されないようにする。何かに反応したり、コメントしたりする前に常に考える時間を持つ

・自分が幸せを感じられることに気持ちを向ける

・十分な運動と休息を取り、身体的に良好な状態を保つ

・バランスの取れた、栄養豊富な食事を心がけ、薬物やアルコールは避ける

緑の多い公園で過ごすと幸福感が上昇

また、日常生活の中で幸福感を高めるための方法の一つとして、緑の多い公園で過ごすことが挙げられます。都市部で生活していると、時に心がすさみ、落ち込むこともあるでしょう。しかし、木立に囲まれた公園でひと時を過ごすことで、都市生活によるストレスが軽減され得ることが、米バーモント大学環境・天然資源学のAaron Schwartz氏らの研究で示唆されました。研究の詳細は、「People and Nature」8月20日オンライン版に掲載されました。

Schwartz氏らは今回、Twitterの利用者4,688人が公園で過ごしている間、あるいは公園に行く前後に投稿したツイートを3カ月間にわたって収集しました。投稿者が訪れた公園は合計160カ所で、全てサンフランシスコ市内に位置していました。Schwartz氏らが、公園に行く前と行った後のツイートを分析して比べた結果、公園で過ごす時間は、人々を幸せな気分にすることが明らかになりました。また、この研究では最も高い幸福感をもたらしたのは木々の生い茂った緑豊かな大きな公園であることも明らかになりました。これに対し、都市部の舗装された広場のような公園で過ごすことによる幸福度は最も低く、近隣にある小さな公園で過ごした場合の幸福度は中程度でした。

この結果について、Schwartz氏は、「大きな公園では、バーベキューや静かでゆったりとした散歩など、小さな公園ではできない活動を楽しむことができるのが一因ではないか」と考察。また、大きな公園ではストレスの多い都市の環境から切り離された感覚を得られるほか、多様な生物に触れ合うことが精神衛生に良い影響を与える可能性もあるとしています。

今回の報告を受け、米ゴールデンゲート大学のKit Yarrow氏は「多くの人は無意識のうちに自然を求めている」と指摘。自然が幸せな気分をもたらす要因として、空気が良くなる、視覚的な美しさに精神的にも感情的にも覚醒する、人間には自然の一部でありたいという根本的なニーズがあることなどを挙げています。

 

 

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