米国、EUとオーガニック認定基準の同等性を承認

米国、EUとオーガニック認定基準の同等性を承認

米国、EUとオーガニック認定基準の同等性を承認

report_201203 今年6月、米国と欧州連合(EU)のオーガニック市場が一変しそうだ。世界の2大オーガニック市場が互いのオーガニック認定基準の同等性を承認したからだ。これにより、米国とEUのオーガニック市場が一体化し、合わせて500億ドルの巨大市場が誕生する。オーガニック産業の促進に大きく役立つほか、世界的な雇用と産業の活性化に繋がるとして大きな期待が寄せられている。

追加認定が不要、米国のEU輸出3倍に

米国のキャサリン・メリガン農務副長官は2月15日、EUとの間でオーガニック認定基準の同等性を認める協定を締結したと発表した。これまでは、米国とEU間でオーガニック商品を輸出入する際、相手国の追加認定が必要になるなど煩雑な手続きに加え追加費用がかかった。

しかし、この締結により、どちらか一方の国でオーガニックと認定されれば、相手国の追加認定を行うことなく輸出入できるようになった。たとえばEUでオーガニックと認定されたオリーブオイルは、米国の追加認定なしに米国内でもオーガニック商品として販売が可能となるというわけだ。

世界のオーガニック商品の市場規模は年間約590億ドルといわれているが、うち96%ほどが米国とEUで消費されている。この2大オーガニック市場間でアクセスが容易になることで、米国およびEUで大手はもとより中小規模のオーガニック商品生産者に輸出入の機会が増えるだけでなく、消費者もこれまで以上に商品選択の幅が広がる。

米国当局は、同協定により今後3年間でEUへの輸出は3倍に膨れ上がると推定。オーガニック市場はますます活性化され、雇用創出も期待できるとしている。「新協定は米経済およびオバマ大統領の雇用戦略にとって吉報だ。米国内の農業生産者および中小企業に新たな市場参入の機会が増え、梱包から輸送まで大きな雇用創出に繋がる」と、メリガン農務副長官は語っている。

米国とEU間で数年にわたる調査、分析の結果、両者のオーガニック認定基準を同等と認めたわけだが、合意がとれていない事案もある。抗生物質の使用についてである。米国では浸襲性細菌感染の植物火傷病を防ぐため抗生物質を使ったリンゴと梨をオーガニックとして認定している。

ところが、EUではこれを認めていないため、抗生物使用のリンゴと梨はEUにはオーガニックとして輸出できない。一方、EUでは病気の治療で抗生物質を投与した家畜の肉やミルクをオーガニックとして認めているが、米国では認めていないことから、米国への輸出ができない。両者は今後も定期的に互いのオーガニック商品および認定システムを検討していく方針という。

米国で増えるオーガニック消費者

市場調査会社TABSグループが2月に発表した統計によると、米国で今年1月に消費者の41.8%がオーガニック商品を購入しており、前年同月の39.8%を上回った。昨年の売り上げも前年比で15~20%増加したという。最も売り上げが伸びたのは、牛肉で前年比48%増、次いでアイスクリーム44%増、ヘアーケア商品28%増、野菜26%増、ミルク25%増、卵21%増、鶏肉17%増となった。

年齢別では、若年層の購入が増えており、40代以下の消費者のうち48%がここ6カ月間にオーガニック商品を購入している。ちなみに、60代以上は34%だった。また、年収3万ドル以下で子供のいる消費者が、金銭的な余裕がそれほどないにもかかわらずオーガニックを頻繁に購入していることも分かった。

2010年のオーガニック商品の売り上げは全世界で590億ドル

ロンドンに拠点を置く市場調査会社オーガニック・モニターによると、2010年のオーガニック商品の売り上げは全世界で590億ドルを記録、10年前の売り上げの2倍以上に膨れ上がったという。うち、市場最大規模の米国の売り上げは約286億ドルで、前年比9.7%増(オーガニック・トレード協会調べ)。食品・ドリンクのみの売り上げは前年比7.7%増の267億ドルで、非食品の売り上げは前年比9.7%増の19億7千万ドルだった。

一方、オーガニック・モニターによると、EUの2010年のオーガニック商品の売り上げは、全世界の売り上げの半分近くを占めているという。しかし、ここ数年続いた2ケタ台の伸び率は、2009年には前年比3.9%増とやや失速気味。

スイス拠点のオーガニック農業研究所FiBLが発表した国別の統計でみると、フランス、スウェーデン、ベルギーの2009年の売り上げはいずれも前年比で15%以上の好調な伸び率を示しているものの、EU最大のオーガニック市場であるドイツは横ばい状態だった。

また、最近発表された統計によると、イギリスでの2010年の売り上げは前年比5.9%と落ち込んでいることが分かった。売り上げ伸び率の減少の理由として、オーガニック商品の品数が少ないことと、不況による消費者の買い控えなどが指摘されている。

FiBLによると、オーガニック農地面積はEUで大幅な拡大がみられ、2010年には農地全体の約2%に相当する1000万ヘクタールの大台に達した。ちなみに、2009年は農地全体の1.94%、2008年は1.74%、2003年は1.25%だった。専門家らは今後もこうした拡大傾向が続くものとみている。

一方米国は、農務省の入手可能な最新の統計によると、オーガニック農地面積は2008年に265万5千382エーカーに達した。2002年から2007年にかけて127%増と大幅に広がったものの、2007年から2009年には12%増にとどまった。EUとのオーガニック協定が結ばれたことで、今後農地の拡大にも拍車がかかりそうだ。

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