睡眠の改善

睡眠の改善

睡眠の改善

WHR201909近年、様々な疾病予防や健康維持のために睡眠の重要性が指摘されていますが、一方で「なかなか寝付けない」「あまりよく眠れない」等の悩みもよく聞かれます。今回は睡眠の改善について、米国の研究3件をご紹介します。

 

就寝前の入浴で睡眠が改善

米テキサス大学のShahab Haghayegh氏らの研究では、就寝の1~2時間前に温浴したり温水シャワーを浴びたりすることで、入眠までの時間が短縮し、全体的な睡眠時間が延長することが明らかになりました。また、併せて全般的な睡眠の質も向上したことが指摘されています。この研究結果は「Sleep Medicine Reviews」8月号に発表されました。

Haghayegh氏らは今回、就寝前に温かいシャワーやお湯に浸かることと睡眠との関連を調べた17件の研究データを解析しました。解析に組み入れられた研究の参加者は、若くて健康なサッカー選手から外傷性脳損傷を有する中年患者、睡眠時無呼吸と診断された高齢者、がん患者、心疾患がある患者まで、さまざまな特徴を持った人たちでした。その結果、参加者にどのような特徴があるかにかかわらず、就寝の1~2時間前に40~42.5度のお湯で10分以上かけて入浴したりシャワーを浴びたりすると、ベッドに入ってから入眠までの時間(入眠潜時)が短いだけでなく、全体的な睡眠時間も長く、ベッドに入っていた時間のうち実際に眠っていた時間が占める割合(睡眠効率)も高いことが示されてました。ただし、重要なのは、入浴で使用するお湯の温度です。Haghayegh氏によれば、お湯が熱過ぎたり冷た過ぎたりすると逆効果となり、睡眠に悪影響を与えてしまうと考えられます。

寝る前にTo-Doリストを書き出すと良く眠れる

意外かもしれませんが、翌日やらなくてはならないことのリスト(To-Do リスト)をベッドに入る前に書いておくと、早く眠りにつける可能性が高まることが、米ベイラー大学のグループによる研究から明らかになりました。詳細は「Journal of Experimental Psychology」1月号に掲載されました。

明日やらなければならないことを考えはじめて眠れなくなるという経験は誰にでもあるでしょう。今回の研究を率いた同大学睡眠神経科学・認知科学研究所のMichael Scullin氏は「現代社会は年中無休で次々と予定が入る。ベッドに入ってからも終わらせることができなかったタスクが頭から離れず不安を感じてしまうことは珍しくない」と話します。Scullin氏らによると、不安に思っていることを書き出すと不安が軽減され、眠りにつきやすくなることが、これまでの研究で明らかにされているということです。そこで同氏らは今回、寝る前にTo-Do リストを書き出す行為によって寝つきの悪さを改善できるかどうかについて検討しました。

対象は、18~30歳の健康な大学生57人。対象者をベッドに入る5分前に(1)数日以内にやらなければならないことを全て書き出す群(To-Do リスト群)と(2)この数日間に成し遂げたことについて日記をつける群(日記群)にランダムに割り付けました。その夜の睡眠の状態を「睡眠ポリグラフィー」と呼ばれる検査装置を用いて観察した結果、日記群と比べてTo-Do リスト群ではベッドに入ってから入眠までの平均時間が短いことが分かったということです。

寝る前のスマホにはブルーライトカット眼鏡を

寝る直前までスマートフォン(スマホ)やタブレット、パソコンなどを使用する習慣のある人は、薄いアンバー(琥珀色)系の色が入ったブルーライトカット眼鏡をかけるとぐっすり眠れるかもしれません。不眠症の症状に悩んでいる男女を対象とした試験で、就寝前にブルーライトカット眼鏡を使用すると睡眠の質が向上することが示されました。詳細は「Journal of Psychiatric Research」1月号に掲載されました。

スマホなどのデジタル機器の液晶画面から発せられているブルーライトは睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。このため、夜間にブルーライトを浴びることは睡眠に悪影響を及ぼし、体内時計の乱れを引き起こします。今回の研究を実施した米コロンビア大学医学部のAri Shechter氏らは、不眠症の症状がある男女に1週間にわたって就寝前の2時間、アンバー系の色が入ったブルーライトカット眼鏡か通常の透明なレンズの眼鏡のいずれかを使用してもらいました。

その結果、就寝前のブルーライトカット眼鏡の使用によって、睡眠時間が平均で30分延びただけでなく、睡眠の質が向上し、不眠症の症状も改善することが分かりました。Shechter氏は「就寝前にブルーライトを浴びないようにするのが最良の選択肢だが、それでもデジタル機器を使用し続けたいのであれば、なんらかの方法でブルーライトをカットすることが望ましい」と指摘しています。

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